なんか笑える心霊体験【短編集】Vol. 10 – 全20話

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なんか笑える心霊体験【短編集】Vol. 10 - 全20話 笑える心霊体験
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なんか笑える心霊体験 – 短編集
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なんか笑える心霊体験【短編集】Vol. 10 – 全20話

 

猫とおっさん

 

猫が床から十数センチ離れた空間に猫パンチをくらわせていた。近づいてみても虫すらいない。
それなのに必死に猫パンチ。いい加減に止めないとアホになるんじゃないかと心配していたら、通りすがりの弟が
鼻息を荒げている猫をその場から撤去した。
夕飯時に昼間猫が空中を殴打していたという話をしたら、「おっさんが生えてた」と弟がボソッと呟いた。
床からおっさんが顔半分だけ生えていて、猫はその控えめな頭髪に覆われた頭を叩いていた。
最初は迷惑そうだったおっさんの顔が徐々に泣きそうになってきて、かわいそうだったので猫を撤去したんだとの事。
今日も猫はおっさんが生えているであろう空間を肉球で殴打している。

 

 

猫が警戒するのは

 

2年くらい前、まだ実家に住んでた時のある冬の夜2時くらいの話。
うちで飼ってた黒猫を膝の上に乗せてビデオ見てたら、突然足音がして部屋のドアの前で止まった。
うわ、やべー。何か来た。そういやちょっと前に、霊感の強い3歳の姪っ子が俺の部屋の前で半透明の人が泣いてるって言ってたっけ。
そんな事を考えてたら、猫が起きてドアの前まで歩いてった。
そんで、俺が寝てる間に部屋から出れるようにって半開きにしてるドアを爪で引っ掛けて10cmくらいの隙間を作った。
隙間から頭だけ向こうにやって3分くらい動きが止まったかと思うと、また膝の上に戻って来た。
ドアは10cmくらいの隙間が開いたままで。
しばらくするとまた足音がする。
今度は猫も目覚めない。
猫が警戒してないって事は危なくないって事だよな。
そう思いながらも、目線はドアから離れない。
足音がどんどん近付いてきてまたドアの前で止まる。
そして、ドアの隙間から何やら白い影のような物がするりと入り込んできた。

……近所の野良猫ですた。
猫の出入り用の窓を閉め忘れてたのを思い出して、野良を追い出して窓を閉めに行った。
部屋に戻ってくるとコタツからまた何やら白い物が。
まだ野良がいたのかと思い近付くと、布団の間から白い女の腕が伸びてた。
「そっちかい!」
思わず叫ぶと腕はコタツの中に引っ込んでしまい、もう二度と現れなかった。
その時から俺はコタツに入れず、うちの猫専用になりましたとさ、めでたしめでたし。

 

 

タックル

 

親父が死んでから、俺は実家に戻りお袋と二人で暮らしている。
彼女も休みの度に泊まりに来てくれる。
一昨日の話。明け方出勤前のお袋が和室の仏壇にお供え物をしていた。
その時、俺も彼女も含め全員が和室にいた。
すると和室に面した居間の奥の方から、すたぱ…すたぱ…と音がする。

スリッパを履いている足音だ。この家には三人しかいない筈。
ただならぬ雰囲気に沈黙し足音を聞くだけの三人。
足音は徐々に大きくなり、スリッパが現れた。履いている筈の誰かの姿は…ない。まるで透明人間がスリッパを履いているみたいだ。
家族を守らなきゃ。とっさに俺はスリッパの上にあるだろう体に向けてタックルした。
正直、すり抜けてくれることを期待した。
でも確かにあったんだ。見えないけど、ヒトの感触。

俺は幽霊(?)の頭のありそうな部分を押さえ、壁にぶつけた。何度も何度も。
そして硬直しているお袋に「早く!お経!」と叫んだ。お経を唱えるお袋。
次に彼女に言う。「アキもお経!お前のうち草加なんだからお経位出来るだろ!」
…彼女は気絶していた。
タックルとお袋のお経が効いたのか、透明な肉体は俺の腕の中でまるで氷が溶けるように小さくなり、やがて腕の中の感触が消えた。

そして昨日、和室で寝ているとまたすたぱ…すたぱ…と足音が居間から近付いてくる。
あんなことがあったからスリッパは片付けた筈なのに一昨日と同じ足音。
そして一昨日と同じ場所で音が立ち止まる。
今日はお袋はもう出掛け、俺の隣では彼女がすぴー…すぴー…と鼻笛鳴らしながら寝ている。
守らなきゃ!また俺はタックルを…する筈だった。
気付いたらタックルされていたのは俺。
見えない力に押さえつけられ、頭をガンガン壁に打ち付けられる。
「昨日は痛かったぞ!どうだ!この!痛いだろ!なぁ!こんなことされたらい・た・い・だ・ろ!?ヲイ!
自・分・が・さ・れ・て・嫌・な・こ・と・は・す・ん・な。解ったか!アホ!」
そう言い残して幽霊は消えた。解放された俺は助かった安堵と恐怖でガタガタ震えた。
「でもアキが無事だったから良かった…」
彼女は先程と変わらぬ姿ですぴー…すぴー…と寝ていた。

 

 

評判の幽霊屋敷

 

昔、まだ小学生だった時の話。
近所に『評判の幽霊屋敷』と言う空き家があって
まあ、どこにでもある平屋なんだが、何でも噂では悲惨な死に方をした人が居て
それ以来、部屋の壁に苦悶の表情を浮かべた人の顔が浮かんでいるらしい

当時、馬鹿なお子様だった俺と友人数名はその顔とやらを確認するべく突入した
程なくして、それは居間らしき部屋で見つかった。
確かにその染みは物凄く苦しそうな顔に見える。
普通はここで「ぎゃー! 怖ェ!」とかなるんだろうが

生憎、俺たちは馬鹿だった。

「よっしゃ! 俺、鼻毛描く!」
「俺、眉毛!」
各々に用意していた、マジックで、その顔に思い思いの落書きを施す。
すっかり、劇的ビフォアアフターなお茶目フェイスになった怨念の顔(仮称)に満足し帰宅。
だが後日、落書きに行った友人の一人が原因不明の高熱で一週間近く学校を休んだ。

復調後、学校に来た友人は開口一番変な夢を見たと言う。

「何か夢の中で、物凄い形相をしたおっさんに追いかけられたんだ……」
俺たちはまさかと思い、まだ全快とは言いがたい友人を残し例の幽霊屋敷に向かった。
居間に行くと、落書きの下に例の『顔』が無い!
探してみるまでもなく、それは落書きの直ぐ横の壁にあった。

憤怒と言うか、怒り狂った形相に姿を変えたそれが俺たちを睨みつけている。
怒っている――霊が怒ってるんだ!

だが、俺たちは容赦なく馬鹿だった。

「なんじゃコイツ! 怒ってるのか!?」
「生意気じゃ! 落書きしたれ!」
猛攻だった。類稀に見る猛攻だった。今度は胴体も描いた。『おならプー』と屁も描いた。
俺たちは満足して幽霊屋敷を後にした。

数日後、例の魘された友人がまた変な夢を見たと言う。

「何か、前に見たおっさんが……泣いてた」

俺たちは三度、幽霊屋敷に向かった。あの染みはもう、どこにもなかった。
今思うと、何か可哀想な事をしたと思わんでも無い。

武士の忠告

 

ある日の夕方、リビングで一人うとうとしてたら枕元に武士が現れた。
ビックリして思わず正座したら向こうも正座して向かい合う形になった。
しばらく何も言わずに黙ってたので、厳つい顔だー恐いよーと思ってたら、
「アロエに水やれって言ってるだろう!あと電車の中で寝るなって何度言ったらわかるのだ!」
と言って消えた。正座したし、その後電器も付けたから夢じゃないと思う。
確かに家には母が放置して枯れかけているアロエが3鉢ほどあるし私は電車で寝るクセがある…。
後日気になって母方の家を訪ね、先祖のことについて聞くと(父方の先祖は農民だったと聞いてたので)
あの武士の着ていた鎧と特徴的な形をしていた兜、槍(柄だけだったけど)があった…。

今ではアロエにはちゃんと水あげてます。電車で寝るのは…まあ控えています。
しかし何でアロエ?まさか武士の口からアロエと電車っていう単語を聞くとは。

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