こんな時だからでしょうか、何度も書きますが基本的にビビリなので
嫌な事を思い出してしまいます。
その階段の下についた途端、
昔「ほんとうにあった」で観た階段の上からぼんやりとした白い洋服の女性が
下りてくるが、いつまでたっても胸以上の部分が見えない、
でも確実に下りてくる(胴体が異常に長い女)という映像を思い出しました。
やっぱビビってんなー、自分で何かおかしくなってしまいました。
「ではあがりますよ」
Tさんが先頭に階段を登りはじめました。
とにかく何かあれば庭でやった事を速攻でやろう、それだけは決めていました。
階段を登りつめるとTさんが
「あ、かわっとる!」
とおっしゃいました。
「え?何がかわったんですか?」
Tさん「前よりもハッキリみえるようになってます、おい」
と奥様を呼ばれました。
奥様も
「ほんとうに、前はこんなにハッキリみえてなかったと思います。
もっとぼやっとした感じだったのに・・・」
私も二人の後からその部屋に入りました。
すると、そこには先程描いて頂いた様な墓石の様な物体はなく
蝶や蛾のサナギみたいな物体が、本当に浮かんでいました。
「さっき描いて頂いた形と随分変化してますよね・・・」
Tさんと奥様ほぼ同時に「え?」
「え?」
Tさん「いや、一緒でしょ?お坊さんお墓みたいなのに見えないですか?」
「え?」
何でこうなるの?
「あの、私には蝶か蛾のサナギみたいなものに模様が入ってるモノにみえます」
Tさん、奥さん
「え?」
庭の作業服の時と同じ現象でした。
多分、理由など考えても現状意味がないと思ったので、
「ちょっと写真撮ってみますね」
と言って携帯で撮影に挑みました。
(書き忘れてましたが私はまだガラケー使ってます2014年製のモノです)
これは流石に写らないかも、と思いましたが素直に、カシャっと撮影音がしました。
その瞬間、サナギがブルブルと震えるような動作を始めました。
Tさん「うわ」
奥様 「ぎゃっ」
お二人にも先程とは違った状態になったのは見えていた様でした。
早々に携帯をしまい、庭と同じ様に、念珠をもって合掌し両方の親指で
独鈷杵を押さえながら名号を唱え、梵字の音読みを口にしました。
すると、最初にこの家で体験した様な「バンッ」という大きな音と振動がして、
それから急に物凄く臭い臭いが漂いはじめました。
「臭い・・・」
と思いながら唱えを続けているとTさんが
「お坊さん、何かすごく臭い、物凄い嫌な臭いがしてきました」
と仰いました。
何か今私がやってることに、
正しいか誤りか分からないけど反応はしてると確信しました。
「臭い」
「くさい」
Tさんも奥様もそう何度も口々に言いましたが、
そこから逃げ出すようなことはしませんでした。
その間も「バンッ」という大きな音と振動は続いています。
私も何が正解か分からないので唱えを続けました。
体感では5分位でしたが、実際はもっと短かったんでしょうが、矢張りその間長く感じました。
そして夢中になって繰り返していくうちに庭と同じく、
目を閉じてご本尊を強くイメージして嫌なモノを祓うということでなく、
成仏して頂くという気持ちを強くしました。
見えてない閉じた目の中で、なんか空間が「グニャっ」いう感じで曲がった気がしました。
「あ!消えた!お坊さん、消えましたよ!」
Tさんが大きな声で仰いました。
ほっとして目を開けると、
Tさんと奥様が手を繋ぎながらピョンピョンと小さく跳ねていました。
奥様が
「あ、すごく良い匂いに変わってる・・・」
Tさん「ほんとだ・・・すごい」
多分・・・ですが、庭で焚いた白檀の香りでした。
奥様が「いいかおり」と言いながらその部屋の窓を開け始めました。
「せっかくのいいかおりなのにすいません、半年近く締めたままなので」
「お坊さん、本当にありがとうございます、こんなに・・・すごいですね」
とTさんが握手を求めてきました。
「いや、本当にお話した通り、まぐれなんです、たまたま、なんです。
だから勘違いしないで下さい、
私が何か特別な技とか能力を持っている訳ではないんです」
Tさん「でも、あの庭も、この部屋も、全部終わらせてくれて、
私たちを助けてくれたのは間違いないです」
「あの・・・多分、なんですが・・・「嫌なものを祓う」的なものは
私たちの教義には基本無いんです、
だから、庭でも、ここでも、私は浄土に行って欲しいと願ったんです。
単純に、それが良かったのかもしれません・・・だからお二人も、
一緒にそう願って頂けませんか?」
そう言ってまた庭と同じ様なお弔いを行いました。
同門の大先輩の言葉に
「怪は4種に体系化される、偽怪、誤怪、仮怪、と真怪である」
というものがありますが、私には今ここで経験したことがどれに当てはまるのか、
そんなことを考え始めてしまいました。
どうせ説明がつかないんだから、とも思ったのですが、
何かスッキリもしない、小説やドラマ、映画などではないので、
現実ってこういうものでしかないんだろうとも思いましたが、
何かスッキリしない気持ちに納得が行きませんでした。
Tさんと奥様に散々お礼を言っていただき、
良ければご馳走したいから泊まって行って欲しいとまで言って頂きましたが、
明日の予定もあり、丁重にお断りして今日中に帰りたい旨を伝えました。
随分と長い一日だったなぁ・・・というか本当にこれで終わったのかな?
色々と思うところもありましたので、お二人に、正直にその事も告げて、帰路につきました。
帰りもTさんご夫妻が送って下さったので、車中で色々話をしました。
Tさん宅から出る頃にはまだ陽が残っており、
周辺を再度、行きとは違った見方で眺めていました。
暫くすると最初の人家、ある意味お隣さんのお宅が見えて来ました。
「あっ・・・」
と私は声を出してしまいました。
「え?」
Tさんが急ブレーキを踏み、車が停車しました。
Tさん「お坊さん、どうされました?何かありましたか?」
「あのお宅の屋根、見て下さい」
奥様 「きゃー!」
その人家の屋根には物凄い数のカラスがとまって?溜まっていたのです。
本当に初めて見るくらいの物凄い数でした。
あまりの光景だったので携帯で撮影しましたが、窓ガラスをおろして撮影をしようとすると
何故か大半のカラスが飛び立って行きました。
音を立てたわけでもないのに。
Tさん「あれ、何か関係あるんですかね?」
「わかりません・・・でも飛んで行ったし
Tさんのお宅じゃないから大丈夫だと思いますよ」
そう言った瞬間、私は「わっ」と声を上げてしまいました。
Tさんも、奥様も「どうしました!」と大きな声を出しました。
「すいません、携帯が急に鳴った(サイレントバイブが急に反応した)んで
驚いてしまって、すいません、本当にビビリなんです」
Tさんも奥様も笑って下さいました。
ただ場を和ませようとしたわけでなく、急にメールが届き始めたのです。
「留守電着信」がどんどん届きます、同じく通常のメールも・・・
何でTさんのお宅で届かなかった?普通に不思議に思い
「あの、Tさんのお宅の範囲って携帯圏外じゃないですよね?」
とお聞きすると
Tさん「え?そんな訳ないでしょ(笑)じゃあどうやって私が
お坊さんに電話出来るんですか(笑)」
「ははは、そうですよね、すいません」
留守電を車中で聞くのも何なので、メールを見ると家族からでした。
だいたいの時間しか言って来なかったので、普通の仏事にしては時間が掛かりすぎていて
しかも電話も繋がらないので、心配しての内容でした。
某県の最果てに近い場所まで来てるので時間が掛かった、今帰ってます。
と返信しました。
余計な心配はさせたくないので不可思議な件は話すつもりはありませんでした。
とにかく、細かなところで変なことが起きる日でした。
無事に帰宅し、Tさんご夫妻はとても丁寧にお礼を何度も言って下さり帰られました。
帰り際に「もしまた何かあれば連絡下さい」とは言いましたが
何も起こって欲しくはありませんでした。
その日は勿論ぐったりで風呂の中で寝てしまうくらいの疲れ具合でした。
さっき書き忘れましたが、帰宅後は、
真っ先にご本尊に普段以上にお礼を伝えました。
風呂あがり後は、夕食もとらずに寝てしまいました。
翌日、疲れを引き摺りながらお勤めを果たしている中、どうしてもスッキリしないので、
そもそもTさんご夫妻はどういう方達なのか、
聞けてない話があってそれがあの起因になってたりしないか?
Dさんに聞いてみることにしました。
Dさんとは、もう3年以上お会いしてなかったんですが、
そんな私を何故推薦したのかも直接聞いてみたかったのもありました。
携帯番号にかけましたが、呼び出しはするけども電話口には出てくれません。
数時間後にかけましたが同じ状態、翌日も同じ。流石におかしいなと思って、
翌々日に電話して出てもらえなかったら、会社に電話しようと思いました。
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