心霊ちょっといい話『一本だけの花』など短編全10話

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心霊ちょっといい話『一本だけの花』など短編全10話 不思議な話
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優しい手

大学の頃、所属していた写真部の暗室に、
「とんとんさん」「ひたひたさん」って呼ばれている
「なんだか分からないモノ」がいた。
学園祭前、作品のプリントを徹夜で仕上げていて、ついうとうとしてしまうと、とんとん、ひたひた、と背中を叩いて、優しく起こしてくれるんだそうだ。
僕は目撃も体験もしたことがなかったけれど、「見える」後輩が、叩かれた瞬間、さっと振り向いたら、白い女の人の手が、すうっと消えてゆくところだったという。
泣ける話ではないんだが、親切なおばけ、ということで。

 

 

究極のアロマテラピー

小さい頃から、寂しかったり、悲しかったり、困ったりするとなんだかいい香りに包まれるような気がしていた。
場所や季節が違っても、大勢の中にいても一人っきりでもいつも同じ香りだから花や香水などではないことは確かだった。

私が20才になった時、母の実家が改築することになった。
母の実家の庭には小さな蔵があり、お盆のお墓参りで寄った時に、伯母からもうほとんど整理して何も大した物は残っていないけど、何かいいものがあれば自由に持っていっていいと言われて久しぶりに蔵に入った。

中に入ると祖母がお嫁にきた時に持ってきた長持ちがまだあって、よく従兄たちとかくれんぼして中に入り込んでいた事を思い出した。
懐かしく思い出しながらその長持ちを開けた。あの頃、まだ洋服などが詰まっていた長持ちの中もすでに整理されたのか、中はもう空だった。
長持ちは四つあって一番奥に桐のかなり立派なものがあり小さい頃、その長持ちだけは触ってはいけないと言われていた事を思い出した。
さすがに今はいいだろうと、その長持ちを開けた途端に私はいい香りにつつまれた。

伯母と母に聞くと、その長持ちは私が3歳の時に亡くなった私の祖母にあたる人が嫁入り道具に持ってきた長持ちで、その中にはいい香りのお香を焚き込んだ着物が沢山いれられていたという事だった。
祖母にとって孫は男の子ばかりだったので、私が生まれた時この着物は大きくなったこの子にあげようと、嬉しそうに母や伯母に話していたとその時はじめて私は聞いた。

おばあちゃんだったんだね……。

 

 

恨んでないよ

昔ノラ犬を拾って飼ってました。真っ白なメス犬で、「シロ」。
夜、母に「ゴミを捨ててきて」と言われて自転車の荷台にくくりつけついでにシロも連れていきました。
シロはいつもの散歩コースをどんどん先に行ってしまって、私はその間にちょっと先の、通りの向こうのゴミ捨て場に立ち寄りました。

私がいないことに気付いたシロは探しに戻ってきて、通りのこっちの私に気付いて私のところへ来ようと道路に飛び出しました。「あっ、ダメ!」と叫んだ時に乗用車が突っ込んできて、目の前で跳ねられてしまいました。
パニックになった私はそのまま泣きながら家に帰ってしまって、母といっしょに戻った時は、シロはもう息絶えてました。

なんであのとき、傍にいなかったんだろう。まだ生きていたかもしれなかったのに最期を看取ってあげられたかもしれなかったのに…と、ずっと後悔していました。

その年の夏。居間で父とTVで高校野球を見ていた時、ふと開けっ放しの窓にシロの気配がしました。
庭に続くサッシの板の間に、鎖の届く所まで来て
窓があいてれば覗いていたんです。その時、板の間に爪が「カツッ」と当たる音とハアハアという息遣いが聞こえました。
実はその一瞬、私はシロがもういないことも忘れていて「ん?なに?」と振り返っていたんです。
もちろんそこにはなにもいませんでしたが、次の瞬間に「あっ!」と泣きそうになりながら、部屋にいた父に
「お父さん、今、シロが帰ってきた…」と言いました。
すると父が一言「実は、お父さんにも聞こえた」と言いました。

あの時、瀕死のシロを見捨てて行ってしまった私に、会いに来てくれたんだ…許してくれてたんだ、と泣いてしまいました。

こういうこともあるんだな…と思ってましたが、ここで似たような体験がいくつかあって、うれしかったです。

 

 

 一本だけの花

俺と同じ年に生まれた犬がいたんだ。家で飼われていっしょに成長してきた。
そして17年目、犬の寿命が徐々に迫ってきていた。そんな時
学校にいる俺にメッセージが入ってきて(ポケベル)、犬が死んだとの連絡が
入ってきた。悲しいなと思いつつも、その犬は家でずっと横になって食事もできない
状態までいってたから、そろそろかなとは思っていたけど、いきなりだからびっくりした。
親の話曰く、家に帰ってきたら犬が目から涙流しながら一人寂しく
生きを引き取っていそうだ・・・それで犬の葬儀屋に電話して、いくらかかるか聞くと
なんか事務的にあれとこれで○○円です。とか言われて、なんか犬が
生物として見られてないなぁと思って、自分で埋葬することにしたそうな。
車に犬を積んで山奥に行って、ダムの近くに穴ほって手厚く埋葬したんだって。
(余談:警察の話によると、勝手にうめちゃだめなんだってさ)
その夜は、なぜか肉料理だったのを覚えている・・・意味不明ってことで。
ここまでは、普通に悲しい話だったんだけど。ここからが感動した。

犬が死んでしばらくして、親が久しぶりに墓参りに行った。
車で現場に着くと、墓の所がキラキラ輝いているではありませんか!
何事かと思った親は、近くに行き墓の前まで近寄るとなんと!
今までに見たこともないような、綺麗な淡い色というか、オレンジとも
いうような、紫ともいうような花が一本だけ咲いていたんだって。
暗い山道に一本だけ咲くその綺麗な花はあたりを照らしていたんだってさ。
最後に、死に際にそばにいれなくてごめんよ。そして17年間いっしょに育ってよかった!

 

 

間違えた?

しばらくぶりに帰省して、幼なじみの友人の家に泊まりに行った時の出来事です。

久しぶりだったこともあって、明け方近くまで話し込んでいました。
そろそろ寝ようという事になって、私の布団は、友人の隣の部屋の、当時仕事で家を空けていた、その子のお兄さんの部屋に敷いてもらいました。
じゃおやすみー、と布団に入ったものの、なかなか寝付けません。

ところでこのお家では、つい3日程前に10数年飼っていた犬が死んでしまったばかりだったんです。
もういい時間だというのに、寝返りを繰り返していた私の布団の周りを、何かが回っているような感覚に襲われました。あ、と思った途端、足元から金縛りになって、胸の上に重みを感じました。
薄目を開けてみると、死んでしまった犬が横向いて私の胸の上に乗ってるんです。
人間の霊だったら怖いけど、犬の、しかも私も小さい頃から知ってる友人ちの犬でしたから、「ああ、なんだ●●か…」と思った位なんですが。
そう思った瞬間にすーっと金縛りも解け、姿も消えました。

翌日、昼食を頂いているときに友人のお母さんに話すと、
「●●はお兄ちゃんが大好きだったから。あなたが部屋にいたのをお兄ちゃんと間違えて出て来ちゃったんじゃない?」
とのことでした。
お母さんは笑っていましたが、友人は隣で顔を引きつらせていました(笑)
私はさほど怖くはなかったので良いのですが、もしも私に姿を見せたのが、「最後の神通力」というようなものだったら申し訳ない、と思ってます。

 

 

 胸騒ぎ

うちのおじいちゃんの臨終の時の話。
夜中の23時ころで病院から危篤の連絡があった。
とりあえず家族全員で病院に向かった。
で、いよいよ、という時になぜか親戚のおじさんが
突然、病室に入ってきた。
うちの近所に住んでておじいちゃんとは仲が良かった人だけど
深夜だったので、声はかけずに家族だけで病院に来てたんだ。
おじさん曰く「なんだか胸騒ぎがして」駆けつけたそう。
そしてすぐにおじいちゃんは息を引き取った。

 

 

 妹の思い

四ヶ月前妹を病気で亡くしました。
八つ年下であんまり共通の話題もなく、また元の性格が人を茶化してばかりの揚げ足取りな私は決して良い姉ではなかったと思います。
妹が倒れた時、私はたまたま旅行に出ていました。
明け方本人から電話が入り、異常に興奮したその様子に不安を覚え予定を切り上げて帰ってきた時には、妹はもう元の妹ではありませんでした。
理知的で常識人だった筈の彼女の脳にウィルスが侵入し、妹はもう妹ではありませんでした。
大声で笑い叫び、隣の病室の人に怒鳴られたりして世話をする私も母も段々疲れ、お互い言葉にはしなかったけど気持ちのどこかで、もう もしかしたらこの子長くないかもしれないと思い始めていました。
そして想像通り、たった一ヶ月少しの闘病の後、彼女は亡くなりました。
12月のよく晴れた朝でした。

両親の方が随分参ってしまったので、私は自分がダメになってはいけないと思い、通夜の時も葬儀の時も冗談など言いながら働いていました。妹は私をやっぱり冷たい姉だと思っているだろうなと思いながら。
やがて3週間ほど過ぎ、クリスマスの頃になるとようやく家族も少し落ち着いて来ました(元々の覚悟もどこかにあったので)。
そしてイブの夜、夕食を作っているとポケットの中で携帯が鳴りました。
その日は朝から私の妹が亡くなったことを知らない知人からクリスマスメールが何回か入っていたので、そうかなと思って携帯を取り出すとやはりメールの着信でしたが知らない番号だったので開いてみるとやはり内容は「メリークリスマス~」という感じでした。
火を使っていたので、特に詳しく読まず保存してまたポケットに戻しました。

そして夕食が終わって携帯を出してみると、そこには何のメッセージもないのです。使い慣れた携帯なのに、メールの保存ミスなんてしたことないのに。
嘘ではないです。もしかしたら携帯の調子が悪かったのかもしれないです。
でも、斜め読みしたメールの中に何度も「love!love!」と書いてあったのがどうしても忘れられません。
実は妹は様子のおかしくなる前の晩、私に手紙を書いてくれていました。
すでにウィルスが入っていたので、破ったカレンダーの裏にマジックで書き散らしたその手紙は字も内容もめちゃくちゃで、でも何回も「お姉ちゃんが大好き、早く帰って」と書いてありました。
母に聞いたら何日間かずっと具合が悪かった間留守の私のベッドで寝ていたそうです。
本当に、どうしてもっと耶蘇しくしなかったのか、いろんな話をしなかったのか、後悔ばかりしています。
ここを見ている方、親だけじゃない、身近な人みんないつ居なくなるか分からないです。大切に愛して下さい。

 

 

夢通り

中学生の時、家が火事で燃えてしまった。この家は木造のボロ家で雨漏りもするような処だったけど、私も家族もこの家を気に入っていて、愛着を持って暮らしていた。もし家に人格があるとしたら、彼女(家)も私たちを好きでいたと思う。当時、私はごく自然にそう考えていた程だ。

火事の原因は隣の家の漏電だった。密接した住宅街。
冬場の木造建築はあっという間に燃えさかり、数時間後には私たちは焼け出された。そして次の日から新しい家を探す日が始まった。

ある日、夢を見た。燃えてしまった家に私が一人残っている夢だ。
夢の中では家は昔と変わらぬ姿でいた。私は台所に立っていて、「火事だったのは夢で本当は燃えてなんかいなかったんだ。」と安堵していた。が、よく見ると間取りが微妙に違う。台所の壁が無くなり、そのまま見知らぬ別の家へと続いているのだ。慌てて天井を見上げ、継ぎ目を見ようとしたが、天井には継ぎ目は入っておらず、ごく自然に二つの家は繋がっていた。
「この家は、前の家と同じなんだ!」
夢の中で私はそう叫んでいた。

目を覚ましご飯を食べていると、母が「新しい家の候補が見つかった。」と私たち子供に告げた。今仮に住んでいる場所から近いので、それぞれ見に行って意見を聞かせて欲しいとのこと。正直、両親はそこにしようか決めかねているようだった。

その日は週末で学校が休みだったので、私は早速候補の家を見に行った。行ってすぐ分かった。見覚えがある。この家は、今朝夢で見たあの家だ。試しに台所の天井を見上げると、前の家と同じ壁紙が貼ってあった。何もかも夢の通りだった。
仮の家に帰ると、父だけが居た。父は心霊話を信じない人だったのでこんな話をしても馬鹿にされるだけだろうと思ったのだが、とりあえず報告はすることにした。
「今朝、新しい家の夢を見たよ。前の家と繋がっていた。前の家があそこにしろって紹介してくれたんだよ。」
普段なら、絶対に吹き出して相手にしてくれない子供の戯言のような話なのにも関わらず、父は一言「そうか。」と言った。
「お前がそういうならそこに決めよう。」
他の兄弟もまだ家を見ておらず、母も居ないこの場で、父はあっさりそう決めてしまった。

あれから十数年。結局子供達は結婚して家を出、両親も引っ越してしまいましたが、未だに私はあの家は昔の家に紹介された物件だったと信じています。あんな家に住めて幸せだったなぁ。

 

 

的確な注文

何年か前にうちのお墓が古くなったので建て直しをしました。
私の家は地方の旧家で先祖もたくさんいます。
それでたくさんある小さい昔のお墓も全部まとめて大きい石のお墓を建てよう、ということになりました。
途中までは工事が順調だったのですが、石材の値段ってけっこういいかげんなんですよね(うちの方だけかもしれないけど)。
石材業者もうちがある程度、資産があるのを知っていてかなりな値段をふっかけてきました。
あまりにも高かったのでさすがに折り合いがなかなかつかず、工事が中断したままの状態が続き、私の父は悩んでいたようです。

そんなある晩、私は夢を見たんです。
姿ははっきり見えないのですが、私に話しかけてくる声がありました。
「俺は○○だ。」と私のひいおじいさんにあたる人の名前を名乗っています。
私が生まれる前に亡くなった人です。
「お前のお父ちゃんに頼んでくれ。早く俺達の家を建ててくれ。○百万でいいから。」
いいか○百万じゃなく○百万だぞ。」
と言っていなくなりました。

起きてからどうも気になった私はそのことを母に話しました。
私はそのころまだ子供で、親がお墓のことでもめているらしい、というのは分かっていたけど具体的な値段のことなどは一切知らなかったのですが、私がもめている正確な金額を言い出したので驚いていました。
その後、私が夢で言われた値段で早急にお墓が建てられました。
たしか業者がつけた値段をひいおじいさんが指定していたので
結局、その値段で立派なお墓を建てました。

 

 

抱擁

家にも猫が一人居ましたが、先日他界しました。享年15歳。
この野郎はとても我が侭な野郎で、ムカツク事も多々あったのですが、逝く前の数日間は、やけにおとなしく、いつもなら抱くと「に”ゃーっ!!」
と言って俺に楯突いていたんだが、このころに抱くと文句も言わずに素直に抱かせてくれました。野郎も自分で死期を悟っていたんだと思う。
んなもんだから、野郎も「もう俺も最期だ。だからこのドキュソ飼い主に俺様の体を抱かせてあげよう。。。」ぐらいに思ってたのかもしらん。
野郎のことだから。

野郎呼ばわりしてるが、カワイイヤツだったんだよ。家のニャン吉は。

でもあの野郎は、あの世から俺を見守ってるとは思えん。
また、それらしい不思議だと思えるような体験も皆無(笑 あの世で楽しくやっててくれれば俺はそれでいいんだけど。

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