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心霊ちょっといい話『時の女神』など短編全5話

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心霊ちょっといい話『時の女神』など短編全5話 不思議な話
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母親を心配する子供

 

ある病院での話。
病理実習でレポートを提出する役になった実習生のA、助手から標本室の鍵をもらうときこんな話を聞かされました。
「地階の廊下で、おかっぱ頭の女の子がマリつきをしているのを見たら、絶対目を合わさず、話しかけられても喋るなよ。いっぺん返事をしてしまうと、すごい力で手をつかまれ、こう言われるんだ。
『私って、大人になったらどんなだと思う?』そう言うと見る見る美女に変身して『こうなれたはずなのに、お前達のおかげで…』と化け物の顔になって襲ってくるらしいぞ」
「・・・で、それから?」
「それから・・・って、まあそういう話だから」
何を古くさいホラ怪談言ってるんだか、とAは標本を探し出して実習室に帰っていこうとしていました。
するとどこからともなくマリつきをしているような音が聞こえる。見ると、来るときには気づかなかったが、霊安室 がほんのり明るくなっており、その前で小さな女の子が手まりを持ってたたずんでいるではありませんか。
友人の心臓は縮み上がりましたが、常識が現実に引き戻します。何を考えているんだ、この子は現実の存在だ、家族に不幸があって、ここで待ってるだけなんだ、なにを怖がることがある・・・。
ぎくしゃくと通り過ぎようとするAを、女の子が呼び止めました。子供に似合わぬ刺すように鋭い視線を寄せ、「せんせい、お母さんのしゅじゅつの様子はどうですか?」と。
落ち着きかけていた彼の心臓はまた凍り付きかけます。手術って・・・、なんで霊安室 前でそんなことを・・・、
ああ、やはりこの子は霊なんだ、母親と一緒に事故にでも遭って死んだのに、母親を心配して自分はまだ生きてるつもりで白衣の人間に様子を聞いているんだ、そして母親と自分を救えなかった恨み言を言い始めるんだ・・・。
何も言ってはいけないと言う忠告もどこへやら、彼は蒼白になって言い訳を考えます。
ボクはね、白衣着てるけど医者じゃないんだ、まだ勉強中なんだ、お母さんや君のことはとっても気の毒だけど、ボクは関係ないんだ・・・、そう言おうとしたとき、霊安室 横のドアが開け放たれます。
彼は声にならない叫びをあげながらそちらに向き直りました。

そこには目を真っ赤に泣きはらした若い男性が立っていました。そして先ほどの子供を手招きし、抱きすくめました。
ふるえながら壁にへばりついている友人と目があって、男性は訝しげながら会釈し、普通ならぬ様子に「子供が何か?」と尋ねてきました。
新手の霊の登場かという疑いも捨てきれない友人は、それでも落ち着きをしだいに取り戻し、かすれる声で答えます。
「お子さんがお母さんの手術のことで聞いてこられたもので、事情が判らなくて・・・」
男は苦い笑みをかすかに浮かべました。
「そうですか。実は女房が急死しましてね。病院についたときにはもう・・・。
今解剖中なんです。お母さんの体の中をもう一度調べてもらうと子供に説明したら、死んじゃった後でも手術して助けてもらえるんだね、って言うからそうなったらいいねって・・・。」
しばし呆然と立ちつくした後、友人はご愁傷様でしたと頭を下げ、まだ震える手足をせかせてその場を去りました。
振り返ると、その親子は薄暗い廊下でいつまでも寄り添いすすり泣いていました。
体に血の気が戻ってくるのと、ガラにもなく涙がこみあげてくるのを感じながら、これは本物の怪談だった方がよっぽどダメージ少ないだろうな、とAは感じたものでした。

・・・Aはその後基礎研究の方向に進みました。「臨床だと、毎日の仕事がああいう悲しみの上に成り立つのか、なんて感じたから」とのことだそうです。

 

 

ばあちゃんの咳

 

20年以上前、俺が昔住んでいた家は二階建ての借家で一階に俺と両親、二階にはばあちゃんが住んでいた。
じいちゃんは随分前に氏んでて、じいちゃんの部屋は物置だった。
ばあちゃんがいつも咳をしていて、一階で寝ていても、よく上から咳の音が聞こえてきた。
しかし、具合がとても悪いわけではなく、買い物に行ったり、公民館か何かの裁縫や編み物教室によく通っていた。
ところが、突然死んでしまった。なにかの発作らしく外で倒れてそのまま逝ってしまったらしい。
死んでしばらくして葬式もすんで一段落ついた。

ところが、父親が「ばあちゃんの部屋から咳の音が聞こえる」と言い出した。
母親は長いこと聞いてたから耳に残ってるんだろうと空耳だと言い、取り合わなかった。
しかし、そのうち俺も母親も聞くようになった。
昼間家にいると突然聞こえたりする。夕食を食べてるときなんかに一家3人聞こえたりして、「これは、ばあちゃんがいるんじゃないか」と騒いだ。当然ばあちゃんは火葬してこの世にいない。部屋は無人だった。
あまりにも続くので、咳がした瞬間、3人でばあちゃんの部屋に入った。

なかにはばあちゃんが着物や古い日記などを詰め込んでとって置いた段ボールがたくさん置いてある。
ばあちゃんが死んだので年末にまとめて処分しようと押入れから出して置いといたものだ。
突然、母親が段ボールを探し始めた。

中から公民館の教室で習ったと思われる、裁縫などがたくさん出てきた。しばらくして包装紙にくるまれた物が出てきた。
中をあけると、ぬいぐるみだ。たしかクマだと思う。

紙も入っていて、「お誕生日おめでとう」とある。
忙しくてそれどころじゃなかったが、ばあちゃんの命日の5日後が俺の誕生日だった。
昔からばあちゃんは俺に女の子っぽいものばかり買い与えた。
誕生日にぬいぐるみを贈ろうと公民館に行ったのだろう。それを見て母親が急に泣き出したのを覚えている。
やはり、ぬいぐるみを見つけてから咳はしなくなった。
ぬいぐるみはその家を引っ越していつの間にか無くなってしまった。
両親もばあちゃんくらいの年になったがそのときの事はよく覚えてて、「咳はぬいぐるみを見つけてほしい合図だった」と信じている。

 

 

時の女神

 

修士に進学した4月、こんな俺にもはじめての彼女ができた。相手は講座に配属になったばかりの4年生。
女子学生が少ない学科だったが、その中でも特に女子の少ない、というよりも過去にはほとんど女性のいなかったその講座に入ってきた彼女は、当初その存在だけで俺達を困惑させた。
前髪を野暮ったく切ったロングヘアーに度のキツイ眼鏡。いかにも母親にデパートで見立ててもらいましたというようなフリフリのロングスカート姿。
講座の連中は、そろいもそろって自閉症気味のオタクばかりで、女子学生が入ってきたというだけで、もう、どう対処して良いのか判らなかったようだ。
かく言う俺も、当初はめんどくさいなあとしか思っていなかった。
しかし。
新歓コンパの二次会に向かう路上、眼鏡を外した彼女の素顔。俺は、古くさい言い回しだが、視線が釘付けになった。
「こんな綺麗な娘だったのか。」
いや、実際そこまでの美形ではなかったのかもしれない。でも、俺には彼女が、彼女と並んで歩いているこの時間が、まるで遠い過去から予定されていたような、運命的なものを感じた。瞬間、恋に落ちていた。
「あ、あのさあ..。」
「え?」
眼鏡をかけ直して振り向いた彼女に、俺は自分でも予想のつかないセリフを放った。
「世界で一番、君が好きだ。たぶん、ずっと昔から…。」
「はい。たぶん、わたしも…。」

コンパの二次会をすっぽかして、夜の街を、なぜか手を引いて走った。誰に追われている訳でもないのに。
女の子と付き合ったこともなかった俺は、どこに行けばいいのかわからない。駅前の喫茶店で夜の10時まで話し込んだ。
それが自宅生の彼女のタイムリミット。駅のホームで見送る俺は、胸が張り裂けそうだった。
「シンデレラだって門限は24時だろうがよ!」

人生、数式では定義できないものだと知った。
「コペンハーゲン解釈、ありゃ嘘だね。」
「わたしも思ってた。」
「エヴェレットにしても人生経験が浅い。」
「多元宇宙論ね。解釈問題に立ち入ると先生が怒るわよ。」
「君も俺も、世界で一人ずつだ。他にスペアはいらない。」

世界は、この世界は、俺が人生を賭けられると思っていた物理の真理よりもはるかに甘美な世界だった。
「このまま時間が止まればいい。でも、時間の流れは過去も未来も定義に違いはない。流れていると感じる我々に限界がある。」
「はぁ。なんでこんなに好きなんだろ。あなたと会えなかった世界なんてパラレルワールドにもあり得ないわ。」
安アパートの、通販で買ったソファーで彼女の肩を抱きながら、時間の経つのも忘れて話をした。
「高校まではずっと野球部だったけど。その頃の話でね..。」

俺は高校までは野球漬けの生活だった。
進学校の弱小野球部、3年間で公式戦では一度も勝てなかった。
それでも俺が部活を続けていたのは、試合ではいつも、いや、日頃の練習でもなぜか俺達を見に来る野球好きらしい女の人の存在があったからかもしれない。
その人は、いつも同じ格好をして、俺達の試合や練習を見に来ていた。
不思議とチームメイトたちは気が付いていないようで、俺が話題を振っても「何それ?」という具合。
黒のミニスカートにタンクトップ。真夏でも紅いスイングトップを羽織って。
ショートの髪型とハイヒールが、「大人の女」そのもので、俺はずっと気になっていた。

「たぶん、高校のOGなんだろうけど。でも、俺らの高校が共学になったのはそれほど前じゃないし、野球部はずっと弱小チームだったからわけが判らないのだよなあ。OBの話でも女子マネージャーはいなかったって言うし、単なるファンなんてありえないのだけどなあ。」
「あなたの憧れのひと?もしかして初恋のひと?」
「そんなんじゃないんだけど。たぶん、君に似ていたんだよ。」
「わたしと出逢うよりず~っと前でしょ!」
「それが時間的に前の事象だと決定できるの?」
「物理の話してるんじゃないでしょ!ふふっ。あなたは憧れてたんだ。そういうお姉さんに。」
「お、俺はそんなこと(野球部)しながら大学受験は大丈夫かクヨクヨしていた、ただの迷い子だったよ!話しかける勇気もなかったさ。」

夜中に電話で起こされた。
なにか気がかりな夢をみていた記憶はある。
起きたときに涙で視界がぼやけているのが自分でも訳が分からなかった。
「おい!そこを動くな!今から行くから、とりあえず目を覚ましておけ!」
友人のSからの電話だった。

Sが部屋に来てからの記憶は飛んでいる。

霊安室で、ベッドでもない妙な台に横たわった彼女はいつもの姿ではなかった。
黒いミニスカート、紅いスイングトップ。ショートヘアー、ハイヒール。
彼女の友人らしい女の子が泣きじゃくりながら俺を責める。
いや、俺を責めていたわけではないのだろう。
「あなたに、あなたに見せるんだって言って、私とこの服買いに行ったのよ!」
「眼鏡がないと…。きっと困ってる。」
「なに言ってるの!?あなたのために…。」
彼女は友人と別れた後、自宅と目の鼻の先の路上でクルマにはねられたらしい。
運転していた若造は一旦逃げたが、仲間に付き添われて警察に出頭していた。

俺はその後もふらふらと生きている。

大学院は中途で辞めた。
今は普通のサラリーマン。
物理のブの字も想いだしはしない。
半袖ワイシャツでの営業の途中、暑さにたまりかねて飛び込んだ喫茶店で甲子園の中継を見る。
なにをしても中途半端だった俺の、もう、どうでもいい人生で、2番目に大切だった思い出。
高校の野球部。
彼女は時を超えて見守ってくれていたんだ。

知り合う前から、ずっと….。

 

 

忘れて欲しくなかった

 

今から7年前の夏、同居していた伯母が末期ガンで入院しました。独身だった伯母はわが子のように私達姉妹を可愛がり、義妹である私の母へも大変良くしてくれました。
毎日毎日、病院へ通い、末期で明日の命もわからないと言われながらも伯母は半年間の闘病の末、亡くなりました。
葬儀もおわり、しばらくしてのこと。
朝、起きて母、私、妹の三人で示し合わせたかのように

「夢に伯母ちゃんが出てきたんだけど・・・。」

そんな日が一週間くらい続きました。すると、妹が小さなフォトフレームを買ってきてみんながよくいる居間に伯母の写真を飾ってくれました。すると翌日からは伯母は三人の夢に出てくることはありませんでした。
「忘れてほしくなかったんだね、きっと・・・。」
母の一言に思わず泣いてしまいました。

 

 

愛犬との思い出

 

長年飼っていた犬のモモが具合悪そうにしているのを見つけたのは私でした。
直ぐに病院に連れて行ったのですが、診察結果は良いモノではありません。
老衰で体力が落ちている事もあり、手術は出来ない状況とも言われました。
そのまま入院して投薬による回復を試みる事になり、我家を家族が一人居なくなったような寂しさが包みました。
母は時間が許す限り会いに行き、父や私も毎日のように会いに行きました。
そして入院して2週間が過ぎた頃の夜中でした。
何かの物音でふと目が覚めました。
玄関を外から引掻くような音、モモが外に出された時によくしていた・・・。
私が玄関に行くと後ろから母も起きてきました。
目と目が合い、無言で頷いて私がそっとドアを開けました。

しかし、そこには何も居ませんでした。
母とは野良猫の悪戯かねと話し、ドアを閉め布団に戻ろうとしたときに今度は廊下を奥のリビングに向って走る犬の爪の音が聞えました。
二人で慌ててリビングへ行くとモモの指定席に一瞬だけモモの姿が見えました。
母には見えなかった様ですが、私には一瞬ですがハッキリとモモの姿が。
その後は音も姿もなく、結局母も私もリビングのソファで寝てしまいました。
夢の中で私はモモに会いました。
たくさん遊んで、いっぱいじゃれて、小さいときから今に至るまで、子犬のモモと小さな私、大人になったモモと大人になった私。
学校で友達と喧嘩して泣きながら帰って来たときも、いらついてモモにあたってしまった後でも彼氏に振られて大泣きした夜も、いつも優しい目で私を見ていてくれたモモ。

目が醒めると私の目からは涙が溢れていました。
その瞬間、『クゥ~ン』とモモの声がしっかり聞えました。
そして電話のベルが鳴り、モモが天国に昇った事を知らされました。
私はその日の辛い身体をおして、モモが会いに来てくれたと信じています。
きっと最後は住み慣れた自分の家、自分の指定席に居たかったと。
家族に囲まれて最後を迎えたかたのではと・・・。
逝ってしまう事が判っていれば自宅に連れてきたのに。
一人寂しく逝かせてしまったことだけが悔まれてしかたありません。

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