Tさん「ええ、変な噂が立つのは困るし、こういう田舎だし、
私たちはいわゆるよそ者なんで
遠まわしにしか聞けてませんが、聞きました。
でも何かこういうことの原因になる様な話は今まで出てきたことはありません」
奥様 「もともと、何だかここの人達はあまり、親切ではない感じはしてましたけど、
住んでこんな事が起きるまでは、
綺麗な自然と風景をすごく気に入って気にならなかったんです。
主人が言った通り、田舎に来たよそ者だから仕方ないけど、
何か干渉してくるわけではないから
こちらからも積極的に交わる様なことはしてませんでしたし・・・
だから近くのお寺と神社から断られたと最初は思ってました」
「あの、では、私に見えた作業服の男性に何か覚えとか、何か心当たりみたいな・・・」
Tさん「最初に車の中でお話した通りで、私たちには覚えの無い関係ない人間だと思います」
「私、あの男性のお顔を拝見しようとして最後まで見えなかったんですが
Tさん、奥さん、顔は見たことありますか?」
Tさん「お坊さんも見えなかったですか、私たちも男の人というのは確実に分かるのに
顔は一度も見えたことないんですよ・・・
でも作業服ということも一度もないと思いますが」
奥様 「そうですね、いつもTシャツの姿なんですけど」
お二人の会話に少々気になる箇所があることには気が付いていたのですが、
今はそれよりも、一刻も早く何か対策をして、治められるものなら治めて、
移設するなら移設を完了させて、早く帰宅したいと思っていました。
そう考えて行くうちに、ふと嫌なことを思い付いてしまいました。
ビビリのくせに、不思議な話、怖い話、UFO、UMAなどに興味がある私は、
Tさんたちと私では、男性の服装が同じに見えないこと、
でも、その顔はお互いハッキリ見えない・・・
もしかしたら、例のブルーシートの下の穴にある
骨に人骨が含まれているのではないだろうか?
それで供養を望まれていて、それを伝えるために
不可思議な現象を起こしているのではないだろうか?
通常の供養みたいなことをすれば、ひょっとしたら全ておさまるのではないだろうか?
という風に推理を展開しました。
が、もし推理通り人骨があったとしたら、事件、警察沙汰になるなぁ、とも思いました。
その素人推理をお二人に話しました。
Tさん「もし、お坊さんが仰る様に人骨が見付かったら、事件ですよね・・・」
奥様 「え?殺人事件とか、そういうのですか?」
「いや、そう決まったわけではなくて、殺人とかは違うと思いますが、
何かそういう弔われていないかたの意志みたいな現象に思えたので・・・」
Tさん「あれだけ沢山骨があったら確かにわからんかもしれん」
奥様 「え?」
Tさん「お坊さん、具体的にどうしたら良いですか?」
「えーっと、私も確信ないですし、どうなるか正直分からないんですが、
先ずは、ブルーシートの下から出来るだけ全部、掘り起こしてみませんか?」
奥様 「出てきたら、どうするんですか?本当に人の骨が・・・」
Tさん「でも、そうしないと何もかわらないから、やるしかないかもしれん」
私は法衣を着ていたので申し訳なかったのですが、直接お手伝い出来ませんでしたが、
ブルーシートの下を掘り起こして、大きさ、
種類別に出てくるものを分ける作業が始まりました。
その間すぐそばで合掌しながら経を唱え続けました。
お二人は休むことなく1時間くらいは掘り続けたと思います。
最終的には多分、畳4枚(4畳)分くらいのスペースに
みっちりと敷き詰められました。
不謹慎な言い方ですが、頭蓋骨が出て来てたら確定だったんですが、
その頭蓋骨らしきものが出て来なかったのと、
人の生死に関わる立場ながらお医者さんでもないので、どれが人骨なのか、
そもそも人骨があるのかどうか、掘り起こした状態の骨ではさっぱり分かりませんでした。
そこで、私がお二人に
「正直この中に人骨があるかどうか分かりません、
でも、これだけの骨が出てくるというのは矢張り普通ではないと思います。
なので、この骨を全部まとめて今日これから弔って、
例えば、敷地の端っこにでも丁寧に埋葬しなおして、
気に掛けてあげたら如何でしょうか?」
と提案しました。
Tさん「まさか、ここまで出てくるとは思ってなかったし、
不思議とこれだけのものが出てきても私、
ここから引っ越したくないというか、
引っ越そうという気持ちにはなれないんです。
勿論、引っ越すお金もないですし、なんか、
これだけのものを見てしまったら、なんか可哀想になってきてしまって・・・
牡蠣殻は別にしても動物の骨は仰る通りお弔いしないといけない気がします」
奥様 「私も不思議なんですが、あれだけ嫌だった気持ちがなんか、
主人と同じで急に可哀想な感じに可哀想じゃなくて、哀れに思えて来ました」
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