見るな
小学生の頃、父親と二人で山道を下っていた。
霧が出ていたので、互いに手を繋いで足元を見ながら歩く。
と…ふいに父親の手に力が籠った。
「お父さん、痛いよ」
そう言って顔を上げた。
父親は前方を睨んだまま険しい表情を浮かべている。
その視線の先を追うと、霧の中にぼんやりと小さな人影が見えた。
「見るな!」
突然、父親が大声で吠えた。「目を瞑れ!儂がいいと言うまで絶対に開くな!」
只事でない剣幕に、慌てて目を瞑る。
そのまま、父親に引き摺られるように歩き続けた。
ジャリッ…ジャリッ…
足音が二人の横を通り過ぎる際、小さく呟く声が聞こえた。
「ナンマンダブナンマンダブ…」
それから20年あまりの月日が経ったある日
久しぶりに父親と酒を酌み交わしていて、あの時のことを思い出した。
「あの人影、誰だったんだ?」
父親はしばらく黙っていたが、やがて渋々といった様子で呟いた。
「お前だった」
それっきり何も言わず、父親はコップ酒をあおった。
兄の部屋
ウチの家、玄関からまっすぐ廊下が伸びてる間取りのマンションなんだけど、廊下を挟んで左手に洗面脱衣所&トイレ、右手に兄の部屋があるのね。
で、ある日いつものとおり学校から帰宅後、玄関で靴を脱いでるとトイレのドアが開いて、廊下を一足でまたぎ、兄貴の部屋に兄が入っていったと思ったの。
その頃はあんまり仲よくなくて、お互い「ただいま」とか言うコトもなかったから、別に気にもせず。
下を向いて靴を脱いでたから顔を見たわけじゃないけど、背格好とか雰囲気とかで兄だと思ってた。
で、そのまま自分の部屋で漫画を呼んで笑ってたら30分ほどしてガチャ!と玄関ドアが開く音がして、兄が帰ってきた。
いかにもよそ行きの服だったので、ものすごくビックリして
「え?今帰ってきたん?じゃ、いまのは??」
って兄に部屋を空けてもらったがもぬけのから。
あわてて警察を呼んだが、単に嘘つきと思われたようだ。
窓ガラスも閉まってたしね。
私も見間違いのような気もしてきたけど、そういえば、謎の人物が出たあとしばらくして私もトイレに入り、流してない小の後を流してるんだよね~。
泥棒なのか、ナンなのか?とにかく襲われたり殺されたりしなくてホントによかった。
パジャマの兄
ある朝、友人がいつものように洗面所で身支度をしてました。
洗面所からは鏡越しに兄の部屋が見えます。
兄の部屋のドアは半開きで、そこから兄がパジャマで何かしているのが見えました。
いつもなら、自分より早く起きるのに珍しいなと思いながら、友人が鏡から目を離し口をゆすぐと、すぐ近くのトイレから兄が出てくるじゃありませんか。
「お兄ちゃん、部屋にいたんじゃなかったの!?」
驚いて友人が聞くと、兄は別段変わった様子もなく、いつものように友人より20分はやく起きて朝食もすませたとのこと。格好もパジャマではありませんでした。
顔面蒼白の友人に、兄は「何かあったのか?」と聞きますが、本人に言えるワケもなく、とりあえず、その場は取り繕い、学校に行きました。
2階で寝ていた
中学生のころ、俺が帰宅と同時に階段から降りてきた妹が悲鳴をあげた。
2階で寝ている俺をちょうど見たばかりだったらしい。
なにものかが入り込んで寝ていたのかとバットをもって見に行ったが、当然だれもいなかった。
いつも勉強していた子
親戚にものすっごい頭良いSちゃんってコがいて、本当に「趣味は勉強」だった。
勉強が何よりも楽しいと、暇があれば机に向かっているようなコだった。
ある日そのSちゃんの家に行った時のこと。夕食が出来たのでS母が私にSちゃんを呼んで来てくれないかと言われた。
また勉強しているんだろうと2Fの勉強部屋に行ってみると案の定机に向かってる。
「ご飯だってよ」と呼び掛けるけど、黙ったまま背中を向けて一生懸命筆記用具を動かしてる。
ちょっと違和感を感じたけど「先に行ってるね~」と下に降りた…ら、1FのトイレからSちゃんが出て来て腰を抜かした。
そこまでしなくても、と思った。
生霊学習で人の何倍も勉強してたのかなあ。
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