『不可思議なご依頼』|長編【洒落怖 名作】不思議な話・奇妙な体験まとめ

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『不可思議なご依頼』|長編【洒落怖 名作】不思議な話・奇妙な体験まとめ 不思議な話
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で、そうこうしながら(結局何か聞いてもはぐらかした様な返答ばかりでした)
目的地近くに着きました。

確かに山もあり海もあり晴れた日だったので自然がより綺麗に見えました。

初めて来た場所でしたが私の認識では海鮮物(牡蠣や海苔)が美味しいと
聞いた事がある地域でした。

途中の道の駅の駐車場も観光バスや自動車が沢山で
自分の嫌な予感みたいなものが間違いなんではないだろうかと思えたりもしました。

Tさんのお宅はその地域の繁華街から山側に割りと入った場所にありました。
最近の和洋折衷な綺麗なお宅でした。

私の地元でも似た様な雰囲気の地域はあるし
特に変わった風ではないなと思った瞬間に気付きました。

この町の繁華街からこの場所まで田舎ながら住宅が点在していたのに、
ここに近付いてからは急に人家がなくなった。

多分一番近い人家までは車でも数十分掛かる様な場所。

でも森の奥とか山の奥とか出なく、周囲に田んぼや畑のある視界は開けた土地。

土地も割りとなだらかだし、この辺にTさん宅以外に人家がないことが不自然に感じました。

 

お宅に入れて頂き、最初にリビングに通されました。

「こちらにお仏壇があるなら最初に拝ませて頂きたいのですが」

とお尋ねすると

「我が家に仏壇はないんです」

とのこと。奥様がお茶を運んで来て下さいました。

お茶の味が分かったので、車中よりもだいぶ落ち着いたんだなと自覚しました。

お茶を頂いている最中、Tさんがまたお話をして下さいました。

「お坊さんが来てくださって本当に助かりました。
家に着いただけというかお坊さんを連れて来られただけで随分安心しました」

奥様も

「お坊さんがここに来れただけでもすごく安心なんです」

本当に最初とは違った笑顔ではないけど安堵の表情という感じ。

「えーっと、お子様はいらっしゃらないということでしたが、こちらには
お二人でお住まいなんですか?」

Tさん、奥さま、ほぼ同時に

「はい」

ええええええええええええ?

じゃあ、あの「周りに聞こえたら」って何なん?

周りに人家も全くないし・・・やっぱ何か非常にマズくないか???

袖口の念珠を強く握りしめてご本尊を思い浮かべて怖い目にあいませんようにと
何度も念じました。
「えーっと、では今回の詳しいお話をお聞きしてもよろしいですか?」

Tさん「そうですねすいません、お坊さんはここがどういう土地かご存知ですか?」

「いえ、牡蠣と海苔が名産地ということくらいしか・・・」

Tさん「そうですね、海産物は有名ですね、
あとこの地域では豚とか鶏とか家畜も地産品なんですよ」

「はぁ・・・」

Tさん「ここには屠殺場があるんです。しかもずいぶん昔からの」

「はぁ・・・」

Tさん「私達はまったく知らなかったんです」

「はぁ・・・え?」

Tさん「私達はそういうことは知らないで・・・
知らされなくてここを買ったんです」

・・・ん?家畜の供養とかそういう方向かな?

その時はその程度に考え初めていてビビリ具合も少し引き始めていました。

Tさん「お坊さんに嘘を言うつもりでなくて、
お墓みたいなものでなくて、お墓と最初にお話したのは
最初からこのお墓みたいなものの話をすると
他で全部断られたからなんです。すいません」

奥様 「本当にお坊さんに申し訳ないです、でもそう言うしかなかったんです」

あぁ、近隣の僧侶から断られたって話にリンクして行ってんだな、と思いました。

で、そんなお話をお聞きしている時でした。

だいたい昼の12時過ぎ真昼間、窓の外は天気で明るく綺麗な自然が見える中、
話をしているリビングは、この家の入口→玄関→廊下→リビング→キッチン
てな感じの場所にあり、あとは廊下の途中に2部屋、2階への階段も見えたので
2階にも部屋があるようでした。

そのリビングのフローリングの床が、
突然、誰かが手のひらで思いっきり叩いたかの様に「バァン」と大きな音が鳴り
足に振動が伝わりました。

僧侶なのでいわゆるラップ音的なものや無人の場所で人の声的なもの
薄っすら影的なものなどを見たり聞いたりしたことは正直ありましたが、
こんなにハッキリした音(しかも大きい)と振動を感じたのは初めてだったので

「うわっ」

と声が出てしまいました。

Tさんは、無言だったと思いますが、奥様は同じく「ぎゃっ」と悲鳴をあげました。

で、間髪入れずにキッチンの奥にある窓がガタガタと音をして揺れました。

私が座ったソファーの真正面だったのでハッキリ見えたのです。

また、うわっと思っていると、その窓のガタガタが大きくなって最早、見間違えとかの
レベルは大きく超えて誰かが外から思いっきり掴んで揺らしているかに思えました。

こう書きながら今でもゾクっとして鳥肌が立ちます。
「なんですか?これ?」

恥ずかしげもなく私は口にしました。

Tさんは目を逸らしながら

「これも1つなんです」

「え?1つ」

Tさん「お坊さん、すいません、これだけじゃないんです。どうか助けて下さい」

「え?」

奥様 「本当に助けてほしいんです、お願いします」

「え?」

そのうち、窓のガタガタはおさまりました。

もう完全にビビった状態でしたが、それよりもこんなハッキリした不思議な現象が
起きるものなのか、そっちに考えが移っていました。

馬鹿げてますが、某TV番組「なんとかリング」のドッキリなのかとも考えました。

「Tさん、奥さん、分かってること全部話して下さい。
私に何ができるか分かりませんが
今の状態だとまったく理解することが出来ません」

Tさん「そうですよね、すいません。
この家は一昨年から建築が始まって去年の春に完成して
去年の夏過ぎまでこんなことは何もなかったんです」
Tさん「それが、去年の夏か秋口くらいに庭でバーベキューしてそのゴミ、
土に還る様な生ゴミを堆肥にしようと思って
畑にする予定だった場所を耕した時からなんです」

「さっきみたいなのが始まったんですか?」

Tさん「はい、というか、最初はその畑の予定地を耕そうと掘り起こしたら、
牡蠣殻が大量に出てきたんです。
困ったと思いながら少し別の場所を掘り起こしたら
小動物というか鳥の骨が出てきてしまって、
だったら最初の牡蠣殻の場所を深く掘ってそっちに移そうと深く掘ったら
今度は中型の動物、まぁそうです豚です、豚の骨が大量に出て来たんです」

「ここがさっきお話してた屠殺場の死骸埋葬地だったってことでしょうか?」

Tさん「私も最初はそう思って役場に駆け込んだんです。
でもそういう記録はないと一点張りで
だから写真も撮ったりしてそれを持ち込んだんです。
でやっと見るだけ見るってことになって、
だけど、あ、写真がこれです」

「うわ・・・」

大量の骨、しかも尋常じゃない程の骨、Tさんの言うとおり牡蠣殻も混じっていました。
骨も大小、あと何となく新しいものと古いものが混じってるかの様な写真でした。
「これは酷いですね、で対応してくれたんでしょ?」

Tさん「それが・・・こうやって写真もあるからお坊さんには信じて欲しいんですが、
こんなにあった骨が役場の担当者が来る日になったら綺麗に消えていたんです・・・」

「え?」

Tさん「え?って思うでしょ、でもなくなってたんです全部。
だから役場は対応できないってことになって」

「え?この証拠写真は?」

Tさん「信じてもらえませんでした、
実際役場の人間は見れなかったんですから・・・で、その数日後からなんです」

「町ぐるみの嫌がらせとか、そういうのは?」

Tさん「それも考えました、でも、さっきの音とガタガタ、お坊さんも見たでしょ?
あれ、誰かが嫌がらせでやってる感じしましたか?」

「・・・いえ、でも写真が」
Tさん「写真があっても駄目なんですよ。そのものがないと・・・で、
役場の人間が来た次の日、やっぱりあるんです」

「え?骨?」

Tさん「はい、今日もあると思います、見ていただきたいんです、お願いします」

私は携帯を持ってTさんと奥様と一緒に庭に向かいました。

骨があるなら私の携帯で撮影しようと思ったからです。

玄関で下履きを履いている最中にも「バン!」と音がして
どこかの窓がガタガタと揺れる音もしました。

奥様 「私達も馬鹿じゃないからこの音も録音したりしたんですよ、
でも骨との関連はないと言われるし
そもそもこれは何だって逆に聞かれて、こちらが困っているんです」

慌ててムービー機能で録画しようとしましたが、既に現象はおさまっていました。

で、三人で庭に出ました。

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