妖怪らしきものに遭遇した体験談 短編6話
襲う河童
小学生のとき、
理科の先生が夜更けの帰り道で
かっぱのような生き物に襲われたらしい。
用水路沿いを歩いてたら突然背後から襲われ、
組伏せられたあと、片手をつかまれ、
すごい力で引きずられたとか。
先生は無我夢中で、
胸ポケットにあったボールペンを生物の腕に突き立て、
怯んだところを近くの民家に逃げ込んだ。
その家の主人に事情を話し、
武装して恐る恐る見に行くと、
生物はすでに立ち去ったあとで、
弁当箱を入れてあった巾着袋が持ち去られていたという。
生物の風貌は暗くてよくわからなかったが、
背は小学高学年くらい、
肌はヌメヌメしており、
声などは発しなかった。
とにかく力は半端じゃなく、
大学時代柔道で鳴らした先生でも
まったく太刀打ちできなかったらしい。
こんな話を朝のホームルームで、
半ば半狂乱の先生から聞かされた。
俺達は震え上がり、
女子は泣きわめいた。
それほど真に迫った語り口だった。
先生は職員会議にこの話題を出したらしく、
児童の集団下校と、大人の引率、
パトロールを徹底するよう訴えたらしい。
しかし、全く相手にされず、
先生は半ばゲリラ的に保護者会でこの話を出し強く訴えたが、
やはり一笑に付されてしまったとか。
うちの母ちゃんもその場に居合わせたが、
すごい剣幕だったらしい。
ほどなくして、
先生は休職してしまい(させられた?)、
お別れ会もしないまま学校を去った。
一連の騒動について語ってくれる先生は誰もおらず、
すぐに風化した。
その生物の目撃談は先生の一例だけだったが、俺は
「誰も信じてくれない!
だが先生は見たんだ!
何かあってからでは遅いんだ!
みんな用水路には近づくな、
一人で歩くんじゃない!」
と俺達に言い聞かせた先生の話
が嘘や幻には思えないんだ。
昭和のある田舎での話だ。
河童の金庫
山間の実家で暮らしていた頃、彼はよく川で泳いでいたという。
ある夏の日、友人と連れ立って、普段は誰も行かない淵の方へ泳ぎに行った。
楽しく泳ぎ遊んでいる内、友人の一人が奇妙な物を見つけた。
淵の深みに、一抱えもある木箱が沈められていた。
一体何の木で作られているのか非常に重い代物で、皆で苦労しながら引き上げてみた。
鉤を引っかけ止めるだけの単純な蓋。鍵は掛かっていなかった。
開けてみると、中には胡瓜がぎっしりと詰められていた。
瑞々しくてよく冷えている。
誰かが「もしかするとこれは河童のものじゃないか」と言い出した。
「河童の金庫っていうところか」
「どうせならもっと良い物を入れておいてほしいよな」
そう軽口を叩き合いながら蓋を閉め、元の場所へ沈め直したという。
「何故元に戻したかって? 盗っちゃ河童に悪いだろ」
何でもないような調子で彼はそう言った。
でかい河童
今年の夏(今も夏だけど)に彼女と山にドライブに行った時のこと
ちょっと冒険心を煽るような小道を見つけたんで入ってみようってことになった
でももし行き止まりでUも出来なかったら怖いって事で、俺が車から下りて
見に行く事にした。まぁ数分歩いて何もなさそうだったらあきらめて帰ろうと思って
でもものの3分くらいで大きな広場に出た、これなら車で来ても大丈夫だなと思い、
彼女に電話しようとした。
そのとき奥の雑木林の方に影が見えた。近づいて木の間から覗くと至近距離に河童がいた
嘘っぽいだろ?でも本当にいた。しかもメッチャデカイ。
おれが190くらいあるんだが見上げるほど
チェホンマンを真近でみたことあるけどそれくらいかそれ以上
あっけに取られていると「ゲッゲゲッゲ」と奇声を発して林の億にある
電波塔をよじ登って行った。
彼女からの電話で我に帰って、その話をしたけど勿論信じられず…
山に河童がいるのがそもそもおかしい気はするけど、奇妙な体験でした
謎の生物
家の目の前にスキー場があるんだが夏場はそこにクワガタを取りによく遊びに行っていた 。
その山にはゲレンデとは別にリュージュのコースがありそこが一番の穴場だった。
リュージュのコースはやや長い直線と意外ときついRのコーナーがハーフパイプ状に構成されていてそれなりに傾斜もある。
その日もそこに俺と友達の二人でクワガタを捕獲に行ったのだが朝から収穫は無かった。
しばらくコースのなかを上のほうに向かって進んでいるとコーナーの向こうで何かが動いたのを友達が目撃した。
よく蛇に出くわすこともあったのでその日もどうせ蛇だろうと友達を諭してみたのだが、
「蛇よりもでかかった!」とコーナーに向かって駆け出した。
当時ツチノコがブームになっていたこともあり「ツチノコかもしれない!!」と好奇心も手伝って俺も一緒に追いかけた。
子供ながらによく走ったと思うがコーナーにたどり着いたときには蛇どころかクワガタ一匹見つからず、 鳥でもいたんじゃないか?ってことでまたダラダラと上を目指して歩いていった。
途中に第二スタート台がありそこがいつもの休憩ポイントとなっていた。
スタート台から今来たコースを眺めつつ木陰で休んでいると再び友達が俺に声をかけてきた。
「あれなんだと思う?」
俺が振り返ると友達はコースの上のほうを見て身じろぎせず何かを凝視していた。
俺もその視線の先を目を凝らしてみた。
明らかに蛇ではない何かがコースをこっちに向かってゆっくり進んでいた。
最初はコースに落ちた動物かと思ったが明らかに動き方がおかしい。
芋虫が這うように一定の間隔でもぞもぞ動きながら進んでいた。
だんだんそれを捉えることができてくるとなんとなく形がわかってきた。
「なんか人っぽく見えない?」
そう俺が言うと友達も「人・・・だよな・・・?」
そうつぶやいたと思うと、「正体確かめてくる!」といってスタート台からコースに飛び降りコースを上に向かって走り始めた。
俺はスタート台のスロープからズルズルと壁つたいにおりると友達のあとに続いた。
友達の背中越しに「もぞもぞ動いていたそれ」がこちらの気配に気づいたのか向きを変えたのが見えた。
友達もそれを見て足を速めた次の瞬間その物体は複数の黒い影みたいなものに変わって、リュージュのコースの両壁をシュルっと上って消えた。
俺は友達に追いつくと正体みたか?と聞いたが友達は「いやわからん・・・」とだけ言った。
とりあえず二人でそいつがいたところまで行くことにした。
それが消えた地点から上のほうに向かってコース上には蛇の抜け殻のカスみたいのが続いていた。
それを見て二人とも急に怖くなって大声を出しながらコースを爆走して山を降りた。
特にその後怪異の類には苛まれていないので悪いモノではなかったのかな?と思っている。
そんな30年以上前の話でした。
妙な生物
私は会社の地方事業所に転勤することになり、住み慣れた故郷を離れ、自然の多く残る里山の近くに移り住むことになった。
会社や社寮のある地域は森が道路の真横に生い茂り、夜になるとタヌキ、キツネ、イタチ、シカと様々な野生動物と遭遇する。
偶にクマやイノシシなど危険な動物が山から降りてくることもあるらしいが、その地域では、それらの猛獣以上にシカに気をつけるように言われた。
なぜなら、道路に飛び出たシカを跳ねてしまうと一発で車がお釈迦になるからだ。
特に雄のシカは体が大きく、ぶつかると車体がグシャグシャになってしまうとか。
転勤から数ヵ月後、残業を済ませ夜に会社から寮へ帰り道を運転していた時、すぐ横に大きな山林が広がる道路にまで差し掛かった。
その山林横の道路は元々人の通る道でもなく、街灯も設置されておらず、夜は真っ暗になるので、徒歩で移動するのはご遠慮願いたいような場所だった。
その道はよく動物が飛び出す場所でもあり、会社への行き帰りにひき殺された死骸を見ることが多々あった。
イノシシとぶつかり、新車を駄目にした知人もいたので、その日の夜も念のためスピードを落として通過しようとしていた。
すると、道路横の茂みから車の前にポーンと茶色い何かが飛び出してきた。
飛び出してきたものとは距離も離れていたので
軽くブレーキを踏んで目の前を通り過ぎたものを確認すると、それは大きな雄シカだった。
雄シカはピョンピョン跳ねながら、向かいの林へと駆けて行った。
車にもぶつかることもなく、前もって注意していたのが功を奏したと一安心。
するとその時、さらにもう一体、シカが飛び出した場所から灰色の何かが飛び出してきた。
今度飛び出たものは車の目の前ギリギリを駆け抜け、 車にぶつかるかどうかというところをすり抜けていった。
一体何とぶつかりそうになったのかとバックミラーで後方を確認すると、 そこには灰色の動物が直立していた。
シカやイノシシのフォルムではない。
クマにしては細すぎる。
何よりあんなに背筋を伸ばして立つ動物なんて知らない。
だからといって人間とも思えない。
一般人はこんな道にやって来ないし、猟師にしたって手ぶらなのはおかしい。
そいつは道路の真ん中に佇んでいたかたと思うと、スッと首を回してこちらを見てきた。
その時にはそいつと車は大分離れた距離にあったが、
それでも車をじっと見ている姿がミラー越しにはっきりと見えた。
得体の知れないものに見つめられたことで言い知れぬ恐怖を覚え、私は車を飛ばして寮へ逃げ帰った。
妙な生き物が私を追いかけて来るようなことはなかったが、山林横の道路と寮はそこまで離れておらず、 私を見つめていたあの生き物が寮まで追ってくるのではないかと不安な一夜を過ごした。
あの夜以降、幸いにも私は灰色の何かと遭遇してはいない。
しかし、アレに合ってから、1つ気になっていることがある。
野生動物が絶えずひき殺されている山林横の道路。
あそこは“何か”に追われた動物が飛び出し、車に引かれているのではないか、と。
ギガデーモン
20年前、北関東の小さな町
オレらは小学校の裏山でよく遊んでたんだが、奥の森は広くて危ないから入るなと言われていた
土曜日の午後、友人四人で探検ごっことして森に入った リュックに荷物詰めて、ワクワクしながら散策してた
ある程度奥に進んだところで、岩に腰かけておやつを食べていると、友人の一人がシーッと会話を制し、指をさした
その方向をむくと、なにやら妙な生き物がノシノシと二本足で歩いている 大人ほどの背丈で腹がでており、足は短く、割に手は長い、身体は毛がなく、ツルッとした灰色だか緑色だかが混じったような全身粘膜に見えた、とにかく見たこともない生き物
こちらに気がついていないようだったが、オレらの仲間内でも小心者のはずのAくんがなぜかそいつに向かって空き缶をぶんなげた
空き缶は当たりはしなかったが、そいつはこちらに気付き、向かってきた 目玉がやたらでかくて魚みたいな感じで視線が読めない
しばらく金縛りにあったかのように動けなかったが、友人がワッと叫ぶと同時に全員慌てて逃げ出し、目印に置いておいたおはじきを頼りに森を出た
途中振り返ってみると、そいつは走っているようだったが、足が遅く、俺達は余裕で逃げ切れた
リュックを忘れたため、母ちゃんに怒られて、オレはその話をした
母ちゃんは全く信用してなかったが、俺達全員が揃って同じ証言をしたため、かえってなにか悪いことをしているんじゃないかと疑われ、最終的には保健の先生にカウンセリングのようなものを受けさせられるまで話が大きくなってしまった
俺達は困ってしまい、もうこの話はしないようにした
友人が描いた似顔絵から、ギガデーモン(似顔絵がドラクエのモンスターに似てただけ、本物は全然違う)と呼ばれたその生物は俺達の学年の間で流行り、大人に内緒で何度か捜索隊を結成したが、その後見ることなかった
森でよく仕事をしていた友人の祖父に聞いてみたこともあるが、もう何十年もこの森を見ているが、そんなものは見たことも聞いたこともないとのことだった
今考えると恐ろしいことをしていたな、と思うが、当時なぜか不思議と恐怖心は起こらなかった
俺はもう地元を出たが、今でも当時の友人と飲むとギガデーモンの話が出る
何なんだろうなギガデーモンは?
そういう妖怪でもいるのかな?
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