日本の水神一覧 51柱|種類・役割・龍との関係・浄化など

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日本の水神一覧 51柱|種類・役割・龍との関係・浄化など 神・仏
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1. 綿津見三神(わたつみさんじん)

海の三層(表層・中層・深層)を支配する三柱の海神。
日本の海神体系の中心となる存在。

文献
『古事記』において、伊邪那岐命が海に入って禊をした際に生まれた三柱の海神。

三神の構造

  • 底津綿津見神(そこつわたつみのかみ):海底を司る
  • 中津綿津見神(なかつわたつみのかみ):中間の海域
  • 上津綿津見神(うわつわたつみのかみ):海面・波・潮流

この三層構造は、古代人の海の理解を反映している。

神格

  • 海の統治者
  • 海流・潮汐の支配
  • 海上安全
  • 海産物の恵み
  • 龍宮と結びつく深層世界の支配者

綿津見(わたつみ)=“海神(わだつみ)”の原形であり、
龍神信仰とも密接につながる。

 

2. 大綿津見神(おおわたつみのかみ)

海神(わだつみ)の主神で、海原全体の守護者。
豊玉姫・豊玉彦を生む龍宮系統の祖。

神話背景

山幸彦・海幸彦の神話で重要な位置を占め、
海神宮(龍宮)の主として描かれる。

特徴

  • 海の王
  • 海底の宮(龍宮城)の主
  • 豊玉姫・豊玉彦を通じて天皇家とも関わる
  • 海と龍の世界の結節点

海の水界=龍宮
という古代の観念から、大綿津見は“海の龍神の王”としても理解される。

 

3. 海神(わたつみ / わだつみ)

“海を司る一般神格”として全国で祀られる総称的海神。

役割

  • 海の安全
  • 漁業
  • 潮の満ち引き
  • 海の天候
  • 航海の守護
  • 沖の神・海底神としての性質

「綿津見(わたつみ)」と同源であり、
地域によって大綿津見神と同一視されることもある。

 

4. 住吉三神(すみよしさんじん)

海上守護の最強クラスの海神。航海・造船・国土安定を司る三柱の神。

三神

  • 底筒男命(そこつつのおのみこと)
  • 中筒男命(なかつつのおのみこと)
  • 上筒男命(うわつつのおのみこと)

「筒男」とは“水の中心・水柱”の意とされ、
海の三層構造(綿津見三神と同構造)を守護する。

役割

  • 航海安全
  • 造船・海軍
  • 海の交通
  • 海難防止
  • 禊の力(浄化作用)

特に住吉大社(大阪)は海神信仰の中心地。

 

5. 豊玉彦命(とよたまひこのみこと)

海神族の男性神で、龍宮の血を引く強力な海神。

神話

山幸彦の舅にあたり、豊玉姫の父。
龍宮=海の国の支配者として描かれる。

特徴

  • 海の恵みを統べる
  • 潮流・海底世界を司る
  • 龍神の男性形とも解釈される

 

6. 豊玉姫命(とよたまひめのみこと)

海神の娘で“龍女(龍の姿にもなる)”としての性質を持つ海の女神。

龍神性

出産の際に龍(鰐)の姿に戻る神話があり、
海底の龍神の血を引く「龍女神」として重要。

役割

  • 海の守護
  • 航海
  • 出産・女性守護
  • 海の豊穣

宗像三女神とも系譜が交差し、海神・航海安全の象徴となった。

 

7. 塩土老翁(しおつちのおじ / しおづちのおじ)

潮(しお)を操り、海路を導く“海路の案内者”。
海神の中でも特に航海に強い神。

神話

神武天皇を導いた“海の老翁”として登場し、
航海技術・潮流・船の道を教える存在として描かれる。

特徴

  • 潮汐の調整
  • 船の行方を導く
  • 海の安全を司る
  • 漁業・海運の守護神

海の民(海人族)の守護神でもある。

 

8. 水速女命(みずはやめのみこと)

激しい水流・急流を象徴する水神で、海流にも結びつく女神。

性質

  • “水の勢いそのもの”を司る
  • 急流・渦潮・荒波と関連
  • 海流の神として扱われることもある

祓い・禊とも関係し、
“水の力によって災いを流す”働きを持つ。

 

9. 速秋津日命(はやあきつひのみこと)

水の浄化を司る神で、川から海へ流れる水の変化を象徴。
海の神としての側面も強い。

解釈

水が河口から海へ達し、
「水が清められ、流れの役目を終える」こと
を象徴する。

そのため海=浄化の終着点として、
海神体系に含められることがある。

 

海神体系の構造

領域 役割
海の三層(底・中・上) 綿津見三神 海の統治、潮汐、水圧・海流の支配
海原の王 大綿津見神 海全体の主、龍宮の支配者
航海・海路 住吉三神、塩土老翁 航海安全・潮流調整・船の守護
海神族の血統 豊玉彦、豊玉姫 龍宮族。海の豊穣・女性守護
海流・荒波 水速女命 強い水流・海流
水の浄化と海の境界 速秋津日命、速佐須良姫 祓いと海の連動

 

 

地域水神|井戸神・泉神・川神・湧水神

地域水神とは、
各地の水源・井戸・泉・川・湧水地・沼・淵に宿るとされた神々であり、
生活の安全・農耕・水供給・治水など、古代から現代まで人々の暮らしに最も密接な水神信仰である。

水神は地域に根差して独自の神格を持つ例が多く、龍神や古代の水霊と習合している場合がほとんどである。

 

1. 水光姫命(みずひかるひめ/すいこうひめ)

井戸・湧水の守護神で、神武天皇を導いた“有尾の水神”とされる古い水霊。

神話・伝承
水光姫命は、井戸の神(井戸神)として水場に宿る女性の水霊であり、“有尾人神(尻尾を持つ神)”として古層の水神観を明確に残している。

古代では、
「井戸の底には龍・蛇の神がいる」
という信仰が強く、
水光姫命はその系統に属する。

神格

  • 井戸・泉の守護
  • 地下水の流れの管理
  • 人を導く神格(神武天皇の伝承より)
  • 龍神・蛇神と同系の水霊

祀られ方

井戸に依代(よりしろ)が立てられる例が多く、
“井戸の水の清浄化”を象徴する神として扱われる。

 

2. 若宇加能売命(わかうかのめのみこと)

廣瀬大社の主祭神で、大河川の治水を司る地域最重要の水神。
奈良盆地の水系を守護する川神であり、龍神としても扱われる。

文献

『日本書紀』に見え、廣瀬大忌祭の主神として国家的な祈雨祭祀を担当した。

神格

  • 大河(大和川)の水神
  • 洪水・干ばつの調整
  • 水害鎮護
  • 五穀豊穣
  • 雨乞い・止雨を司る神

川そのものが龍とされるため、
若宇加能売命は“川を統べる龍神”としての性質が強い。
祀られる場所

川の分岐・中州・氾濫原など“水の力が強い地形”。

 

3. 朝熊水神(あさくまみずのかみ)

三重県・朝熊平野の水源に宿る地域水神で、農耕・湧水を守護する神。

背景

朝熊山のふもとの湧水・水田を守るため、
古くから “水の霊” が祀られ、
地域独自の水神として成立した。

神格

  • 湧水・井泉の神
  • 水田の守護
  • 山の水脈・地下水の管理
  • 龍神的側面を持つ

地域によっては「龍神」と明確に呼ばれる。

 

4. 多支大刀自神(たきのおとじのかみ)

石清水・湧水を護る神で、湧き出る聖水そのものを神格化した存在。

神名の意味

「多支(たき)」=湧く、水が生まれるところ
「大刀自(おとじ)」=女性の祭祀者・家の守護神

=湧水を司る女性神 として成立した神格。

神格

  • 石清水(いわしみず)の守護
  • 湧水地の祭祀神
  • 水脈の安定
  • 清らかな水の源泉の守護

「石清水八幡宮」の“石清水”とも深く関係する。

 

5. 泣沢女神(なきさわめのかみ)

“涙の水”から生まれた神で、沢・湿地・湧水地の守護神。
穢れを吸収し、水で鎮める働きをもつ。

神話

伊邪那岐が伊邪那美を想って泣いた涙から生まれた神(『古事記』)。
神格

  • 湿地・沢・谷間の水
  • 水の鎮魂作用
  • 雨乞い・止雨
  • 霊魂を沈める水の働き

奈良県の等彌神社に祀られ、古層の水神信仰を今に伝える。

 

6. 日河比売(ひかわひめ)

霊力のある川に仕える巫女神で、川そのものの精霊(龍神)的存在と結びつく神。

民俗背景

川は古来より“巫女(比売神)が宿る場所”とされ、
祭祀を司る女性神格が多い。

日河比売は、
川の霊=龍神と巫女が一体化した神
として各地に伝承が残る。
神格

  • 川の守護
  • 水の清浄
  • 川の神と人をつなぐ巫女的働き
  • 水に宿る霊との交信

 

7. 深淵之水夜礼花神(ふかふちのみずやれはな)

深い淵に宿る“水の華”の精霊神で、水の気配そのものを神格化した存在。

神格

  • 深淵の水霊
  • 水面に立つ“華”のような霊気
  • 水の変化・流動の象徴
  • 龍神の一属性

信仰背景

古代では、
深い淵=水霊が宿る最も神聖な場所
であり、
龍神・蛇神の依代とされていた。

深淵之水夜礼花神はその象徴神。

 

地域水神の特徴

地域水神は、以下の地形に強く結びつく:

  • 井戸・泉
    → 水光姫命、多支大刀自神
  • 湧水
    → 朝熊水神
  • 沢・湿地
    → 泣沢女神
  • 川・河川祭祀
    → 若宇加能売命、日河比売
  • 深淵・淵の水霊
    → 深淵之水夜礼花神

 

日本の地域水神に共通する特徴

  • 水源の安定=生活の安定を保証する神
  • 龍神・蛇神とよく習合する
  • 祭祀は女性神(比売神)が多い
  • 湧水・井戸など“水が生まれる場”が神聖視される
  • 祈雨・止雨・治水に密接に関わる

地域水神は、
生活文化・地形・自然環境に深く根ざした水神体系であり、
日本の水神信仰の“最も人間に近い位置”の神々といえる。

 

八大竜王|仏教における水神・雨神・龍族の王

八大竜王(はちだいりゅうおう)とは、
法華経(序品)・仏典に登場する龍族の八柱の王であり、
水界の主、雨を司る存在として位置づけられる。

彼らは釈迦の説法の場である霊鷲山に集い、
数えきれない眷属の龍たちを統率して仏法を守護した。

日本では、
・雨乞い
・止雨
・水害防除
・水資源の祈願
・龍神信仰との融合

において、神道の龍神と並ぶほど強く信仰されてきた。

 

1. 難陀(なんだ / Nanda / आनंद Ānanda)

名の意味:歓喜。
兄弟である跋難陀とともに仏法を守護した龍王。

仏典における役割

『不空羂索神変真言経』第十六章
「広博摩尼香王品」に記される龍王。

特徴

  • 兄弟で龍族の王として名高い
  • 過去に娑伽羅龍王と争った逸話がある
  • 仏法を守護する中心的存在
  • 人界に雨をもたらす役割

日本での信仰

大雨・祈雨の対象とされる。

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