心霊ちょっといい話『祟られる』など短編全5話

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心霊ちょっといい話『祟られる』など短編全5話 不思議な話
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馬鹿な孫

 

二月中旬、祖母が亡くなった。
俺は今年、高校受験があったんだが、特に気にせずにお通夜とか葬式とかに出た。
というよりは、むしろ勉強をサボる口実が欲しかったのかもしれない。
本当はギリギリなのに、あの頃、俺はまだ受験勉強を始めていなかった。
試験日の1ヶ月ほど前、俺はまだ勉強を始めていなかった。
ここまで勉強して無いと、流石に落ちるんじゃないかとさえ思い始めた。
だが、勉強を始める気にはならなかった。
そんな時、俺は一つ、とても不謹慎なことを考えていた。
こういうオカルト板とかを読んでると、たまに考えてしまう。
「ばあちゃんは仏さんになったんだ。もしかしたら、俺の高校受験だって、なんとかしてくれるかも」
馬鹿だと思う。
そんな思いで毎日、線香を上げていた自分に、今はすごく腹が立つ。
だが、馬鹿な俺は毎日、手を合わせるだけで、勉強をしようとはしなかった。
そして、試験日数日前のその日もこうしてPCをやっていた。

突然マウスが動かなくなった。おかしい。
調整してはみたが、やはり動かない。
なので、しょうがなく俺は受験勉強でも始めた。
次の日、妹がPCをやっていた。マウスも普通に動いている。
「直ったんだ」と思い、しばらくして俺はPCを起動した。
・・・やはり、マウスは動かなかった。
やはり、その日もしかたなく勉強をした。
そしてテストを終わり、帰ってきた俺の前で、妹はまたもPCをやっていた。
「あれ、マウス・・・動いてるの?」
「うん」
その日から、マウスが動かなくなる事はなかった。

本当に馬鹿な孫だと思う。
死んでしまった祖母の力を借りようなんて。
でも、結局、祖母はそんな俺に力を貸してくれたんだと思う。
俺の時だけ、マウスが動かなくなったのは、俺に勉強させようとして、ばあちゃんがしてくれたんだ。
合格したら、オカルト板に書きこもうと思ってた。
そして、ばあちゃんにお礼を言いたいと思ってた。
なかなか墓参りには行けないと思うけど。
せめて、四十九日まではお礼を言いつづけたいと思う。
ただの偶然で済まされる話かもしれないが、俺は違うと信じている。

 

 

夢での会話

 

死んでから、しょっちゅう夢に母が出てくるようになった。
夢の中では怒られたり、これからの事を心配されたりした。
ご飯はちゃんと作ってるか?とか、部屋はきたなくするな、とか、そんなこと。
そして四十九日の晩の夢。母が私の家に訪ねてきた。

母「サンドイッチ作ったから、マミ(私の子供)に食べさせてあげてね」
私「あがってけばいいのに」
母「いや、私はもういかなきゃいけないから」
私「そっかあ」
母「じゃ、マミをよろしくね。元気でね」

母はそう言って、バスに乗ってでこかへいきました。
それっきり夢には出てこなくなりません。
多分、あのバスで天国へ行ったのだと思ってます。
死んでも尚母としておせっかいしてきてうざいとか思ったけど、起きたときに泣いた。
これでお別れなんだ、ってやっとその時思って。

 

 

祟られる

 

ありゃたしか小3の頃だよ確か。10年くらい前
そん日はダチが誰も来なくて一人で山に行ったんだよ。
んで当時俺は、兄貴が持ってたビデオの仮面ライダーブラックが大好きだったもんでライダーキックやらパンチやらして遊んでたワケよ。一人で。
馬鹿丸出し。そんで俺は「ん?」と思った。
もう目をつぶってもダッシュで10往復くらいできるこん山になんか見知らぬ側道があるわけ。
つーか獣道。もー俺ワクワク。新境地大発見みてーな?
んだよここは。豆みてーな山なのに随分長げーな。
舐めてんのかこの道は、なんて思って歩いてると目の前になんかちっちゃい神棚?社?なんつーんだっけアレ。
とにかくなんか祀ってあんよ。
高さは当時の俺の身長の高さよりちょっとデカイくらいで、扉が開いてて中にはなんか狐がいっぱいはいってんの。しかもこれが笑ってやがるんだ。
当時の俺はこれを即悪と認定。扉をおもむろに閉めてライダーキックを敢行。
意外と頑丈だったけど何度か繰り返すと餓鬼にも破壊可能なくらいにはボロってたようで、程なく木でできた前面部は大破。

本当はもう全部壊したいみたいな感じだったんだけど暗くなったのでその日は帰ることに。
で、家帰ったらやっぱりお約束みたいに倒れたね。
熱が40度近く出た。新手の風邪かインフルエンザかと思って「やた!学校休める!」と大喜び。
でも結局死んだ方がマシ級に苦しんだんで直ぐに後悔。
んで夜中にトイレに起きたの。なんか犬が吼えてんの。
ウルセーなこんな夜中に。飼い主はナニやってんよ?と窓覗くとなんか田んぼに無数の光が灯ってんの。つーか炎みたいのがういてんの。
なんか農家でやってんのかな?と思って更に見てると窓越しになんか聞こえてくる「まだ」「入れない」とか言ってんの。
その声がまた変。TVでよくスローにした時に出る声。あれみたいな重低音な声と俺と同じくらいのガキの声。あれが交互にボソボソ聞こえてくる。
さすがに怖くなってその日は布団に潜って寝てしまった。
数日しても熱下がらない。病院で調べてもなんか風邪でもインフルエンザでもツツガムシとかでも無いらしい。
いわゆる原因不明の熱?県庁所在地にある大病院言っても同じ結果。
俺ヤバい。マジやばい。死ぬ。冗談抜きで。
んでちょうど夜中に起きて「またあの炎か」とかって窓見てると親が丁度タオル代えに来て。

何してるか聞かれたから見た事を話すと、なんか真っ青になっちゃって次の日病人の俺を無理やり引き摺って地元の昔からいる霊能者のババアんとこに連れて行かれた。
んで行くなり、アンタ稲荷に祟られてるって言われた。
さすがの俺も、先日の山中でのお茶目を思い出す。

んで御詫びに、その社を修復してオアゲでも供えなさいって事になったんだけどどうもそっからがおかしな事になった。
だってそんな社最初ッから無かったんよ。
俺が言った場所には獣道なんてどこにも無かったんだって。
そんな筈無いってダチに言って案内させようとしたけどやっぱそんなん無かったらしい。
ていうかそこの地主にもそんな無いって言われた。
したらその霊能者のババアが言うには、どうも厄介な事になったらしくて。
話を聞くと、どうやら「俺が社を壊したから」祟ったのではなく「俺を祟るため」に社を「俺に壊させた」んだというんよ。
悪質なのに捕まっちゃったみたい。嵌められた。俺狐に嵌められた。
んで普通なら速攻憑り殺されてるんだけど、家守ってる動物がいるから
狐は入って来れないでいるって事らしい。
ババアの家を出ると流石に体力の限界が来たらしい。
貧血が真っ白んなるみたいに視界と意識がフェードアウト。
目が覚める。なんかもうボーっとしてる。体も動かない。

ん?と横目を見ると。
狐。狐に囲まれてる俺。
なんで?家には入って来れない・・・ってここ病院じゃねーか!
マジやばい。俺ヤバイ。「もらうもらう」とか言ってる。
俺タマ取られちゃう。金玉じゃなくてタマと書いて命と書くほうのタマ。
俺ピンチ。にはは。
したら不意に病院の壁から手が出てきたの。「ぬっ」て。
帝国軍人が。あれすか?親玉すか?とか思ってると狐を遮るように俺の前に仁王立ち。
そして帝国軍人はおもむろに日本刀を振り上げ殺戮開始。
エイヤーとばかりに狐たちを切り捨てていく。狐も応戦してるけど貫目が違う。
程なく狐は全部切り捨てられて消えてしまいまった。
んで振る帰ると、その軍人。俺を撫でてくれた。
そしたらその軍人さん、みるみる顔が年取っていって、見覚えのある顔に。
死んだ爺ちゃんだった。
俺なんかうれしくなっちゃって、涙出てきて。

したら爺ちゃんいきなり「泣くな」って頭をグーで殴りやがった。
間違いないね。もっとガキの頃、泣き止まない俺の口に飴玉を10個くらい
放り込んで「これやるから泣くな」って、そらもっと泣き喚きますよって感じの爺ちゃんに間違いない。
さらに見ると後ろにでかいセントバーナード。
爺ちゃんが飼ってた犬だ。ああそうか。お前が吼えて守ってくれたんだなって思った。
次の日目が覚めると熱はパーペキ治ってた。
帰りに味噌ラーメン大盛りとギョーザとライス食ったくらい治ってた。
しばらくしてから、その山でガケ崩れがあって、丁度俺が社があると思ってたあたりが完璧エグれて無くなったらしい。

でもあれはやっぱ夢だったのかな?
わーけわからん。
じゃ。
爺ちゃんありがとう。

 

 

運がいいラッキー

 

二、三年前の事。

正月明けだった。
その日たまたま買ってきたブロッコリーに芋虫がついていた。
普段ならつまんで外に放り出すのだが、なんかそれが出来なかった。
ガラスのボウルにキャベツをひいてブロッコリーを真ん中に置き、芋虫をいれてやった。
運良く潰れなかった事からその芋虫を「ラッキー」と名付けた。

一月九日。
ガラスのボウルに器用に糸を張ってサナギになっていた。

二月九日。漏れの誕生日
ボウルに張り付いて乾いて死んだ蝶が中にいた。泣いた。もう少し早く発見できれば生きていただろうに。
「ごめんなラッキー。ごめんな。」
その声応じるかのように中の蝶が少しだけピクピクと動いた。
あわてて霧吹きで水をやり、ポインセチアの上に乗せてやった。辛うじて生きていた。
ポインセチアには砂糖水をのせた。
彼はボウルに張り付いていたせいで飛べる羽では無くなっていた。
だが、もう少し発見が遅ければ死んでいただろう。
「ラッキー。おまえはやっぱりラッキーなんだな。」
漏れにとって一番の誕生日プレゼントだ。とても可愛いモンシロチョウ。

それからの毎日が幸せだった。
ラッキーはとても賢い蝶で、つまようじを差し出すとそれにつかまった。
その間にポインセチアを新しいのに取り替える。
恐らく彼は飛ぶことが出来ない事が分かっているのだろう。
そして漏れが危害を加えることはないと。

三月八日。
いつもいるはずのラッキーがいない。
あわてて探す。ちなみに玄関先。
長靴の中にいた。辛うじて生きていた。
だがここから出すためにはどうすればよいか。
菜箸を長靴の中に入れると、それにつかまった。
救出成功。
やっぱりお前は賢い蝶だ。

その夜、漏れが一階のトイレに降りていくと、玄関先から光のすじらしき物が見えた。
何かの見間違えだろうと思い、気にせずに寝た。

三月九日。
ラッキーがポインセチアの上で眠るように死んでいた。
漏れは泣きながら庭の隅に、ポインセチアと一緒に埋めてやった。

四月九日。
ここらへんでは見かけないモンシロ一匹にたまたま遭遇。
「おまえは…ラッキーなのか?」

そういえば、と三月八日の事を思い出す。
あの光のすじ。
「あの光は天からのつまようじか…
あいつの魂はその光のすじに乗って天国にいったんだな…」

そんな事を思っていると、そのモンシロが漏れのほうに近づいてきた。
「天から最後のお別れに来たんだな。」

しばらくすると、漏れからそのモンシロが離れていった。
そして見えなくなった。

…今度こそ本当にさようなら…

 

 

ハトになつかれるわけ

 

この正月に体験した、全然いい話じゃないけど、俺にとっては不思議な話し。
ちょっとグロいけど。
俺の家の庭で、ハトが何者かに食い殺されたのか、庭中に羽根と血が飛び散っていた。
多分、動物か何かが庭で鳥を補食したのかもしれない。
かなり凄惨な事になっていて、びっくりしたけど、ちょっとだけ残っていた残骸と数枚の羽根を地面に埋めて、飛び散った血を洗い流した。
で、埋めた場所の前で手を合わせていると、突然、目の前の何もなかったはずの木の枝からバサササっと一羽のハトが飛び去っていった。
見上げると、そのハトは庭の上空を一回旋回して、空気に溶け込むように消えてしまった。
なんか、漠然と「ああ、天国へ飛び立ったんだな」と思って、家に入った。
それから、なんか妙にハトと気が合うようになった。
家の近くにある寺の境内にいるハトが、妙に近くに寄ってくる。
近づいても逃げだそうとしない。
歩いていると肩にハトが飛び乗ってきたり、くちばしに小さな赤い木の実をくわえてきて、俺の前に置いて飛び去ったり(これは偶然かも)。
そして、今、ハトを埋めた場所の近くにある、去年まで咲きもしなかった杏が満開に花を咲かせている。
偶然が重なっただけかもしれないけど、ちょっとだけ不思議で嬉しかった。

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