『やまけらし様』など短編3話 – 神様にまつわる怖い話・不思議な話

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『やまけらし様』など短編3話 - 神様にまつわる怖い話・不思議な話 怪異譚
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神様や神社などにまつわる怖い話・不思議な話の体験談を読みやすくまとめました。

 

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神様にまつわる怖い話・不思議な話

 

やまけらし様

俺の家は物凄い田舎で、学校に行くにも往復12kmの道程を、自転車で通わないといけない。
バスも出てるけど、そんなに裕福な家でもないので、定期買うお金がもったいなかった。
学校への道は、ちょっと遠回りだけど街中を通る道と、若干近道だけど山越えをする道と2つあるんだが、
俺は山越えで汗だくになるのが嫌だったので、ほとんど街中のルートを通っていた。

 

ある日、学校の体育館で友達とバスケをしていて遅くなった俺は、早く帰ろうと自転車で山越えをしようとしていた。
街中に入る道と山道に入る道の分岐点にあるコンビニで飲み物を買って、いざ山越えに。
日が沈み始めた山道は結構不気味で、ひぐらしの鳴く声を聞くと、心細くなってやけに不安になる。
戻って街中を通ろうかな…なんて思いつつ、ガッシャンガッシャン自転車をこいでると、
急に「も゛っも゛っも゛っ」ていう、表現しにくいうめき声のようなものが聞こえ、その瞬間に、何かが背中にドスッと落ちてきた。
上半身をグッと下に押し付けられるような感覚に襲われ、冷や汗とも脂汗とも言えない妙な汗が、体中から噴き出してきた。
怖くて振り向けずに、とりあえず峠を越えようとがむしゃらにこぎ続けてた。
その間にも背中から、「も゛っむ゛む゛っ」と変な声が聞こえている。

絶対変な物を背負ってしまった。どうしよう・・・
と涙目になって自転車こいでたら、上り坂の終わり、峠の中腹の開けた場所に出た。
息を切らしながら足をついて、崖側の方に目を向けると、小さな女の子が居た。

 

夕日の色でよくわからなかったけど、
白っぽいシャツの上にフードつきの上着と、デニムスカートを穿いたセミロングの子。大体6~7歳くらいに見えた。
車なんて通らない田舎の山道に、しかももうすぐ日が暮れてしまう山道に、女の子がいるはずがない。
ああ・・・ひょっとしなくても幽霊か・・・って思って動けないでいると、
その子は小走りで俺の足元まで来て、俺をじーっと見上げた。
10秒くらい見つめたかと思うと、急に俺の太ももを埃を払うようにパンパンっと叩いた。
「大丈夫だよ、安心して?」と言ってるかのようにニッコリ笑うと、崖の向こう側に走っていって消えてしまった。
崖下に落ちた!?と思って自転車を降りて覗いてみたけど、崖下には人が落ちた形跡は無かった。
やっぱり人間じゃなかったわけだ・・・
不思議な事に、女の子に太ももを叩かれてから背中の重みも消え、妙な声も聞こえなくなった。

 

結構暗くなってから、やっとこさ家に帰った俺は、
あの背中の妙なものと峠に居た女の子の事を、ばあちゃんに話した。
ばあちゃんはその話を聞くと、何の木かわからないけど、葉っぱのいっぱい付いた枝を持ってきて、
俺の頭から背中、腰にかけて2~3回払った。
一体何事かと聞くと、「お前が会ったのは『やまけらし様』だ」と教えてくれた。

ばあちゃんの話によると、背中に落ちてきた物は、俺を向こうの世界に引っ張ろうとしたかなり性質の悪いもので、
そのままだったら、確実に引っ張られてたらしい。
そして、峠の途中で会った女の子が『やまけらし様』だそうだ。
『やまけらし様』は山の神様の子供で、全部で12人いるらしい。
普段は人に対して特に何をするでもなく、山を遊びまわってるだけなのだが、
俺に憑いた物がよほど悪かったのか、それを払って捨ててくれたそうだ。
「無邪気で純粋な『やまけらし様』はきっと、
とんでもない物を背負ってるお前が可哀想に見えて、取ってくだすったんじゃろ・・・」
との事だった。

 

俺はなんとか『やまけらし様』にお礼をしようと、お供え物をあげる事にした。
昔は12足の小さな草鞋を供えたらしかったので、俺も供えようとしたけど、草鞋なんてどこにも売ってない・・・。
ふと『やまけらし様』を思い出すと、なかなか現代風な格好をしていたので、
小児用の動きやすいスニーカーを、12足供える事にした。
とりあえず2足買って、朝の登校時、あの峠の中腹の草むらに揃えて置いていた。
帰りに無くなってるか確認したかったけど、
ばあちゃんの話じゃ、夕暮れの時間は良くないものがうろつくから危ないという事で、
次の朝の登校時にまた同じ場所を見に行くと、靴が無くなっていた。
きっと『やまけらし様』が気に入って、履いてくれたんだろうと思う。

お小遣いの関係で、1週間に2足ずつしか供えれないけど、来週には全部供えれる。
走りやすいスニーカーを履いて、山の中を遊びまわってる『やまけらし様』を想像すると、自然とニヤけてしまう。
いつかまた目の前に現れてくれないかな・・・
と淡い期待を抱く俺の登校ルートは、自然と山越えになってしまった。

大量の目

この話は中学一年の夏休み、よく遊んでいた友人と3人で肝試しをした時に体験した出来事。その後なにかあったとか感染系って訳でも無いけど、個人的には洒落にならないぐらい怖かったので書いとく。

 

その時行ったのは地元では有名な心霊スポットで、少し山を登った所にある古い小屋。特に謂れのようなモノは無かったが雰囲気が不気味だからか、
かなり昔から心霊スポットとされていて、幽霊の目撃談もかなりたくさんあった。更には自分達が小学校低学年だったころ、その小屋の近くで近所のヤンキー二人の遺体が発見された事件があり、呪われた場所として地元の人間からは恐れられていた。(どちらも死因が刺し傷でナイフを所持していた上、小屋の中からビールの空き缶が見つかった事から、酔った勢いで喧嘩がエスカレートしてという事で事件は片付けられた)

 

流石に人死が出た場所だし、もし幽霊がホントに出たらヤバいだろーなという話から、念のために肝試しに行く前に近くの神社にお参りをしようぜという流れになった。お賽銭は皆同じ100円と決めてから、日が落ち始める頃にお参りをして例の小屋に向かった。完全に日が落ちてから小屋に到着、山の中にあり街灯などは無かったが、月が非常に明るかったため懐中電灯だけで特に苦も無くたどり着く事が出来た。

 

件の小屋は心霊スポットになるだけあり、AとBは「こえー」だの怖がりながらも半ば楽しんでいる雰囲気だったが、Cだけはやたらと真剣な顔で周囲を警戒していた。怖がりだなーと軽くからかった後、小屋の扉を開けて中を懐中電灯で照らした。小屋の中は今は使われていない古い農具等が置かれているだけで特に変わったモノはなく、中に入って一通り見回してみたがやはり何もなかった。

 

しばらく小屋の中で話をしてから外に出て、期待外れだったなー等と言い合いながら、当初の予定通りB家に言ってゲームしようと小屋に背を向けて歩き出そうとした瞬間、ガラガラ、と扉が開く音がした。反射的に振り返り小屋の扉を見ると少しだけ空いている。しかもその僅かに開いた隙間の中には縦にびっしりと並んだ大量の目が見えた。しかも全ての目がこちらを凝視している。

 

誰かが「ひっ」っと小さな悲鳴をあげると同時、扉が物凄い勢いで開いた。だけどソコには何もなかった、さっき見た大量の目も何も。俺らが唖然として固まっているとCが「おい!!逃げるぞ!!」と俺の手をつかんで駆け出した。俺もそこで「あ、なんかコレヤバい」と思いCと共に「AとBも早くしろ!!」と叫んでから駆け出した
Cに続いて暗い山道を全力で走った、幸い来たときのルートはあまり険しい道では無かったため、逆走すれば比較的安全に山を下る事が出来た。走っている最中、AとBが着いてきているか確認するために何度か振り返ったが、目に見えない何かが俺たちを追いかけてきているのが分かった。しかも大量に。木や草があちこちでガサガサと揺れて、まるで山全体が俺たちを追いかけてきているようだった。

 

しばらくCを追いかけるように走っていると、最初にお参りをした神社が見えた。Cが迷うこと無く神社の鳥居をくぐった為、俺たちもそれに続いた。鳥居をくぐり本殿の前までいくと疲れたのか、Cが息を切らしながその場にへたりこんだ。そのようすを見て俺たちも急に疲れが押し寄せてきて、その場にへたりこんでゼーゼーと息を整えた。ある程度息が整った所で鳥居の方を確認したがさっきまでの奴らが追いかけてきている様子はない。ほっとしたところで違和感を感じた、本殿の中に灯りが見える。この神社は石段を登って鳥居をくぐればすぐに本殿があるような小さな神社で、こんな時間に人がいるなんて事は普通はない。それに気付いた俺が緊張しなが本殿の灯りを凝視していると、すすすっと本殿の扉が開いた。
さっきの事を思い出し俺達はビクッとして身構えたが、中から出てきたのは真っ黒な洋服を着た髪の長い女性だった。中1の俺が一目見て「お姉さん」と感じたから多分高校生か大学生ぐらいの見た目だったと思う。お姉さんは俺たちを見て一瞬怪訝な顔をしたがすぐに優しく微笑んで「どうしたの?」と聞いてきた。お姉さんに言われて本殿の中に入ってからAがさっきあったことを必死に説明した。お姉さんはAの話を真剣に聞いてくれた。

 

Aが一通り話し終わった頃には俺達も大分落ち着いてきてさっきまでの怖さは随分薄らいでいた。Bなんかは「実は幻覚だったんじゃね」とか言い出してた。Aの話が終わった後、お姉さんは軽く自己紹介をしてくれた。なんでもこの神社を管理している家の人間で、神社の掃除をしていたら古い書物を見つけて、読んでいたらこんな時間になってしまったとかなんとか。その後はお姉さんが少し外の様子を見に行ってくれて、もう大分遅い時間だからと、送られてそれぞれの家に帰った。道中お姉さんがくれた豆大福がやたら美味かったのはよく覚えている。その後家に返って親に軽く事情を説明して(元々Bの家に泊まると言っていた)風呂入ってから寝た、因みに親はやっぱり信じてはくれなかった。

 

翌朝目が覚めて、昨日の事は幻覚だったのかなーと思い始めた頃、一つ重大な事に気付いた。俺達は最初は3人だったはずだ。俺とAとB。じゃあCって誰だったのかと考えていたら母親に呼ばれた、Aから電話がかかってきたらしい。電話に出たらAはやっぱりCの話をしてきた。二人であーでもないこーでもない言っているとふと気付いた。そういえば『アレ』を見たときに真っ先に逃げるように言ったのも神社に向かったのもCだったなと。

 

その日の昼にまた三人で集まって神社に行くことにした。集まってからBが「そういえば」と前置きして話を始めた。出掛ける前にちょっと思い出したから親にあの神社を管理している家が何処かと聞いてみた所、なんと俺の家って答えが返ってきた来たらしい。「あんなお姉さんお前の家にいたっけ?」と聞かれたが当然俺は知らない。変な間と静寂の後、Aがポツリと呟いた。

 

「もしかして、あの神社の神様が俺達の事を助けてくれたんじゃ」
俺もBを何となくその考えがしっくりきてそうなんだろうなと思うことにした。そのあと3人揃って神様にお礼を言った、お賽銭は奮発してそれぞれ500円づつ出した。

その後俺は祖父母が時々行っている神社の掃除を手伝うようになったが、あのお姉さんとCには1度も会っていない。そしてあの時の事を思い出すたびあることを考えてしまって背筋に寒いモノが走る。

もし本当に神様が助けてくれたというのなら、例の小屋で見た『アレ』は…

竜神様

私の家系は洪水を鎮めるために、進んで人身御供をするくらい信仰深い家だったらしい。しかも、それをした子がまだ3歳だったとか…。この時点で嘘くさいし、その結末も竜神様のご加護で悪運が強いとかありきたりな話。話してくれたおじいちゃんも家族もだれも信じてなかった。

 

すっかり記憶から消えて私が大人になったある日、私が新婚旅行の代金を支払いに行く日の朝のことだった。準備をしてリビングのドアに手を掛けた瞬間、まずコンセントの抜かれたテレビがついた。今度は、同じくコンセントが抜かれてしまったはずのドライヤーの音が聞こえてきた。その怪奇現象よりも怖かったのは、空間そのものが臭い。生臭い。

 

息をするたびに生臭い魚の汁を飲んでいるみたいだった。それからジェットコースターの時みたいにお腹がフワフワして、身体に力が入らない。その状態でドア越しには生き物の気配がする。寝室の窓から脱出して自分の車に飛び乗るも、車検をしたばかりの車が動かない…。 すべてにおいてこの21世紀に、あり得ない事態が何よりも怖かった。

 

しばらくして、私の前をある夫婦がのった車が通り過ぎると、あっさり車が動いた。車に置いておいた予備の靴を履いて代理店に向かうも、着く前に私の旅行の担当者から電話が入った。新人の手違いで旅行の宿泊先と日時がある客とブッキング。しかもその客は手付金を支払って帰ったそうな。予定を一カ月も早めることになり、私たちは夫婦共々、仕事先に迷惑かけるわ、クソ寒い中の温泉で風邪を引いてこじらせるわ、旅行先でお土産よりも治療費がかかって離婚寸前まで揉めた。職場でも針のむしろで、もう職場を辞めて離婚しようかと思ってた。

 

それから一ヶ月後、昼休みは終わったというのに職場の休憩室が騒がしい…。やがて上司に引っ張られて休憩室に行くと、テレビであの震災の映像が流れた。自分は↑思い当たる筋があったから落ち着いてたけど、職場のみんなは真っ青。その日は私だけ早く返された。ラッキーと思いながら帰宅すると、旦那と厳しい姑が泣きながら飛びついてきた。

 

あの話で先祖は恩恵を受けるが、あくまでも悪運でしかないから誰かが身代わりになる。あの夫婦は帰ってこなかった。

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