- 獬豸(かいち)
【Xièzhì/シェージー】
正義の瑞獣。是非を断じ、罪人を角で突くとされる。官服や司法徽章の意匠にも用いられた。
― 一角は秤、沈黙は判決。 - 玄武(げんぶ)
【Xuánwǔ/シュエンウー】
四神の北方守護。亀蛇相纏の姿で冬・水・守護を司る。
― 背甲に刻まれたのは、北風の地図。 - 産鬼(さんき)
【Chǎnguǐ/チャングイ】
難産で亡くなった女性の霊が鬼となったものとされ、出産の場を脅かす。
― 産声と哭声の境で、母の影は立ち尽くす。 - 畢方(ひっぽう)
【Bìfāng/ビーファン】
『山海経』の一足鳥。鶴に似て青く、その出没は火災の兆しとも言われる。
― 青い足跡のあとに、灰の道が延びる。 - 疫鬼(えきき)
【Yìguǐ/イーグイ】
疫病をもたらす鬼。祓除の行事・符咒と結びつき、春節の厄祓いにも影を落とす。
― 見えない手が、門々の戸を叩く。 - 瘧鬼(ぎゃくき)
【Nüèguǐ/ニュエグイ】
熱病(瘧)を起こす鬼。符や禁忌で鎮めると信じられた。
― 震える熱は、名を与えられた恐怖。 - 白娘子(はくじょうし)
【Bái Niángzǐ/バイ・ニャンズー】
四大民話『白蛇伝』の主人公。白蛇の精が人に恋し、許仙との愛を貫く。
― 白き絲のような雨が、約束を結ぶ。 - 白沢(はくたく)
【Báizé/バイザー】
人語を解し、天下の妖を識る瑞獣。黄帝に妖魔の記を授けた『白沢図』の伝説で知られる。
― 角の間に、万怪の名簿が挟まる。 - 白虎(びゃっこ)
【Báihǔ/バイフー】
四神の西方守護。金・秋・義を司り、戦神・護国の象徴ともなる。
― 風切る牙は、義の刃。 - 白骨夫人(はっこつふじん)
【Báigǔ Fūrén/バイグー・フーレン】
『西遊記』の妖怪。白骨に化けて三蔵を狙うが、悟空に三度見破られる。虚飾と執着の象徴。
― 肉なき微笑ほど、甘く危ういものはない。 - 白龍(はくりゅう)
【Báilóng/バイロン】
天帝に仕える龍。『西遊記』では白龍馬として三蔵に尽くす。
― 鬣に巻く風は、誓いの綱。 - 盤古(ばんこ)
【Pángǔ/パングー】
混沌を割って天地を分けた創世神。死後、その身は山河・日月星辰となる。
― 骨は峰、血は川、息は雲と化した。
- 相柳(そうりゅう)
【Xiàngliǔ/シャンリウ】
九つの頭をもつ大蛇。共工に仕え、各地を洪水と毒で荒らしたとされる。
― 九首の舌が、河の行方をねじ曲げる。 - 睚眦(がいし)
【Yázì/ヤーズィ】
「龍生九子」の一体。殺気と闘争を好み、刀剣や刀環の装飾に彫られる守護獣。
― 刃のきらめきの奥で、牙が笑う。 - 穆王八駿(ぼくおうはっしゅん)
【Mù Wáng Bā Jùn/ムー・ワン・バージュン】
周の穆王が駆った八頭の神駿。各馬に神異の能力があり、帝王の遠征譚を彩る。
― 轡の響きは、王道の風を呼ぶ。 - 窮奇(きゅうき)
【Qióngqí/チョンチー】
四凶の一。翼ある獣として描かれ、善を害し悪を助けると伝えられる。
― 正邪は逆さ、翼は闇へと翻る。 - 紅孩児(こうがいじ)
【Hóng Hái’ér/ホン・ハイアル】
『西遊記』に登場。牛魔王と羅刹女の子で、三昧真火を操る童子の妖仙。
― 炎の揺りかごで、幼き王は笑う。 - 縊鬼(いき)
【Yìguǐ/イーグイ】
首を括って亡くなった者の怨霊が鬼となったもの。人に取り憑き自死へ誘うと恐れられる。
― 結び目ひとつが、生の端を曇らせる。 - 羅刹鳥(らせつちょう)
【Luóchàniǎo/ルオチャー・ニャオ】
袁枚『子不語』に見える怪鳥。墓場の陰気から生じ、人を襲う魔性の鳥。
― 羽音は、土に眠る声を攪(かくはん)する。 - 羽民(うみん)
【Yǔmín/ユーミン】
『山海経』に記される翼ある人々の国。空を飛ぶとされる伝説上の人類。
― 白い影は、雲と人の境を忘れる。 - 蒲牢(ほろう)
【Púláo/プーラオ】
龍生九子の一。咆哮を好むため、鐘の鈕(ちゅう)や装飾に用いられ、音を増す守護意匠とされる。
― 一鳴きで、伽藍の空気が震える。 - 角端(かくたん)
【Jiǎoduān/ジャオドゥアン】
黒い麒麟とも言われる法の守護獣。不正を憎み、罪人を角で突く(獬豸と同系の瑞獣)。
― その一角は、天秤の剣。 - 虹蜺(こうに)
【Hóngní/ホンニー】
古代中国で「虹(雄)と蜺(雌)」として語られる天象の霊。吉凶いずれの兆しともなる。
― 天の橋は、ときに凶事の門でもある。 - 蚩尤(しゆう)
【Chīyóu/チーヨウ】
黄帝と戦った古代の戦神・部族長。霧や兵器を操る怪神として描かれ、後世は武勇の象徴。
― 鉄の霧の中で、咆哮が道を拓く。 - 蛟(みずち)
【Jiāo/ジャオ】
水に棲む龍の一種。修行を積んで龍へと昇る前段階の存在とされ、洪水・渦と結びつく。
― 深みの泡が、未だ名を持たぬ龍を孕む。 - 蛟竜(こうりょう)
【Jiāolóng/ジャオロン】
蛟が成長した龍。江河湖海の守護と暴威の両面を持つ。
― 水鏡は、守護と災いを同じ鱗に映す。 - 蜃(しん)
【Shèn/シェン】
巨大な蛤の霊獣。吐く気で楼閣の幻影(蜃気楼)を生むとされる。
― 砂の熱が、海市の都を積み上げる。 - 螭吻(ちふん)
【Chīwěn/チーウェン】
龍生九子の一。屋根棟の両端に据える獣形飾りで、火災除け・魔除けの守護。
― 棟の口が、火の舌を呑み込む。 - 螭首(ちしゅ)
【Chīshǒu/チーショウ】
角のない若い龍(螭)の頭部意匠。石碑台座や水路装飾などの伝統モチーフ。
― 石に刻まれた鱗は、時を泳ぐ。 - 諦聴(たいちょう)
【Dìtīng/ディーティン】
万物の声を聞き分ける霊獣。仏教・道教圏で真偽判別や司法の象徴とされ、地蔵(地蔵菩薩)や文殊像の脇侍に表されることもある。
― 沈黙さえ、彼の耳にはうるさい。

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