日本の水神一覧 51柱|種類・役割・龍との関係・浄化など

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日本の水神一覧 51柱|種類・役割・龍との関係・浄化など 神・仏
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2. 跋難陀(ばつなんだ / Upananda / उपनन्द Upananda)

名の意味:亜歓喜。
難陀の弟として知られる龍王。

仏典での働き

  • マガダ国を保護し飢饉を防いだ
  • 釈迦誕生の時に雨を降らし洗礼のように灌ぎ清めた
  • 釈迦の説法の場に必ず参じた
  • 仏滅後も永く仏法を守護すると誓った

日本での性質

慈悲深い龍として祈雨・水害鎮護に信仰。

 

3. 娑伽羅(しゃがら / Sāgara / सागर)

名の意味:大海。
龍宮の王として有名な“海を統べる龍王”。

特徴

  • 海を支配する最大級の龍王
  • 娘に「八歳の龍女(善女龍王)」がいる
  • この龍女は法華経・提婆達多品で成仏することで有名
  • 清瀧権現の起源とも深く関係

日本での影響

娑伽羅龍王の娘(龍女)は、
清瀧権現・善女龍王として神道とも習合した。

 

4. 和修吉(わしゅきつ / Vāsuki / वासुकि)

名の意味:宝。
インド神話に由来し、九頭龍王・九頭龍大神の原型となった。

特徴

  • 「九頭龍王」「九頭龍大神」と呼ばれる根拠の一柱
  • 須弥山を守護する龍
  • 細龍(小さな龍)を捕食する強力な龍王
  • 元は千頭とも言われ、多頭龍の原型

日本への影響

箱根九頭龍神社など、
日本の“九頭龍”信仰の祖となった龍王

 

5. 徳叉迦(とくしゃか / Takṣaka / तक्षक Takṣaka)

名の意味:多舌・視毒。
伝説では“視線だけで人を死に至らしめる”ほど強力な龍王。

由来
印度叙事詩『マハーバーラタ』では蛇王として著名。

日本での展開

  • 七面天女は“徳叉迦の娘”とされる(身延山伝承)
  • 身延・日蓮宗における龍神信仰に強い影響

特徴

  • 守護と破壊の両面を持つ
  • 水難・災厄に関わる強大な龍神として畏敬される

 

6. 阿那婆達多(あなばだった / Anavatapta / अनवतप्त)

名の意味:清涼・無熱悩。
ヒマラヤ北方の“阿耨達池(無熱悩池)”に棲む大龍王。

阿耨達池とは

ヒマラヤの北にあるとされる神秘の巨大湖。

  • 四大河(インダス・ガンジス等)が流れ出す源
  • 湖岸は四宝(金・銀など)でできている
  • 800里(約300km)にも及ぶとされる

特徴

  • 阿耨達龍王は“菩薩の化身”とされる
  • 水の恵みの根源
  • 清らかで苦悩を癒す水の象徴

日本では
無熱悩池=清浄な水の象徴として信仰。

 

7. 摩那斯(まなし / Manasvin / मनस्विन)

名の意味:大身・大力。
海を押し返したほどの力を持つ強大な龍王。

神話
阿修羅が海水をもって“喜見城”を侵したとき、
摩那斯が身をくねらせ海水を押し戻したという。

性質

  • 大変動を鎮める龍
  • 洪水・高潮を司る
  • 大海の勢力に対抗できる龍王

日本では「大力の龍神」として畏敬される。

 

8. 優鉢羅(うはつら / Utpalaka / Utpalaka / 青蓮華龍王)

名の意味:青蓮華(ウツパラ)。
美しい青睡蓮が咲く池に棲む龍王。

仏教的象徴

青蓮華は

  • 仏の眼(紺青)
  • 清浄

  • の象徴。

特徴

  • “青蓮華を生じる池”の守護者
  • 清き水の象徴
  • 芳香・美・光の神性を持つ水龍

中国では“青蓮宇=寺院”の象徴にもなるほど、
聖性を帯びた龍王。

 

日本における八大竜王信仰の特徴

1)祈雨・止雨の中心的存在

神道の龍神と並び、
雨を呼ぶ力・水害を鎮める力を持つとして
朝廷・民間の双方から信仰。

 

2)龍神=水神=仏教の護法

八大竜王は
“仏教の守護者”と“水神”の二つの性質を併せ持つ。

 

3)神道との習合
  • 娑伽羅 → 清瀧権現・善女龍王
  • 和修吉 → 九頭龍大神
  • 徳叉迦 → 七面天女
    など、日本の龍神の多くは八大竜王と習合して定着。

 

4)水の分配・湖・川の源泉などを司る

阿那婆達多のような“清浄な湖の龍王”は
日本の湧水・湖神信仰(諏訪湖など)とも重なる。

 

八大竜王一覧
名称 意味 日本における性質
難陀 歓喜 雨・水害鎮護
跋難陀 亜歓喜 釈迦誕生の雨、慈悲の龍
娑伽羅 大海 海の王、龍宮の主
和修吉 九頭龍の原型、山の龍神
徳叉迦 多舌 厄災・強大・七面天女の父
阿那婆達多 清涼 湖と湧水の守護、清浄
摩那斯 大身 海を押し返す大力の龍
優鉢羅 青蓮華 美・清浄の水龍

 

弁才天・水天・水釈天 など神仏習合の水神

日本では、
インド・中国・日本固有の神々が、水(川・海・泉・井戸)を媒介として融合する
という独特の信仰体系が展開した。

このカテゴリに属する神々は、
・元はインドの河神
・仏教の天部
・龍王の娘
・蛇神・水神との習合
・神道の女神との混融

といった要素が複雑に絡み合っており、
“日本の水神信仰の最高峰の一つ”を構成している。

 

1. 弁才天(べんざいてん)

インドの河神サラスヴァティが仏教に取り入れられ、日本で“水神・芸術神・財運神”として多重に発展した女神。
日本の水神として極めて重要。

起源:インドの河神サラスヴァティ
本来は

  • 川の流れ
  • 詩歌・音楽
  • 学問
    を司る“聖なる河の女神”。

「水の流れ=言葉・音の流れ」に通じるとされる。
中国 → 日本への伝来
中国で「弁才天(辯才天)」=「言語の才に長けた天女」と訳され、
日本に入ると
日本での三大変容

1)水神としての弁才天
・湖・川・井戸・湧水
・島(“弁天島”が多数)
・港湾の入口
→ 水辺に必ずといって良いほど祀られる

2)芸能・学問・音楽の神
琵琶を持つ姿で広まり「弁天様」として人気。

3)財運神・福神
七福神の一柱となり、財運の象徴に発展。
神仏習合の特徴

  • 市杵嶋姫命(宗像三女神)と同一視される
  • 宇賀神(蛇体の神)と融合
  • 水辺の弁天社・弁天堂が全国に広がる
  • 「弁天島」「弁天池」が地名として残る

川・湖・海の水神として、現代でも最も広く信仰される水神のひとつ。

 

2. 水天(すいてん / Varuṇa系天部)

仏教の十二天の一つで、水の支配者。
雨・川・海・湖を統べ、龍族を支配する“水界の王者”。

起源
インドのヴァルナ神(Varuṇa)に由来する天部。
ヴァルナは

  • 天空
  • 誓い・真理
    を司る大天神で、龍族とも関係が深い。

日本仏教での性質

  • 雨乞いの中心
  • 水害鎮護
  • 井戸・泉・水路の守護
  • 龍族を従える強力な水天
  • 祈雨のための祭祀(雨乞い法)で祀られた

寺院では「十二天図」に必ず描かれ、日本でも水界の支配者として認識される。

 

3. 水釈天(すいしゃくてん)

帝釈天(インドラ)の“水の側面”が独立したとされる日本特有の水神。
寺院・村落の水神として広く祀られた。

正体・起源
水釈天は

  • 帝釈天の使い
  • 水天と同一視される
  • あるいは水の働きを持つ別の天部
    など複数説がある、日本特有の神仏習合神。

日本での性質

  • 水を司る守護神
  • 水害・水難除けの神
  • 弁才天・宇賀神・蛇神と習合
  • 井戸神・溝の神として祀られることも

「水」と結びつけば、弁天・宇賀神・龍王が一体化しやすく、
水釈天もその融合の中に位置づけられる。

 

4. 七面天女(しちめんてんにょ / 七面大明神)

日蓮宗で最も強力な水神・龍神の一柱。
“紅龍の姿”となって現れた女龍神。

伝承
身延山で日蓮が説法している時、
一人の美しい女性が現れ、
水を一滴受けると紅龍に変じ、
「七面山を守護する七面大明神」と名乗った。

本地仏
徳叉迦龍王の娘とされる(仏典系伝承)。

性質

  • 水の守り神
  • 雨・水脈・山の水源を統べる
  • 人々に安心と福徳を授ける
  • 龍神としての強力な働き

神仏習合の水龍神として代表的。

 

5. 善女龍王(ぜんにょりゅうおう / 善如龍王)

娑伽羅龍王の娘(龍女)として仏典に登場し、
日本で“雨乞いの霊験最強クラス”の水龍神として信仰された女性龍神。

重要伝承
1771年(明和8年)の干ばつの際、
高野山の僧・慈光が蓮池に祀ったところ、
すぐに雨が降ったと記録される。
高野山・善女龍王社として現在も信仰。

性質

  • 雨乞いの主神
  • 清浄・慈悲の女性龍
  • 水の恵みをもたらす

七面天女と並ぶ、女性水神の重要な存在。

 

6. 宇賀神(うがじん)—弁才天と習合する“蛇体の水神”

蛇の姿を持つ日本古来の穀神・水神。
弁才天と一体化して“宇賀弁財天”として祀られる。

性質

  • 井戸・泉・水路に宿る
  • 豊穣の象徴
  • 霊蛇(龍神と同族)
  • 弁才天の背後に結びつき、水神性を強化

川・泉の蛇神は日本で水神の代表であり、
宇賀神はその中心的存在。

 

7. 蛇王権現(じゃおうごんげん)

蛇=水の霊を神仏習合した強力な守護神。
水釈天・弁財天・宇賀神とも習合する。

性質

  • 蛇=水の象徴
  • 水難・水害の守護
  • 井戸・河川の神
  • 龍神の下位神格(眷属)として扱われることも

蛇神=水神という日本の基本構造により、
龍王・弁天・水天と自然に融合。

 

 神仏習合の水神体系

区分 主な役割・性質
インド起源の天部(仏教系の水神) 水天 水界の王、雨・川・海・湖
水釈天 帝釈天の水の側面、井戸神化
河神→芸能・財運神へ変化 弁才天 川の女神→水神→芸能神→福神
龍王の娘 善女龍王 雨乞いの女性龍、慈悲の水神
七面天女 紅龍に変じた龍神、身延山の守護
蛇神=水神 宇賀神 霊蛇、豊穣、水源神、弁才天と習合
蛇王権現 水難除け、井戸神、龍王の眷属

神仏習合水神の特徴

  1. 水辺に祀られる(泉・島・井戸・川・港)
  2. 龍神・蛇神との習合が非常に強い
  3. 祈雨・止雨・治水の神として信仰される
  4. 弁才天が水神・芸能神・福神の三位一体化を象徴
  5. 仏典系の龍王が日本の地域水神と結合

 

 

水神は“暮らしを守る神”として

日本の水神は、田畑を潤し、村を守り、暮らしを支えてきた“水の守り神”として、農耕民族である日本人の生活と深く結びついてきました。

水源地に祀られる水分神、田の神としての水神、井戸や湧水を守る地域水神、そして龍・蛇・河童に象徴される“水の霊”。

これらはすべて、自然を畏れながら共存するという日本人の知恵そのものです。

現代においても、気候変動・水害・環境保全など水をめぐる課題は増えています。
だからこそ、水神信仰の背景を知ることは、水との向き合い方を学ぶ大切なヒントになります。

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