心霊ちょっといい話『滝の神様』など短編全5話

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心霊ちょっといい話『滝の神様』など短編全5話 不思議な話
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首筋のアザ

 

今から約10年位前の話。
当時、オレには仲が良い女の友達が居たんだ。
今だから言えるけどやっぱかわいかったよ、モテてたしね。
なんか気が合うらしくて良く一緒に遊んだりしたよ、自分の気持ちを隠しながら・・

そんなある日、ソイツが手術する為に遠くに行く事になったんだ。
詳しくは教えてくれなかったが先天性の持病を持ってたらしい。
でも、ソイツはオレには弱いトコロをなぜか見せないようにしてたなあ、なんでだろ?
オレもそういうのを知っていながらは優しい言葉を何1つかけれなかったんだよ・・・
手術するって知った日、オレは励ますところか逆にふざけてソイツに言ったんだよ。

「もし、手術中に幽体離脱でもしたらオレの所にでも来なよ。首筋でもなぞってくれればオマエだってわかるからさ。」

そしたらソイツ「絶対行くから」と答えたんだよ、オレはできるわけないって笑ってたらスゴイ真剣な顔でオレを見つめていたのを覚えてる。

手術する日を教えてもらってソイツは数日後、療養先に行っちゃったよ。
見送りすらできないキチンなオレだった。

そして、ソイツの手術当日の夜、不安でしばらく寝れなかった。
「もし居なくなったら・・・?」とか考える事は縁起悪いことばかり・・・
でも人間ってやっぱり寝ちゃうもんなんだな・・・いつの間にか寝てました。

うつ伏せで寝てて、時間の経過は良くわかんないけど何か棒みたいな物がオレの首筋を触るんだ、触られる度に「ザワザワ」って鳥肌が立つ感じがしてさ。
結構金縛りとかかかるんだけど、その時は押さえつけられる感覚はなかった気がする。
それに金縛り特有の「怖さ」がなかった。

オレはうつ伏せから仰向けに寝返ってみると、黒いワンピースを着たソイツが目の前で宙に浮かんでたんだよ。

不思議に怖くはなかった。「あ、夢かな?」と考える余裕すらあった。
ソイツ、すごい哀しい顔でオレの事を見てた。
その時、今まで押し殺してたモノや耐えてきたモノが一瞬のうちに壊れてしまった気がして、思わず左腕を伸ばして宙に浮くソイツの首根っこを?み、自分の肩に引き寄せた。

そして「早く帰って来いよ」って言ってキスをしたんだよ。
自分でも信じられない程の行動力&度胸だった気がする・・
ソイツ笑顔で頷き、そこで目が覚めた。

「なんだ・・・夢か・・・。」なんか不思議な夢だなぁと思った。

その時迄は本当に夢だと思った。

そして、しばらく経ってから友達からソイツの手術は成功してもうすぐ退院して
こっちに帰ってくると連絡があった。
「もしかしたら1番にオレに知らせてくれるんじゃ?」と期待してたが
「やっぱ、あれは夢だったんだなぁ」とガッカリした覚えがある。

もうしばらくしてソイツが退院してこっちに帰ってきた。
驚いた事に、ソイツは帰ってきて最初に電話したのはオレだった。

「退院おめでとう。」など素っ気ない事ばかり言ってるオレ・・
話を盛り上げようとして
「オマエが手術した日にオレさぁ、オマエが出てくる夢見ちゃったよ。」
とふざけて言ってたら、ソイツが

「ちゃんと行ったよ。私覚えてるもん。」と平然に答えた。

それどころかその日、オレの寝てた時の服装や自分の格好などすべて完璧に言い当てた。

そして「ちょっと見て欲しいものがあるんだけど、今すぐ来てくれない?」

大体予想はついていた。急いでソイツの家にバイクで向かった。

オレのバイクの音を聞いてソイツが家から出てきた。

「復活!!」とはしゃぐソイツを見て、いつも通り気持ちを押し殺してる自分がが情けなかった。

「見て欲しいモノがあるんだ・・・」ソイツはおもむろに髪をかき上げて右の首筋から後ろにかけての所をオレに見せた。
そこには青あざって程ではないが4本の横線状のあざが上から順に並んでいた。
「手を・・・合わせてみて」
「わかった・・・。」オレはソイツを向かい合わせて夢と同じように左手を差し出し左手の指をあざに合わせてみた・・・・ピッタリだった。
指の長さも太さもまったくっていいほど同じだった。
「本当だったんだ・・・あの夢」
絶句してるオレにソイツは「このあざなんで出来たか先生もわかんないってさ。でも私ね、手術終わった後に1回危ない時があったんだっって。でもその時何故かすぐに落ち着いたんだって・・・もしかしたらその時に会ってたかもね?」
「このあざ、しばらく消えて欲しくないよ」
ソイツ表情は夢の時に見たあの哀しい表情と同じだった。

あれから10年経った今、オレは結局ソイツに告白できずに終わった。
そしてソイツも、周りに居たヤツラもそれぞれ疎遠になったり音信不通になっていった。

でも、今でも考える時があるんだよ「あれはなんだったんだろう?」って
そして、その時の気持ちやソイツの笑顔とかが鮮明におもいだすんだ。
オレは今、人生を共に歩んでくれる大切な人が出来ました。
だからもう、思い出さないようにするだろう、だから最後に書き込んでみたかった。

 

 

線香の煙

 

あれは俺が14歳のときだった。受験勉強もせずだらだら毎日過ごしていた。
そして、受験の日が来て、受かるはずもない高校を受けた。
その数日後、いきなり熱が出た。
3~4日ぐらい続いたと思う。
親は「インフルエンザかなんかだろうから、とりあえず薬飲んで寝てろ」と言うんで、素直に従っていた。
そして熱が出て2日目。ちょうど俺の15歳の誕生日。
その日に爺ちゃんが死んだ。
俺は熱のある体を無理やり起こして病院に行った。まだ誰も到着していなく、
俺と親父と看護士だけだった。
親父は病院について爺ちゃんの顔を見るなり、泣き出してしまった。
でも、俺は不思議と涙は出なかった。そりゃあそうだ。
物心ついたときからもう爺ちゃんはボケていた。あまり良い思い出がない。
とりあえず、俺は家に帰ることにした。

次の日、何故か熱は下がり、すこぶる健康に。

葬式が終わり、親戚の家に行った。
小さな祭壇みたいなところに遺骨を置いて、親父が「爺ちゃんと話しとけ」って言うんで、
とりあえず遺骨の前に座った。
何を話していいのかわからず、適当に「元気?」などと心の中で思ってみた。
なんで元気?なんだろうな。もう死んでるのに。
そうすると、線香の煙が流れていた方向と逆の方向に行きだした。
もちろん風など吹いてないし、そういう感じもしなかった。
不思議に思って今度は「向こうは楽しい?」と思ってみた。
また違う方向に線香の煙が向かっていく。これは中3の俺にはとてつもなく不思議だった。
そのときは両親にこのことは話さなかった。

そして見事に受験に失敗。浪人して前回受けた高校を受験して、合格した。
合格してしばらくして両親に線香の煙のことを話した。
あまりリアクションがなくてつまらなかったが、ひとつ話が聞けた。
昔、俺がまだ2~3才の時かな。その時爺ちゃんは俺を猛烈に可愛がってくれていたらしく、
「ほかの孫には何も買ってきたことはないのに、お前にだけはお土産を買ってきたなあ。」
と、爺ちゃんの可愛がりぶりを話してくれた。
思えば熱が出たのも、誕生日に逝ってしまったのも、何か関係があるんじゃないか。
俺はそれほど思っていたなかったけど、爺ちゃんは俺のことをものすごく想ってくれていたんじゃないか。
そう思ったときは涙が出そうだった。

 

 

強気な姉

 

去年の話なんだが、
5歳の娘が急に高熱を出し、慌てて近くの病院へ連れて行った。
そして風邪と診断され、処方された薬を3日間飲ませていたが、症状は一向に良くならず。
「ひょっとして医者の誤診では?何か別の重い病気かも…」
と思い、大学病院まで行ったけど特に悪い所も見付からない。なのに下がらない娘の熱。
どうしたものか…と妻と一緒に頭を悩ませていた。
そして5日目の朝、妻が言いにくそうに俺にこう言った。

『アンタには言ずらかってんけど、○○がな、怖がってんねん…』
「何を?」
『部屋に怖いオバちゃんがおるって…ベットの横に立ってて怖いって。』
「はぁ?何ソレ?」

俺は昔からあまり霊現象とか信じない性質だったので、妻は黙ってたみたいだが、俺が仕事に行ってる間、娘の看病をしていた妻は、娘から何度かそう言われて困っていたらしい。
しかしその朝は、【熱のせいで見える幻覚の類】だと思い
妻にもそう言って、俺は仕事に行った。

でもやっぱりソレが何となく気になって仕事がはかどらず、そして5日も苦しんでいる娘を救ってやりたくて、俺は顔見知りの、自称霊能者に連絡を取った。
奴はその日の夜に来てくれて、娘の部屋を見るなり
「やっかいな霊の気配がする。」
と言い出し、やれ盛塩だ、やれ読経だと言い残し帰っていった。
そしてそれから2日。
俺は半信半疑ながらも妻と一緒に言われた事を全てやっていたが効果は見られず。娘の熱は下がらないまま、遂に精密検査を兼ねた入院措置を取る事となった。

しかし悪い所は見付からない。
そして病院に来ても、娘は「怖いオバちゃんがいる」と言い続け、俺も妻も精神的に参っていた。
病室で情けなくも頭を抱えながら「誰か何とかしてくれ…」と心の中で泣きそうになりながら叫ぶ。
このまま娘は死んでしまうのかと不安でいっぱいだった。

しかしその2日後、嘘のように娘の熱が下がった。
そして娘は言った。
「昨日、太いお姉ちゃんが来て、オバちゃん連れて行った。」
俺と妻は「?」になりながらも娘の話をよく聴くと、何でも昨日の夕方頃、急に太った女が病室に現れ、横にいた怖いオバサンにボソボソ呟くと、半ば強引に連れて行ったらしい。
そしてすぐにもう一度現れて、『もう大丈夫やで。辛かったな。』
と娘の頬を撫で、病室を出て行った…という事だった。
それを聴いて妻は「どなたか分かりませんが、ありがとう」
と呟き、手を合わせ涙を流していた。

…俺にはその太った女に心当たりがあった。
それは10年前、俺が19の時、23歳にして交通事故で亡くなった姉。
太った女と聞いて、もしかしたらと思い、娘に姉の特徴を言ってみた所、おおよその所、姉に間違いなし。
物凄く気が強かった人だったため、『半ば強引に連れて行った』というのもなんだか分かる気がした。
俺はその後すぐに姉の眠る墓へ行き、姉に礼を言い、そして霊の存在を信じるようになった。

「死ね!」が口グセの姉、知らない男と殴り合いの喧嘩をする姉、老人と動物以外には容赦ない姉、そして子供が死ぬほど嫌いな姉…
そんな恐ろしい姉でも姪は可愛かったんだな…
姉ちゃん、マジでありがとう。

娘を苦しめていた原因(?)のオバサンは、その後…姉にどうされたんだろうか…(((;゚Д゚)))

 

 

滝の神様

 

俺は田舎出身で、小学校時代は近くの山の沢の滝で遊ぶのが日課だった。
その滝は25メートル四方ぐらいの滝壺に注ぎ込んでいて、そこには「お滝」という大ヤマメがいると言われていた。
お定まりの滝に住む大動物は神様の使いとか言う…。
俺が高校に上がったころ、渓流釣りにはまり、「お滝を釣り上げよう」と考えて、いざその滝に行った。
ところが待てど暮らせどかからない。いるのかいないのかも不安になってきた。
帰ろうとした矢先、目の前で一瞬水面が弓なりに持ち上がり、でかい鯉かとも思うようなヤマメが飛び跳ねた。1メートルはあったかと思う。

月日は流れ、俺が社会人になったとき、滝の上流にゴルフ場が出来ると聞いた。
俺が滝に駆けつけた時にはすでに遅く、沢の水は重機にかき回されて茶色く濁っていた。
あちこちに藻が発生し、滝自体がドブのような臭いになっていた。
そして滝壺のほとりには巨大な魚の死骸が…。
俺は泣いた。腐って死臭を放つ頭を抱いておいおい泣いた。
高校生の腕には余る相手だったけども、いつか俺が釣ってやると決めていたのに。
滝の神様ならこんな風に腐臭を漂わせながら死んで欲しくなかった。
俺は亡骸を引き上げて、滝の近くに埋めた。水の生き物を陸に葬るのはどうかとも思ったが、そうしなければいけない気がしていた。

その晩夢を見た。
老人ホームの前で、頑固そうな白髪白ひげのおじいさんが倒れているのに誰も助けないとか言う、そんな夢。
俺は「フラワーエッセンス」というのにもはまっていたので、「レスキューレメディ」というのをおじいさんに飲ませたところ、
「とりあえず楽になった。有り難う」
そしてしゃんと立ち上がり、「お前、俺と勝負するか?どのくらい強くなったか試してやろう」
…というところで目が覚めた。
俺は翌日さっそく滝に行ってみた。臭いがかなりきつかったので、動物に掘り返されでもしたら大変だから、念のため。
ところが俺がお滝を葬った場所には、昨日と違って何の臭いもなかった。
その代わり、不思議なことにフラワーエッセンスの箱の中の甘い匂いがした。
フラワーエッセンスは保存料としてブランデーやコニャックを使うので、スポイトのゴムを通して箱の中が甘いいい匂いに満たされるんだけど、そのいい匂いが強く薫っていた。

気にしすぎなのかもしれないけど、夢のおじいさんはお滝だったのかなと思う。

 

 

出会い

 

昔。まだ前の会社に勤めていたころ。自転車で通っていた。

ある日のこと。普通は20時近くまで仕事が押すのに、その日は何故か17時で帰れた。
1年に3回も無い。そんなものだった。
「珍しいこともあるなぁ」と、まだ日の高い帰り道を行く。

ふと。いつもは通らない道が気になった。
「今日はこっちから帰ってみるか。遠回りだけど」と、自転車を走らせた。
しばらく走ったところで、何かが気になった。
何かは分からない。だけど気になった。
自転車を止めて周りを見回すが、別段へんなところは無い。公園のわき道。

「?」 と思い。しかし自転車を走らせようとした。が… やはり気になる。
再び見渡していると、公園の垣根が気になった。
自転車を降りて近づく。

すると… 「ギィ ギィィ」と音がする。小さい音だ。本当に小さい。
…いや鳴き声?

垣根を回り込むとそこに生まれてまもなく、毛も生えそろってない子猫がいた。

今思えば、これはすべて必然だったのかもしれない。呼ばれたのかもしれない。
だけど、そのときはその全ての「珍しい出来事」を不思議に思った。

その子猫は8年たった今も家にいる。

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