1867年、北フィンランドで全く形を変えない奇妙なオーロラが観測された。
何かの文字の様でもあったが、人々には読むことができなかったので、絵に描いて記録しておいた。
それを読んだのは、およそ100年後にその地を訪れた日本人観光客。
そこには平仮名で、「ありがとう さよ」と書かれていた。
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空を見上げれば蜘蛛の巣のように電線が広がっているのが当たり前の風景になった昨今。
しかしこの電線の実に2割以上は、中空のゴム皮膜だけが張り巡らされた『ダミー』なのだと言う。
何故わざわざそんな物を張り巡らせるのか知る者はいないが、偽者を用意する理由などそう多くはない。
「本物の電線に被害が及ばないようにする囮」か「獲物をおびき寄せる疑似餌」 ――しかし、何を相手に?
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ある所に「自分は鏡の世界の住人だった」という男がいた。
その男が言うには世界の何処かに一つ、自分だけが映らない鏡があり、そこから鏡の向こう側に行けるという。
どうして普通の鏡では向こう側にいけないのかと聞くと、
「鏡の向こう側の『自分』がこっちに来ないように押さえ付けているから」と答えた。
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汗や涙、歌声や怒りなど有形無形に関わらず、身体から「何かを出す」ことはカタルシスとエクスタシーを伴うものだ。
その最たるものが魂が身体を抜け出す瞬間だという。
全ての輪廻転生の記憶を持つという男によると、その瞬間はどんな生命体であっても、殺された時であっても、極上の快感だそうだ。
その快感に囚われた者が輪廻転生を繰り返すのか。
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1968年、千葉県のある公園でゴミ袋に入った女性のバラバラ死体が発見された。
注目を浴びるなか警察は捜査を開始したが、死体に不審な点が多すぎたため迷宮入りとなる。
両腕は見付からず、そのかわりに被害者の女性のものらしい脚が4本あったという。
また同一人物の脚であるにも関わらず、推定された年齢は20代から60代までばらばらだった。
中世のフランスに「鋼屑を純金に変える」という触込みで、多くの貴族から出資金を集めていた
錬金術師がいた。ある日突然連絡が途絶えたので、債権貴族達は彼の工房に乗り込んだ。
そこで見つかったのは、純金で出来た、満足そうに微笑む錬金術師の彫像だけだったという。
像は債権の代わりに鋳潰されたが、当の錬金術師の行方は不明のままである。
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ドイツがナチスの支配下にあった時に、一人の男が現れた。
魔術師を名乗るその男は、隠れ住んでいるユダヤ人達の元に現れ、安全に国外へ逃れる方法を教えて回る。
魔術師は当然のようにナチスに逮捕され、度重なる拷問を受けるが、遂にナチス崩壊の時まで死ぬ事はなかった。
それより奇妙なのは、彼が助けたユダヤ人の多くがナチス崩壊までに怪死を遂げている事だろう。
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ある所で発見された「神のノート」というものがある。
それには種族が絶滅する理由や時期が過去から未来に渡って綿密に書き込まれてある。
研究者が調べたところ、書かれた時代~現代にかけて絶滅したというものは全て合致していたという。
人類も何時かは絶滅するであろうが、書かれていた理由と時期については研究者達は固くなに口を閉ざしている。
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カンザス州のヒュージャック図書館には、不思議な本があると言われている。
その本を読むと人生が劇的に変わるらしいのだが、題名や装飾・どんな事が書かれているのか一切分かっていない。
とにかく「そんな本がある」という噂だけがあり、時折わざわざ遠くから物好きが探しにくるそうで、ちょっとした町の観光地になっている。
客寄せに広めた噂かもしれないが、不思議と昔から寄付や寄贈が耐えない図書館であることは事実である。
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数年前、島根県の浜田市にある浜辺に大きな鮫の死体が打ち上げられた。連絡を受け、駆けつけた警官が見たところ、
どうも腹の中に何か詰まっている感じである。「人間ではないか」と野次馬が騒ぐので、警官は近所から包丁を借りて腹を開いてみる事にした。
すると中からこぼれ出てきたのは、大量の石ころであった。それが胃にぎっしりと入っていたらしい。
材質的には普通の石なのだが、すべて一辺が2センチほどの立方体だったという。
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