【水の神格】日本の龍 一覧 29種類|神話・仏教・民間信仰に息づく龍神・水神

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【水の神格】日本の龍 一覧 29種類|神話・仏教・民間信仰に息づく龍神・水神 神・仏
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3. 仏教・神仏習合が生み出した龍神・水天

 

倶利伽羅龍(くりからりゅう)

「剣に巻き付き、炎を背負う護法の龍」

  • 剣に巻き付いた龍が炎を噴き上げる姿で表される、きわめて象徴的な龍神像。
  • 不動明王の象徴として知られ、燃えさかる龍炎で煩悩や障害を焼き尽くす護法の存在とされる。
  • 心の迷い・執着を断ち切る「炎の龍」として、信仰や美術の中で大きな役割を担ってきた。

 

水天(すいてん/Varuṇa系天部)

「雨・川・海・湖を統べ、龍族をも従える“水界の王者”」

  • 仏教における十二天の一柱で、水全般を支配する天部の神格。
  • 起源はインドのヴァルナ神(Varuṇa)にさかのぼり、海・水・天空・誓い・真理を司る大天神として龍族とも深い関わりを持つ。
  • 日本の仏教では、雨乞い・水害鎮護・井戸や泉・水路の守護神として祀られ、龍族を従える強力な水天として信仰されている。
  • 寺院の「十二天図」に描かれることも多く、視覚的にも水界の支配者として表現される。

 

八大龍王(はちだいりゅうおう)

「仏典に登場する八柱の龍神で、雨を呼び、法を護る水界の守護者」

  • 『法華経』などに登場する八柱の龍神で、釈尊の説法に参じ、仏法を守護する役割を担う。
  • 人間界に雨をもたらし、水害を鎮める水の守護神としても位置づけられる。
  • 日本では、祈雨・止雨・水害防除・水資源の安定を祈る祭祀の対象としても信仰されてきた。

 

八大竜王 一覧表

名称 意味 日本での性質
難陀 歓喜 雨・水難除けの龍神
跋難陀 亜歓喜 釈迦誕生の雨を降らせた慈悲の龍
娑伽羅 大海 海の王・龍宮の主
和修吉 九頭龍信仰の源、山の龍神
徳叉迦 多舌 災厄を制する強力な龍、七面天女の父
阿那婆達多 清涼 湖・湧水の守護、清らかな水の象徴
摩那斯 大身 海を押し返すほどの大力の龍王
優鉢羅 青蓮華 美と清浄の水龍、青蓮華の池の主

 

1. 難陀(なんだ / Nanda)

意味:歓喜。
兄弟の跋難陀とともに名高い龍族の王で、古来より仏法の守護者として語られる。

仏典での役割

『不空羂索神変真言経』第十六章「広博摩尼香王品」に登場する。

特徴

  • 跋難陀と兄弟関係にある
  • 娑伽羅龍王と争った過去が伝えられる
  • 雨をもたらし、人界を潤す役目を持つ
  • 仏法を中心で守護する重要な龍王

日本での信仰

主に祈雨・大雨鎮護の神として崇められる。

 

2. 跋難陀(ばつなんだ / Upananda)

意味:亜歓喜(小さな歓喜)。
難陀の弟として多くの経典に登場する。

経典での働き

  • マガダ国を守護し飢饉を免れさせた
  • 釈迦誕生時に雨を降らし、清めの雨を施した
  • 釈尊の説法の場に常に出席
  • 仏滅後も仏法を守り続けると誓う

日本での性質

慈悲深い龍とされ、祈雨・水害防除に信仰が集まる。

 

3. 娑伽羅(しゃがら / Sāgara)

意味:大海。
海界を統べる代表的な龍王で、龍宮の王として広く知られる。

特徴

  • 海を支配する最強格の龍王
  • 娘は有名な「八歳の龍女(善女龍王)」
  • 龍女は法華経・提婆達多品で成仏する重要人物
  • 清瀧権現の信仰ともつながる

日本での展開

娑伽羅龍王の娘は
善女龍王=清瀧権現として神道と習合し、各地で祀られる。

 

4. 和修吉(わしゅきつ / Vāsuki)

意味:宝。
インド神話由来の龍で、後に日本の九頭龍信仰の原型となる。

特徴

  • 「九頭龍王」「九頭龍大神」の源流
  • 須弥山の守護者として有名
  • 小龍(細い龍)を捕らえる強い龍王
  • かつては“千頭の龍”ともされた多頭龍の元型

日本への影響

箱根九頭龍神社ほか、
日本の九頭龍神信仰の根本となる存在

 

5. 徳叉迦(とくしゃか / Takṣaka)

意味:多舌・視毒。
その視線だけで命を奪うと伝えられるほどの強大な龍王。

由来

インド叙事詩『マハーバーラタ』では蛇王として著名。

日本での展開

  • 七面天女は徳叉迦の娘とされる(身延山伝承)
  • 日蓮宗を中心とした龍神信仰に影響を与える

特徴

  • 災厄をもたらす力と守護の力を併せ持つ
  • 水難・災害にまつわる恐れと畏敬の対象となる

 

6. 阿那婆達多(あなばだった / Anavatapta)

意味:清涼・無熱悩。
“阿耨達池(無熱悩池)”と呼ばれる神秘の湖に棲む龍王。

阿耨達池とは

ヒマラヤ北方にあるとされる巨大な聖なる湖。

  • 四大河(ガンジス・インダスなど)の源流
  • 湖岸は金銀など四宝でできているという
  • 大きさ800里(約300km)と伝えられる

特徴

  • 阿耨達龍王は“菩薩の化身”ともいわれる
  • 水の恵みと清浄を象徴する存在
  • 苦悩を癒す清らかな水源の守護神

日本では、
清浄な水の象徴として信仰された。

 

7. 摩那斯(まなし / Manasvin)

意味:大身・大力。
海の勢いを押し返したという、圧倒的な力を持つ龍王。

神話

阿修羅が海水で“喜見城”を浸そうとした際、
摩那斯が身をくねらせて海を押し戻したと伝えられる。

性質

  • 大きな災いを沈める龍
  • 洪水・高潮など大規模な水害に関わる
  • 海洋の猛威に立ち向かう力の象徴

日本では大力を持つ龍神として恐れ敬われる。

 

8. 優鉢羅(うはつら / Utpalaka)

意味:青蓮華(ウツパラ)。
青睡蓮が咲き誇る池を守護する、美と清浄の龍王。

仏教的象徴

青蓮華は

  • 仏の澄んだ眼(紺青)
  • 清浄性
  • 美・芳香
    などを表す聖なる花。

特徴

  • 青蓮華の池を守る水龍
  • 清らかさと神聖さを司る
  • 光や香気をまとう美の象徴的存在

中国では“青蓮宇=寺院”の象徴ともされるほど、
霊性の高い龍王として扱われている。

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