- 伝説・神話系の幽霊船
- フライング・ダッチマン(The Flying Dutchman)
- パラティン号 – パラティン・ライト(Palatine Light)
- レディ・ラヴィボンド号(Lady Lovibond)
- カルーチェ号(Caleuche)
- 志自岐(しじき)
- シャス=ギャルリー(Chasse-galerie)
- バイ・デ・シャルールの火の船(The Fireship of Baie des Chaleurs)
- ノーサンバーランド海峡の幽霊船(Ghost Ship of Northumberland Strait)
- プリンセス・オーガスタ号(Princess Augusta / Palatine Light)
- ヤング・ティーザー号(Young Teazer)
伝説・神話系の幽霊船
世界各地の海には、いまも夜ごとに漂うという“亡霊の船”の伝説が息づいている。
嵐の海に消えた船、愛と嫉妬に沈んだ船、死者を乗せて冥界を行き来する船……。
時を越えて語り継がれるそれらの物語は、恐怖であり、同時に人間の罪や祈りの象徴でもある。
出典:Wikipedia
フライング・ダッチマン(The Flying Dutchman)
起源・地域: オランダ/17世紀頃
概要:
嵐の中で神に逆らった船長ヴァン・デル・デッケンが乗る呪われた船。 「嵐が何度来ようとも我が航路を止めはせぬ」と叫んだ瞬間、天罰が下り、彼と乗組員は永遠に海をさまよう存在となった。 嵐の夜、稲光の中に巨大な帆船が現れると、それが「フライング・ダッチマン」だという。 その船を見た者は、次に自分が遭難すると恐れられた。 この伝説はヨーロッパ各地に広まり、ワーグナーのオペラ『さまよえるオランダ人』や数多の絵画・文学に描かれ、今もなお“海の呪い”の代名詞として知られている。 出典:Encyclopædia Britannica/Dutch Maritime Folklore
パラティン号 – パラティン・ライト(Palatine Light)
起源・地域: アメリカ・ロードアイランド
概要:
18世紀、冬の大嵐に巻き込まれ沈没した移民船「パラティン号」。 しかし、それからというもの、ブロック島沖では夜になると燃え上がるように光る船影が現れるようになった。 それが“パラティン・ライト”と呼ばれる幽霊船である。 燃え盛る光は、助けを求める亡霊たちの悲鳴だとも、積荷に火を放った乗組員の罪の炎だとも言われる。 この不思議な光は19世紀の新聞記事にも記録があり、今でも嵐の夜に現れるという報告が後を絶たない。
レディ・ラヴィボンド号(Lady Lovibond)
起源・地域: イギリス・ケント沖(グッドウィン・サンズ)
概要:
1748年、結婚を祝う航海の最中、船長の恋人と親友の間に嫉妬が生まれた。 狂気に駆られた航海士は舵を奪い、船を暗礁へと導く——その瞬間、ラヴィボンド号は海に沈んだ。 以来、50年ごとに同じ日、同じ海域で、淡い光をまとった帆船が現れるという。 潮風に混じって響くのは、花嫁の笑い声か、それとも呪いの囁きか。 多くの船乗りが実際にその幻影を目撃したと証言している。
カルーチェ号(Caleuche)
起源・地域: チリ・チロエ島の伝説
概要:
南米のチロエ島に伝わる、夜の海を光に包まれて進む妖精の船。 カルーチェ号は、美しい音楽と笑い声を響かせながら、霧の海を滑るように航行する。 その船には、生前悪事を働いた者の魂や、海で亡くなった者の霊が乗っているといわれる。 時には、海の精霊「ブルジョス」たちがその上で踊っている姿を見たという証言も残る。 彼らはカルーチェに乗り、夜ごと冥界と現世を行き来するのだ。 見る者にとっては祝福か、あるいは死の誘いか——判断はつかない。
志自岐(しじき)
起源・地域: 日本・種子島周辺(1919年)
概要:
大正8年、重油を積んだ大型輸送船「志自岐丸」は、激しい嵐に襲われ、種子島沖で消息を絶った。 しかし、それからというもの、漁師たちは夜の海で、ゆらゆらと光を放ちながら進む巨大な船影を何度も目撃したという。 近づこうとすると、霧のように姿を消す。 「志自岐の亡霊船だ」と恐れられ、漁に出る者は手を合わせて航海の無事を祈った。 科学的には海上蜃気楼や燐光現象と説明されるが、島の人々は今も「志自岐が通る夜は海を見てはいけない」と語り継いでいる。
シャス=ギャルリー(Chasse-galerie)
地域: カナダ・ケベック州
概要:
ケベック地方に伝わる「空飛ぶ呪われたカヌー」の物語。
新年の夜、遠く離れた恋人たちに会うため、男たちは悪魔と契約を結ぶ。
空を翔ける黒いカヌーに乗り、凍てつく夜空を疾走する彼ら——。
だが、契約の掟を破った者は、そのまま地獄へと引きずり込まれるという。
この物語はフランス系カナダ文学にもたびたび登場し、“自由への渇望と罪の代償”の象徴として語り継がれている。
バイ・デ・シャルールの火の船(The Fireship of Baie des Chaleurs)
地域: カナダ・ニューブランズウィック州
概要:
穏やかな湾の夜空を焦がすように、燃える三本マストの船が現れる。
それが「バイ・デ・シャルールの火の船」と呼ばれる怪光現象だ。
多くの住民がこの炎を目撃し、漁師たちは「不幸の前触れ」として恐れた。
科学的には“鬼火”や“プラズマ現象”とされるが、目撃者たちは今も「これは死者の船だ」と囁く。
炎に包まれたその姿は、罪深き者たちの魂が夜空を彷徨うかのように揺らめく。
ノーサンバーランド海峡の幽霊船(Ghost Ship of Northumberland Strait)
地域: カナダ・プリンスエドワード島〜ニューブランズウィック間
概要:
18世紀以降、この海峡では炎に包まれた帆船の幻影が幾度も目撃されている。
白い霧の向こうに赤く輝く帆、そして音もなく燃え尽きる船体。
嵐や海難事故の前に姿を見せることから、“災厄の前触れ”として恐れられた。
地元では「赤い火の船(The Red Fiery Ship)」とも呼ばれ、カナダ政府の観光案内にも“歴史的伝承”として公式に記載されている。
プリンセス・オーガスタ号(Princess Augusta / Palatine Light)
年代: 1738年/アメリカ・ロードアイランド沖
概要:
18世紀、ドイツ移民を乗せた船「プリンセス・オーガスタ号」は嵐に遭い、ロードアイランド沖で難破した。
多くの人が凍死し、漂着した遺体を弔った地元民の間では、以後、夜空に炎の光が現れるようになったという。
それが「パラティン・ライト」と呼ばれる幻の光。
この出来事はアメリカの詩人ジョン・グリーンリーフ・ホイッティアの詩にも描かれ、悲劇と救済の象徴として今も語られている。
ヤング・ティーザー号(Young Teazer)
年代: 1813年/カナダ・ノバスコシア州
概要:
米英戦争の最中、追跡を受けたアメリカの私掠船「ヤング・ティーザー号」は、火薬庫が爆発し炎に包まれた。
船員の魂はそのまま海に散ったといわれる。
それ以来、同じ海域に“燃える帆船”が出現し、「ティーザーの光(Teazer Light)」として恐れられてきた。
地元の海難記録にもこの船の存在が記されており、史実と伝説の境界は今も曖昧なままだ。

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