【時空の歪み】『分岐点』長編 – 異次元に行った不思議な体験

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【時空の歪み】『分岐点』長編 - 異次元に行った不思議な体験 不思議な話
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分岐点

 

数年前の事だけど不思議な体験をした。
祖母の家に帰省した時の事だ。暇潰しを兼ねて先祖の墓参りに行ったんだ。
大昔(江戸時代)に死んだ先祖にお線香を灯しながら、自分とどんな繋がりの人か
墓石に彫られてる生涯の足跡の様なのを見てあれこれ空想したりした。
そうこうする内に段々と飽きてきてしまった。

そうだ、少し歩いた処に廃寺があった。戦前までは住職さんが住んでたんだ。
急に興味が湧いたので訪れたいと思った。しばらくするとお寺が見えた。
父が言ってたけど本当に小さいお寺だった。こんなド田舎にお坊さんが昔は
居たんだ。成る程、村は人口が少なかったから生活が大変だったろうなと思った。
お葬式位しか稼ぎがないから、祖母や親戚が畑で穫れた野菜や米をお裾分け
したり寄進してたそうだ。そのお礼に我が家は良い戒名を授かってたらしい。
戦後は過疎化が進んだ祖母の住む村では収入が無く(お葬式が殆ど無い)、
生活出来ないので隣町(“町”なので人口が多いし、需要と供給も有る)に移ったそうだ。

それはともかく無人の小さな廃寺をもっと間近に見ようと足を踏み入れた。
近付くに連れ何だか寒気がしてきた。背中にぞわっとしたものが這い上がった。
落ち着け、只の廃寺じゃないか、荒れてるから寒気がするだけだと言い聞かせた。
そしてこぢんまりした寺の中を覗いた。何にも無かった。空っぽだった。

靴を脱ぎ上に上がろうとしたが、寒気が一層酷くなり、手や足にも鳥肌が
立ってしまった。行くなと体で感じた。諦めて廃寺の周りに目を遣った。
当たり前だがお墓が並んでる。言い忘れてたが我が家の墓はこの寺の敷地内には
無い。祖母の家の裏山に一族代々の墓が有る。そもそもお寺が村に出来たのは
江戸時代中期頃なのだ。我が家は確実に江戸時代初期からこの村に土着してた
ので遺体を引き続き裏山へ葬ったそうだ。村には寺が無いほど奥まった場所だったので
隣近所でお金を出し合って建設し、お坊さんを呼んで住んで貰っていたらしい

お墓を一通り眺めて改めて廃寺全体を見た。駄目だ、不気味だ。寒気がするし背中にぞわっとした
ものが這い上がる。これ以上此処に居てはいけない。帰ろう。
寺の敷地内を出た途端に鳥肌も収まったし、寒気も無くなった。
祖母の家の門の前まで来た時に、お口直しにもう一回ご先祖のお墓に手を合わせよう。

そこで浄化して貰おうと思い、裏山の墓に向かった。が、途中に今は誰も住んでない本家の屋敷を通ったときに、これ又中を見たいと感じた。本家の屋敷は無人だ。
全員都会や他県に出てしまい、今では7回忌等、数年事の法事の時しか帰省してないのだ。

ド田舎なので泥棒に入られる心配も無いので門は開けっ放しで鍵もかけないし
蔵も錠前が掛かってない。庭に入った。やっぱり本家の屋敷は広いと思った。
この村や隣の村でも此処まで大きい屋敷は無いと親戚が言ってた事を思い出した。
しかし、幾ら田舎で泥棒の心配は無いとはいえ屋敷の戸の鍵は掛かってる。
当たり前だ。庭には昔は池だった跡もある。

屋敷の縁側に腰掛けて庭全体と蔵を眺めた。屋敷は昔の作りだから縁側は窓の外
に有る。誰も住んでないので草が茫々に生えていた。蔵も覗いてみたくなった。
蔵も大きい。都会だと普通の一戸建ての大きさだ。中に入ったが、昔の百姓道具
が有るだけの物置状態だった。尤も大事な物は錠前の無い蔵では無く、
普通は屋敷の中に入れとくが(盗まれたら大変)。

 

気配を感じた。誰かに見られてる。後ろを振り返ったが誰も居ない。だけど妙な
チクチク感があった。一瞬廃寺を思い出したが、寒気は全く無い。温かい視線と
言う感じだ。サラサラと周りが温かい空気で包まれた。取り敢えず屋敷の縁側に
腰を掛け、深呼吸をし、気分を落ち着かせた。庭全体を見回した。
不思議だ。
誰かが居るんだけど、姿が見えない。気配がする。廃寺と違い、不安感は感じない。

周りがサワサワとざわめいてる。場に心地よい空気、気配が流れてる。
再度、強烈な視線を背後から感じた。縁側に座ってるから後ろは屋敷の窓だ。
恐かったが一旦深呼吸をして振り向いた。目を凝らし、窓の中を凝視する。
レースカーテンの向こう側を舐め回す様に見たが、何の変哲も無かった。
しかし屋敷の端から端まで窓沿いを覗いて確かめてみた。丁度玄関付近
まで来た時にボーッとゆらゆら蠢く、影のような、灰色がかったもの、
人間の形を綾取った何かが居たのである。それは私を見つめてた。
勿論 、それは影の固まりみたいなので、目は無い。しかしこちらを凝視してるのは
分かる、感じるのだ。何時から私を見てたんだろうか。固まりは段々と
色が透明になり、目の前で消えた。もしかして御先祖が私を見てたのだろうか。
改めて玄関付近を覗く。そこは昔は土間だった場所で、上手く工事をして
玄関擬きにした所だ。だから床はコンクリートでは無く、土で出来ている。

 

御先祖が無人の屋敷を探検に来たので、現れたのだと無理に言い聞かせた。
廃寺の時と違い、寒気や不吉感は全く無かったからである。今もこの庭は
心地よい雰囲気に包まれている。しかし、二度の強烈な視線はなんだったんだろう。
藏を覗いてた時と縁側に座った時だ。背中がぞくっとしたのである。
だが、嫌悪感は感じなかった。私は人間が恋しくなったので、祖母の家に戻る事にした。
既に、廃寺のお口直しで御先祖の墓前で手を合わせる考えは綺麗さっぱり忘れていた。
本当は墓に行く途中に本家の無人屋敷が目に留まったので、探検したに過ぎなかったのに。

それから何事もなく数日が過ぎた。私はすっかりこの間の事件を忘れていた。
農家は朝早くから畑に出るので、お昼過ぎから2~3時間はお昼寝タイムなのである。
皆と一緒に居間でごろ寝していたが、先に目が覚めてしまった。
何となく、庭に出てみようと思い玄関で靴を履いて戸をガラッと開けたら
日がかなり影ってたのである。外は夕方の暗さになっていた。可笑しい。
だって 、居間で目が覚めた時は未だ1時過ぎだったはずだ。それに居間から窓越しで
外を見た時も当然の如く昼間だった。やばい、家の中に戻ろうとしたが
戸が開かない。そうだ縁側の窓は鍵が掛かってないから、そこから中へ入ろうと
思った。しかし窓が開かないのである。そして窓から中を覗くとお昼寝してるはずの
親戚一同が消えてるのである。

 

私は半泣き状態に陥ってしまった。門を出て2、3件隣に親戚の家がある。
とにかく、そこへ助けを求めようと踵を返し門の外へ出た。すると10人位が道路にいた。
私は田舎にたまたま帰省してただけなので、誰かは知らないが。
良かった。私は彼らに話しかけようとした。が、風景が可笑しい。
祖母の家の前の
道路はY状である。門の前が一直線で、その先が二手に道が分かれてるのである。
二手に分かれる地点は山(ド田舎なので)である。そして分かれた先も畑が連なり
所々に民家が点々と有る。とにかく二つに分かれる地点は山なのに、いつの間にか其処に、屋敷が建ってるのである。

 

すると12~3人の男女が其処から現れた。
その屋敷はいつの間にか高台に建ってたので、
玄関を出たら階段で降りなければならないのだが、彼らは空に浮かんで空中を歩きながら
こちらまで来た。呆然としたが不思議と恐怖感は無かった。
彼ら「ようこそ、人生の分岐点まで、、、。人間にはその後の世界に多大な影響
を及ぼす起点がある。もし、あの時違う解答を選んでいたらどうなってたんだろうか。

世界にはこんな分岐点が過去、未来を問わず幾つか存在する。そこで君達に此処に
集まって貰ったのはどちらかを選んで欲しいからだ。この道は二つに分かれてる。
どちらを選んでも結果は異なる。私達が君達の一人ずつの担当者になる。」
そう言って彼らは其処に居た人達の横に降り立った。
私の担当は見た目が中肉中背でサングラスを掛け、スーツを着ていた。
サングラスの所為で表情が遮断され具体的な年齢は分かりずらかったが、
何故か中年だと肌で感じた。
全員がこの格好では無い。TシャツGパンも居るし、短パンも居る。
女性もスーツ姿も居るし、フレアスカートやコギャル風も居る。

スーツ男「この間、会ったね。本当は君はリストに載ってなかったが、あの屋敷(本家)付近の
気の流れと君の波長が上手く適合して、姿を見られちゃった。」
私「じゃあ、廃寺もそうなの?」
スーツ男「そうだ。」
私「でも本家の無人屋敷の時は、寒気もしなかったし、場に心地良い空気が
流れていたわ。逆に廃寺の時は、その場所から離れたかった。」
スーツ男「我々はあの廃寺に居を構えていた。
勿論、この世界の人には姿は見えない。そこへ君が突然現れた。
本来なら波長は合わないが、君はその前に御先祖の墓を探索してたのか、気が乱れてた。
それでやたら敏感になった気と我々の存在、加えて其処が廃寺だったのも要因だが、融合して寒気、鳥肌が起きたと思う。

 

屋敷の時は場所が御先祖の生活拠点だったし、君は子孫だし、色々守ってくれていたからね。」
私「今日のお昼ねタイムで私が外に出るように仕組んだのね」
スーツ男「そうだ。最初に言った通り、本来君はリストに載ってなかった。
こちらの気まぐれで、私の独断だが参加して貰う事にした。それに君は学校で頭が宜しく無かったね。
そんな貴重なサンプルも採りたいと思った。殆ど私の気まぐれだがね。」
実際私は頭が良くない。偏差値も悪かった。通知票で2を貰った事もある。偶然波長が合った
馬鹿のサンプルも採りたいと思ったのか、、、、。
私「他の人々はこの村の人達ですか」
スーツ男「否、違う場所から連れてきた。我々は日本全国でこの実験をやっている。

県事に何人かを選んで実験してる。此処は長野県だから、県内各地から
集まって貰った。君以外はね。本部からの指示で実験者が決まる。
他に何か聞きたい事は有る?」
私「私の未来を教えて下さい。それと親戚一同が消えたんですが」
スーツ男「個人の未来は教えられない。特別に少しだけ教えるとしたら、君は
至って平凡な人生を送る。十人並みの人生だ。可も無く不可も無い小市民生活だ。
親戚の方はあの家でお昼寝をしている。そもそも今居るこの場所は異次元、別世界だ。」

ふと、ドラえもん「のび太と鉄人兵団」のもう一つのそっくり世界を思い出した。

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