- 貔貅(ひきゅう)
【Píxiū/ピーシウ】
古代中国の瑞獣。龍の頭、獅子の体を持ち、財を食べて出さないことから「招財獣」として崇拝される。金運・守護の象徴。
― 金を呑み、福を吐かぬ天の獣。 - 負屓(ふき)/贔屓(ひいき)
【Fùxì/フーシー】【Bìxì/ビーシー】
「龍生九子」の一体。亀に似た神獣で、石碑や門の台座に刻まれる。重きを支える力と忍耐の象徴。
― 千年を背に、沈黙で歴史を支える。 - 赤龍(せきりゅう)
【Chìlóng/チーロン】
五行思想に基づく龍の一種。火と南方を象徴し、夏と繁栄を司る霊龍。
― 炎のごとく昇り、空を紅に染める。 - 跂踵(きしょう)
【Qízhǒng/チージョン】
『山海経・海外東経』に登場する一足の怪鳥。猪の尾を持ち、疫病をもたらすとされる凶鳥。
― 片足で立ち、疫を呼ぶ風を蹴る。 - 鄔文化(うぶんか)
【Wū Wénhuà/ウー・ウェンホア】
『封神演義』に登場する武将。驚異的な怪力を持ち、殷の軍に仕えて戦った。
― 大地さえも拳で震わせた豪傑。 - 酒虫(しゅちゅう)
【Jiǔchóng/ジウチョン】
酒の精霊。人の体内に棲み、飲酒欲を煽るとされた。唐・宋代の文人にも引用され、酔と狂の象徴。
― 杯の底に蠢くもの、それが真の主。 - 野狗子(やくし)
【Yěgǒuzi/イェゴウズ】
戦場に現れる野鬼。死者の脳を食らうとされ、怨霊と戦の残酷さを象徴する。
― 戦の夜、嗤う声が風に混じる。 - 金烏(きんう)
【Jīnwū/ジンウー】
太陽に棲む三足の烏。陽気・生命力・天子の象徴。日本神話の八咫烏にも通じる日輪の霊鳥。
― 黒き羽が、光を運ぶ。 - 金角・銀角(きんかく・ぎんかく)
【Jīnjiǎo・Yínjiǎo/ジンジャオ・インジャオ】
『西遊記』に登場する兄弟妖王。牛魔王の配下で、金・銀の角と如意瓶などの宝具を操る。
― 欲と権能の双角が、天を試す。 - 鉄扇公主(てっせんこうしゅ)
【Tiěshàn Gōngzhǔ/ティエシャン・ゴンジュ】
『西遊記』に登場する女性仙。牛魔王の妻で芭蕉扇を用いて火焔山の炎を鎮めた。後に悟空と和解。
― 扇ひと振りで、情と炎が舞う。 - 鑿歯(さくし)
【Záochǐ/ザオチー】
『山海経』に登場する猛獣。鋭い歯を持ち、人を食らうとされる。獰猛と飢えの象徴。
― 血を啜り、森を赤く染める。 - 長人(ちょうじん)
【Chángrén/チャンレン】
『山海経』に登場する巨人族。山を越えるほどの体躯を持つとされる。
― 雲を跨ぎ、雷鳴を肩で聴く。 - 長股人(ちょうこじん)
【Chánggǔrén/チャングーレン】
『山海経』に記される人種。極めて長い脚を持ち、川を跨いで渡るとされる。
― 一歩ごとに、世界が狭くなる。 - 長臂人(ちょうひじん)
【Chángbìrén/チャンビーラン】
『山海経』に登場する腕の長い人々。木々を渡り、樹上で暮らすと伝わる。
― 森を抱く腕に、風が眠る。 - 開明獣(かいめいじゅう)
【Kāimíngshòu/カイミンショウ】
『山海経・海外西経』に登場する虎に似た巨獣。九つの首それぞれに人面を持ち、夜を照らす光を放つ。
― 闇を照らすのは、九つの視線。 - 霊亀(れいき)
【Língguī/リングイ】
「四霊」の一つ。神聖な亀で、長寿・安定・知恵の象徴。風水では家運を支える守護神。
― 静けさの底に、千年の時が棲む。 - 青龍(せいりゅう)
【Qīnglóng/チンロン】
四神の東方守護。春と木徳を司る聖獣で、龍神信仰の中核。
― 新芽の風が、鱗の間を駆け抜ける。 - 饕餮(とうてつ)
【Tāotiè/タオティエ】
四凶の一。暴食を象徴する怪物で、古代青銅器の文様に刻まれた。
― 欲を呑み、己も呑まれる。 - 風狸(ふうり)
【Fēnglí/フォンリー】
中国・日本双方に伝わる風の妖獣。風を起こし人を惑わせるとされ、狐や狸と混同されることも。
― 無風の夜に、彼だけが笑う。 - 飛頭蛮(ひとうばん)
【Fēitóumán/フェイトウマン】
夜になると頭部が胴体から離れ飛ぶとされる怪異。東南アジアにも類例が多く、魂離脱の象徴ともされる。
― 首のない影が、月を追う。
- 馬腹(ばふく)
【Mǎfù/マーフゥ】
古代中国の伝承に登場する水棲の怪物。川や湖に棲み、人を引きずり込んで喰らうとされる。
― 水面の静けさに潜む、馬の影。 - 馬頭(めず)
【Mǎtóu/マートウ】
仏教・道教で地獄の獄卒神。牛頭とともに冥界の門を守護し、亡者を裁く神霊。
― 死の門に立つ二つの頭、慈悲と恐怖のあわい。 - 騶虞(すうぐ)
【Zōuyú/ゾウユー】
古代中国の伝説上の瑞獣。「仁獣」とも呼ばれ、徳ある王の時代に現れるとされる。虎に似て白黒の文様を持つ。
― 平和な世を映す、森の影。 - 鬼(き)
【Guǐ/グイ】
死者の霊や悪霊を指す語。日本語の「おに」に相当し、人に害をなす存在として描かれる。
― 恐れと記憶が、形を得たもの。 - 鬼市(きし)
【Guǐshì/グイシー】
夜中に開かれる幽霊の市場。人が足を踏み入れると魂を奪われると伝えられる。
― 灯りなき市に、名もなき声が集う。 - 鬼打牆(きだしょう)
【Guǐdǎqiáng/グイダーチャン】
夜道で幻の壁を見せ、人を迷わせる妖怪。方向感覚を狂わせ、延々と同じ道を歩かせるとされる。
― 道はあるのに、出口はない。 - 鬼車(きしゃ)
【Guǐchē/グイチー】
九つの頭を持つ赤い鳥。『太平広記』などに登場し、人や獣の魂を奪うとされる。
― 九つの口が、夜の空を啼き裂く。 - 魃(ばつ)
【Bá/バー】
炎帝神農氏の娘ともされる旱魃の女神。天より降りて乾きをもたらし、雨を拒む存在。
― 降りぬ雲を睨む、焦熱の瞳。 - 鴆(ちん)
【Zhèn/ジェン】
猛毒の羽を持つ鳥。『史記』『列子』などに記され、羽を煎じた毒酒は一滴で命を奪うという。
― 美しさこそが、毒の名である。 - 鴸(しゅ)
【Zhū/ジュー】
『山海経・南山経』に見える怪鳥。梟に似て人の手を持ち、鳴き声は災いの兆し。
― 闇の木立に、凶音ひとつ。 - 鵬(ほう)
【Péng/ポン】
『荘子・逍遥遊』に登場する巨大な鳥。海の魚「鯤」が化して鵬となり、天を覆う翼を持つ。
― 大空さえも、彼の影を受け止めきれぬ。 - 鸞(らん)
【Luán/ルアン】
鳳凰と並ぶ霊鳥。聖王の治世にのみ現れ、音楽を愛し、吉兆を告げる。
― その羽音は、調和の旋律。 - 麒麟(きりん)
【Qílín/チーリン】
「四霊」の一。仁・義・祥瑞を象徴し、平和な世に現れる神獣。角は慈悲の象徴。
― 足下に草を踏まず、仁の道を歩む。 - 黄風大王(こうふうだいおう)
【Huángfēng Dàwáng/ホアンフォン・ダーウァン】
『西遊記』に登場する妖仙。黄砂を吹き荒らす術で三蔵法師を苦しめた。後に観音菩薩に封じられる。
― 砂嵐の中に笑う、風の魔。 - 黄龍(こうりゅう)
【Huánglóng/ホアンロン】
四神の中央を司る龍。大地と調和を象徴し、五行の「土」に対応する。
― 天と地の狭間に生まれた均衡。 - 黒龍(こくりゅう)
【Hēilóng/ヘイロン】
北方を守護する龍。水や雨を司り、暴風雨の神ともされる。
― 嵐の夜、彼の背に稲妻が走る。 - 龍(りゅう)
【Lóng/ロン】
中国神話の最高位の霊獣。天と水を支配し、帝王権の象徴とされる。雲と雷を従える。
― 鱗のきらめきは、天命の光。 - 龍生九子(りゅうせいきゅうし)
【Lóngshēng Jiǔzǐ/ロンシェン・ジウズー】
龍が生んだとされる九体の子。睚眦・螭吻・蒲牢・贔屓など、建築装飾や法具に象徴的に用いられる。
― 九つの性は、九つの徳でもある。 - 囲(だい)※異体字表記
【Dài/ダイ】
『山海経・北山経』に見える深淵の神。人面・羊角・虎爪を持ち、淵を巡って光を放つとされる。
― 深き水底の光、それは神の眼。
神話に息づく霊獣たち
中国神話に登場する神獣や妖怪たちは、「自然の摂理」「人の心」「善と悪の均衡」を象徴する存在として、今もなお語り継がれています。
龍は力と繁栄を、麒麟は仁徳を、鳳凰は調和を、そして鬼は人の恐れを映す鏡を――。
それぞれの物語には、私たちが生きるうえで忘れがちな「心の調和」や「幸福への道」が静かに示されています。
風水やスピリチュアルの世界でも、こうした神話的存在は「運を整える象徴」として受け継がれ、
書籍・芸術・創作など、さまざまな形で現代文化の中に息づいています。
神話は、過去に閉じ込められた物語ではありません。
それは、私たちの生き方を照らし出す“もう一つの真実”――。
あなたの心に響く神獣や存在を見つけてみてください。
そこには、今を生きるヒントと、静かに寄り添う力がきっと宿っています。
FAQ よくある質問
中国神話の神獣とは?
中国神話の神獣とは、龍・麒麟・鳳凰・玄武などのように、自然や徳、吉兆を象徴する霊的な存在を指します。これらは古代の思想や風水にも深く関係し、人々に幸福や守護をもたらす存在とされてきました。
中国神話にはどんな妖怪が登場しますか?
代表的な妖怪には、鬼車(九つの頭を持つ鳥)、魃(旱魃を司る女神)、姑獲鳥(子を奪う怪鳥)などがあります。これらは恐怖の象徴であると同時に、自然の摂理や人間の恐れを映した存在でもあります。

コメント