中国の妖怪は、神話・山海経・西遊記・封神演義など、さまざまな物語の中で語られてきた魅力的な存在です。
本記事では、それぞれの妖怪について 特徴・起源・読み方 をわかりやすく整理しています。
この記事を読むと――
- 中国の妖怪にどんな「種類」があるのか一目でわかる
- 創作・物語づくりに使える“性質や特徴”をつかめる
- 名前の意味や背景を知り、世界観に深みを加えられる
それぞれの妖怪の 意味・姿・性質 も説明しています。中国神話の世界を探しながら、創作や知識の幅を広げてみてください。
中国の妖怪 一覧
妖怪名の意味・発音・内容は文献により異なる場合があります。
本記事では一般的な説を採用していますが、中国語の読み方や原典解釈には複数の説が存在する点をご理解ください。
- 白澤(はくたく)
中国語:白泽(バイザー)
出典:黄帝巡遊譚、『今昔百鬼拾遺』『三才図会』
東海を巡った黄帝が出会ったとされる霊獣。人語を解し、天下の妖怪・瑞兆に精通する存在として、魔除けや博識の象徴となった。 - 白娘子(はくじょうし)
中国語:白娘子(バイニャンズー)
出典:『白蛇伝』
白蛇が美しい女性に化けた姿。許仙との恋物語で知られ、中国四大民間伝説の一つとして広く親しまれている。 - 白猿(はくえん)
中国語:白猿(バイヤン)
出典:『封神演義』
白い毛並みを持つ猿の妖怪・霊獣。武芸や仙術に長けた存在として描かれ、山中で人に試練を与える賢者的な側面も持つ。 - 白虎(びゃっこ)
中国語:白虎(バイフー)
出典:中国神話・四象信仰(『南遊記』ほか)
四方を守護する霊獣の一つで、西方の守護神。戦神・殺伐の神としても崇められ、軍事や武勇の象徴とされる。 - 白鹿(はくろく)
中国語:白鹿(バイルー)
出典:『風俗通・姓氏下』『国語・周語上』『史記・孝武本紀』『漢書・郊祀志五』『太平御覧』ほか
白い鹿は古来、吉兆・瑞獣とされた。仙人や隠者の乗り物としてもしばしば描かれ、清浄と長寿の象徴となっている。 - 白龍馬(はくりゅうば)
中国語:白龙马(バイロンマー)
出典:『西遊記』
唐三蔵の乗る白い馬で、本体は西海龍王の三太子。罪を償うため馬の姿となり、取経の旅を最後まで支える守護的存在。 - 相柳(そうりゅう)
中国語:相柳(シャンリウ)
出典:『山海経・海外北経』
九つの頭を持つ蛇神・水神。共工の部下として各地を荒らし、水害をもたらす怪物として描かれる。 - 石磯娘娘(せききじょうじょう)
中国語:石磯娘娘(シージーニャンニャン)
出典:『封神演義』『三教搜神大全』『夷堅志』
岩礁や海辺に縁ある女神・妖神。『封神演義』では申公豹と結ぶ妖婦として登場し、法力をもつ敵役として描かれる。 - 破鏡獸(はきょうじゅう)
中国語:破镜兽(ポージンショウ)
出典:『前漢書・郊祀志』注
父を食うとされる怪獣。姿は獣に似て虎のような目を持つとされ、親を害する不孝・逆乱の象徴として語られる。 - 禍斗(かと)
中国語:禍斗(フオドウ)
出典:『山海経』
火や災厄と結びつく妖獣。現れるところで戦乱や火災が起こるとされ、凶兆の獣として恐れられた。 - 窮鬼(きゅうき)
中国語:穷鬼(チョングイ)
出典:中国民間信仰
貧困と不運をもたらす鬼。人や家に憑いて財産を失わせる存在とされ、貧乏神的な観念と結びついている。 - 紅孩児(こうがいじ)
中国語:红孩儿(ホンハイアル)
出典:『西遊記』
牛魔王と羅刹女の子で、三昧真火を操る少年妖怪。火焔山を支配し、唐三蔵一行を苦しめた強敵として知られる。 - 縊鬼(いき)
中国語:缢鬼(イーグイ)
出典:『聊斎志異』『阅微草堂笔记』
首吊り自殺をした者の怨霊。首に縄痕を残した姿で現れ、人を呪ったり同じ死に方へ誘うとされる。 - 罔象(ぼうしょう)
中国語:罔象(ワンシャン)
出典:『酉阳杂俎・尸穸』
水に関わる怪異として記される霊。姿ははっきりしないが、水辺で人を惑わせる存在とされる。 - 羵羊(ふんよう)
中国語:羵羊(フェンヤン)
出典:『搜神記』
土中に棲む怪として挙げられる妖獣。木石の怪・水中の怪と並べて語られ、地の気と結びついた異形の存在とされる。 - 聶小倩(ニエ・シャオチェン)
中国語:聂小倩(ニエ・シャオチェン)
出典:『聊斎志異』
若くして亡くなった美女の幽霊。人間の書生と恋に落ち、妖怪世界と人間世界のあいだで揺れる悲恋譚で知られる。 - 花妖(かよう)
中国語:花妖(ホワヤオ)
出典:各種文人作品・怪異譚
花が化した妖精・妖怪の総称。美しい女性の姿で現れ、人を惑わせたり、逆に人を助ける存在としても描かれる。 - 虛耗(きょこう)
中国語:虚耗(シューハオ)
出典:中国民間信仰・怪談
家の財貨や精気を消耗させる妖怪・災厄の神。現れると病や貧困が続くとされ、厄除けの対象となった。 - 虹蜺(こうげい)
中国語:虹蜺(ホンニー)
出典:『高唐賦』『抱朴子・嘉遯』ほか
虹が妖虫・龍のような存在と見なされたもの。雄を「虹」、雌を「蜺」とし、天象と妖異が結びついた観念を表す。 - 蚕女(さんじょ)
中国語:蚕女(ツァンニュー)
出典:『太古蚕马记』『搜神記』『蜀図経』『神女記』『太平広記』
蚕を司る女神・精霊。機織りや養蚕の守護神として信仰され、蚕事に関わる多くの伝説を生んだ。 - 蚩尤(しゆう)
中国語:蚩尤(チーヨウ)
出典:『山海経・大荒北経』
九黎族の首領として黄帝と戦った戦神・魔神的存在。武力と呪術に長け、しばしば混沌や戦乱の象徴として語られる。 - 吸血老太婆(きゅうけつろうたいば)
中国語:吸血老太婆(シーシュエ・ラオタイポー)
出典:中国都市伝説
血を吸う老婆として知られる怪異。深夜に現れて若者を狙うなど、近代以降の都市部で広まった恐怖譚として語られる。現代の怪談として広まった。 - 夜啼鬼(やていき)
中国語:夜啼鬼(イエティグイ)
出典:民間伝承
赤子の泣き声を模して人を誘い寄せる鬼。夜泣きの原因を説明するための民間信仰として語られた。 - 婚配鬼(こんぱいき)
中国語:婚配鬼(フンペイグイ)
出典:民間怪談
婚姻にまつわる怪異で、死者が婿・嫁として現れるという怪談群の一種。冥婚信仰とも結びつく。 - 沙悟浄(さごじょう)
中国語:沙悟净(シャーウージン)
出典:『西遊記』
唐三蔵の弟子の一人で、元は天界の将。戒律を破り流罪となり妖怪となるが、改心して旅の護衛を務める。 - 煞神(さつしん)
中国語:煞神(シャーシェン)
出典:『子不語』『夜譚随録』ほか
暴虐・凶暴を象徴する恐怖の鬼神。赤髪・巨体で鉄叉を持つ姿が語られ、災厄や暴死に関する怪談に多く登場する。 - 狌狌(せいせい)
中国語:狌狌(シンシン)
出典:『荀子』『山海経』『淮南子』ほか
人語を理解し、未来を予言するとされた怪獣。猿に似た姿だが知性が高く、古代思想書にも言及が多い。 - 独角兕大王(どっかくじだいおう)
中国語:独角兕大王(ドゥージャオスーダーワン)
出典:『西遊記』
一角を持つ兕(サイ)の妖怪。強力な宝具「玲瓏宝塔」を操り、孫悟空を大いに苦しめた。 - 猰貐(あつゆ)
中国語:猰貐(ヤーユー)
出典:『山海経』
人を食うとされた恐ろしい怪獣。俊敏で凶暴な性質から、凶兆や猛獣の象徴として扱われた。 - 玃猿(かくえん)
中国語:玃猿(ジュエユエン)
出典:『搜神記』
山林に棲む巨大な猿の妖怪。人間の女性をさらうという怪談が有名で、古代の“異獣伝説”の典型例。 - 玉兎精(ぎょくとせい)
中国語:玉兔(ユートゥ)
出典:
月宮の玉兎が化けた妖怪。人間の女性として地上に降り、唐僧に恋した逸話が描かれる。 - 琵琶精(びわせい)
中国語:琵琶精(ピーパージン)
出典:『封神演義』
琵琶が化した妖怪。音楽を操り人を惑わせる美女の姿で現れるが、戦闘力も高い。 - 病魔(びょうま)
中国語:病魔(ビンモー)
出典:『西遊記』
人に病をもたらす魔鬼の総称。姿はさまざまで、特定の疫病を象徴する存在として恐れられた。 - 白骨夫人(はっこつふじん)
中国語:白骨夫人/白骨精(バイグージン)
出典:『西遊記』
白骨が化けた妖怪。三度にわたり姿を変えて唐僧を狙う、物語中でも有名な強敵。 - 百眼魔君(ひゃくがんまくん)
中国語:百眼魔君(バイヤン・モージュン)
出典:『西遊記』
多くの目を持つ蜈蚣(ムカデ)の妖怪。毒と妖術を操り、孫悟空らの前に立ちはだかる。 - 芭蕉鬼(ばしょうき)
中国語:芭蕉鬼(バージャオグイ)
出典:『湖海新聞夷堅続志』
芭蕉の葉に宿った妖怪で、夜になると人を脅かすとされる。植物系精霊の代表的存在。 - 落頭氏(らくとうし)
中国語:落头氏(ルオトウシ)
出典:民間伝承
頭部が胴体から離れ、飛行して活動するという妖怪。飛頭蛮の系統と同類。 - 落頭民(らくとうみん)
中国語:落头民(ルオトウミン)
出典:『搜神記』
夜間に頭が離れ飛ぶ民族として描かれる怪異集団。首が飛ぶ怪談の原型として知られる。 - 虹女(こうじょ)
中国語:虹女(ホンニュイ)
出典:『類説』『江表録』
虹が化したとされる女性の妖怪。美しい姿で現れ、天象の不思議と結びつく。 - 虿鬼(たいき)
中国語:虿鬼(チャイグイ)
出典:『聊斎志異・蝎客』
毒虫「虿(サソリ)」に由来する凶悪な妖鬼。毒を操り、人に災いをもたらす。 - 蝼蛄神(ろうこしん)
中国語:蝼蛄神(ロウグーシェン)
出典:『搜神記・蝼蛄神』
蝼蛄(けら)の精が神格化したもの。奇妙な鳴き声と土地の不吉と結びつけて語られる。 - 猪婆龍(ちょばりゅう)
中国語:猪婆龙(ジューポーロン)
出典:『聊斎志異』『西遊記』ほか
大型の鼍(ワニ、鼉龍)の別名として語られる水棲怪物。川や湖に棲み、水難の象徴ともなる。 - 鉄扇公主(てっせんこうしゅ)
中国語:铁扇公主(ティエシャンゴンジュ)
出典:『西遊記』
芭蕉扇を持つ羅刹女。火焔山の炎を鎮める力を持ち、牛魔王の妻として登場する。 - 順風耳(じゅんぷうじ)
中国語:顺风耳(シュンフォンアル)
出典:『南遊記』
遠方の音を聞き取る耳を持つ神将。千里眼とともに媽祖の守護神として知られる。 - 飛頭蛮(ひとうまん)
中国語:飞头蛮(フェイトウマン)
出典:『搜神記』
頭部が切り離れ、夜間に飛行する種族。恐怖の象徴として度々怪談に登場する。 - 餓鬼(がき)
中国語:饿鬼(オーグイ)
出典:『日書』ほか
仏教伝来以前の漢文では「飢え死にした者の霊」を指した語。のちに仏教の六道の一つ「餓鬼道」の衆生として再解釈され、飢えに苦しむ亡者の像が定着した。 - 魃/旱魃(ばつ/かんばつ)
中国語:魃・旱魃(バ/ハンバ)
出典:『詩経』『山海経』
旱魃は日照りと干ばつを司る神・妖怪。強い日差しで雲を散らし雨を止める存在として恐れられ、旱害の象徴となった。 - 鮫人(こうじん)
中国語:鲛人(ジャオレン)
出典:『山海経・海内南経』ほか
海中に住む人魚族。水中で暮らし、涙が真珠になるとされる伝承で知られる。 - 鴆(ちん)
中国語:鸩(ジェン)
出典:『漢書』『史記』『楚辞』
強力な毒を持つ伝説の毒鳥。その羽や血から作られた毒酒「鴆酒」は、一滴で人を殺すと恐れられた。 - 鵬(ほう)
中国語:鹏(ポン)
出典:『説文解字』『莊子・逍遙遊』『神異経』ほか
鯤が変じたとされる巨大な神鳥。天を覆うほどの翼を持ち、境界を超える自由さや大志の象徴として語られる。
- 黄牙老象(こうがろうぞう)
中国語:黄牙老象(ホワイヤー・ラオシャン)
出典:『西遊記』
老いた巨象の妖怪で、黄ばんだ牙を持つとされる。仙人や妖怪の乗り物、あるいは変化した姿として登場する。 - 龍(りゅう)
中国語:龙(ロン)
出典:中国伝説・古典全般
雨と水を司る中華文化の代表的霊獣。雲を呼び風を起こし、皇帝権力や吉祥の象徴として崇拝された。 - 一角獣(いっかくじゅう)
中国語:一角兽(イージャオショウ)
出典:『文選・劉琨〈進劝表〉』『春秋感精符』
角を一本だけ持つ霊獣。正直・忠義の象徴とされ、聖なる獣としてまれに現れると信じられた。 - 三大仙(さんだいせん)
中国語:三大仙(サンダーシェン)
出典:『西遊記』
虎力大仙・鹿力大仙・羊力大仙の三体の妖仙。動物に由来する法力を持ち、唐僧一行の前に立ちはだかる。 - 三尸(さんし)
中国語:三尸(サンシー)
出典:『洞神訣』『東京夢華録』ほか
人の体内に潜む三匹の邪霊。定期的に天に上り、その人の悪行を天帝に告げるとされ、道教では修行により追い出すべき存在とされる。 - 九嬰(きゅうえい)
中国語:九嬰(ジウイン)
出典:中国神話・『山海経』系説話
多くの頭と声を持つ怪物。水害や災厄と結びつけられ、英雄に討たれるべき魔物として語られる。 - 九尾狐(きゅうびこ)
中国語:九尾狐(ジウウェイフー)
出典:『山海経・南山経』『山海経・海外東経』
九本の尾を持つ狐の妖怪。高い霊力を持ち、吉兆の霊獣としても、国を乱す妖狐としても語られる二面性の強い存在。 - 九尾蛇(きゅうびじゃ)
中国語:九尾蛇(ジウウェイシェー)
出典:『続子不語・九尾蛇』
九つの尾を持つ蛇の妖怪。毒と妖力を操り、人を呑み込む恐るべき存在として怪談に描かれる。 - 九尾亀(きゅうびき)
中国語:九尾龟(ジウウェイグイ)
出典:『庚編・九尾龟』
九本の尾を持つ亀の妖怪。長寿と妖力を併せ持ち、吉凶両面の象徴として語られる。 - 九耳犬(きゅうじけん)
中国語:九耳犬(ジウアルチュエン)
出典:『広東新語・神語・雷神』
九つの耳を持つ犬。遠くの音をも聞き分け、雷神に従う霊獣として記される。 - 九色鹿(くしきろく)
中国語:九色鹿(ジウセールー)
出典:敦煌莫高窟「鹿王本生」
九つの色に彩られた鹿。命を救った相手に裏切られながらも報復しない慈悲の象徴として、仏教説話に描かれる。 - 五通神(ごつうしん)
中国語:五通神(ウートンシェン)
出典:中国伝説
性愛・富貴・願望成就などを司るとされた在地の神。しばしば淫祠として問題視される一方、庶民信仰では強い霊験を持つとされた。 - 仙狸(せんり)
中国語:仙狸(シエンリー)
出典:中国伝説
長く生きた狸が仙力を得た姿。人に化けて吉凶をもたらす霊獣として、日本の「仙狸」伝承とも共鳴する。 - 六耳獼猴(ろくじみこう)
中国語:六耳猕猴(リウアル・ミーホウ)
出典:『西遊記』
六つの耳を持つ猿の妖怪。孫悟空と姿形・能力が全く同じ分身として現れ、真偽を巡る争いを引き起こす。 - 冤鬼(えんき)
中国語:冤鬼(ユエングイ)
出典:中国怪談全般
無念のうちに死んだ者の怨霊。恨みを晴らすまで成仏できないとされ、復讐の怪談に多く登場する。 - 刑天(けいてん)
中国語:刑天(シンティエン)
出典:『山海経』系説話、『阅微草堂笔记』『点石斎画報』
頭を斬られても倒れず、乳を目、臍を口として戦い続けたとされる戦神的存在。反骨と不屈の象徴としても知られる。 - 千里眼(せんりがん)
中国語:千里眼(チエンリーイエン)
出典:中国伝説
千里先まで見通す目を持つ神将。順風耳と対をなし、媽祖の配下として海上の安全を見守るとされる。 - 厠鬼(かわやのき)
中国語:厕鬼(ツェグイ)
出典:『太平広記』『酉陽雑俎』『通幽録』
便所に棲むとされる鬼。用を足す人を驚かしたり、不浄と結びつく恐怖の象徴として語られる。 - 厲鬼(れいき)
中国語:厉鬼(リーグイ)
出典:『左伝』『柳州羅池廟碑』ほか
恨みや憤怒を抱いたまま死んだ者が変じた強力な悪霊。災いをもたらす存在として古典・戯曲に頻出する。 - 夔(き)
中国語:夔(クイ)
出典:『山海経・大荒東経』『山海経・中次九経』
一足の怪獣または雷神に関連する霊獣。その姿は太鼓の装飾や音楽の守護神としても用いられた。 - 多頭鬼(たとうき)
中国語:多头鬼(ドゥオトウグイ)
出典:中国妖怪伝承
頭が複数ある鬼の総称。双頭鬼・九頭鬼・叢頭鬼などを含み、異形さと恐怖を誇張する怪物像として語られる。 - 大頭鬼(だいとうき)
中国語:大头鬼(ダートウグイ)
出典:『阅微草堂笔记』『鬼趣図』
頭が異様に大きい鬼の姿。貧相な体つきと対比され、不調和・異様さを象徴する怪異として描かれる。 - 天狐(てんこ)
中国語:天狐(ティエンフー)
出典:『玄中記・説狐』
修行を積んだ狐が昇格した最上位の姿。大神通力を持ち、天界に通じる霊的存在として尊ばれる。 - 姑獲鳥(こかくちょう)
中国語:姑获鸟(グーホーニャオ)
出典:中国・日本双方の伝承
死産・夭折した子を抱いた女の霊が鳥と化したとされる妖怪。夜空を飛び、子どもを求めてさまよう存在として恐れられた。 - 姥姥(ろうろう)
中国語:姥姥(ラオラオ)
出典:『聊斋志異』
蘭若寺に棲む千年樹の妖怪。若い女性の姿で旅人を誘い、命や精気を奪う存在として描かれる。 - 宅妖(たくよう)
中国語:宅妖(ジャイヤオ)
出典:『聊斋志異・宅妖』
一軒の家そのもの、あるいは家に宿った霊が妖怪化した存在。住人に奇怪な現象を見せ、家運と密接に関わるとされる。 - 守財鬼(しゅざいき)
中国語:守财鬼(ショウツァイグイ)
出典:中国伝承・仏教説話ほか
財宝を守ることを宿命づけられた鬼。生前に吝嗇で施しをしなかった者がなりやすいとされ、富を抱えながらも決して使えない「守銭奴の霊」の象徴とされる。 - 小児鬼(しょうにき)
中国語:小儿鬼(シャオアルグイ)
出典:中国怪談・民間信仰
夭折した子どもの霊が鬼となった存在。夜泣きや病気の原因として恐れられる一方、手厚く弔えば家を守る子どもの守護霊ともなると考えられた。 - 山精(さんせい)
中国語:山精(シャンジン)
出典:『抱朴子』『淮南子』
山に宿る精霊・妖怪の総称。木石が長い歳月を経て変化した姿とされ、旅人を惑わしたり、逆に山を守る霊として崇められることもある。 - 巨霊(きょれい)
中国語:巨灵(ジュリン)
出典:『漢武故事』『漢洞冥記』
山河をも動かすとされる巨人神。山を切り開き、川を通すなど土木・開拓と結びつけられた力の象徴的存在。 - 巩州城三怪(きょうしゅうじょうさんかい)
中国語:巩州城三怪(ゴンジョウチェン・サンクアイ)
出典:『西遊記』
寅将軍・熊山君・特処士の三体からなる妖怪三兄弟。巩州一帯を荒らすが、のちに唐僧一行との関わりの中で仏法に帰依する物語も語られる。 - 応声虫(おうせいちゅう)
中国語:应声虫(インションチョン)
出典:『続墨客揮犀』『隋唐嘉話』『本草綱目』ほか
人の喉や腹に棲みつき、宿主の意思と無関係に声を発する怪虫。人が話した言葉をそのまま繰り返すことから、現代では「イエスマン」の比喩にも用いられる。 - 廟鬼(びょうき)
中国語:庙鬼(ミャオグイ)
出典:『聊斎志異』
古い廟に宿る鬼神。祭祀が絶えた廃れた社に現れ、人を脅かすこともあれば、誠心誠意祀る者には霊験を示すこともある。 - 彭侯(ほうこう)
中国語:彭侯(ポンホウ)
出典:『搜神記』『白沢図』『今昔百鬼拾遺』ほか
長く生きた犬が妖怪化したとされる存在。人語を解し、主人に災いを知らせる霊犬としての側面と、人を噛んで祟る怪物としての側面を併せ持つ。 - 無頭鬼(むとうき)
中国語:无头鬼(ウートウグイ)
出典:『埤蒼』『漢書・揚雄伝』音義ほか
首のない姿で現れる鬼。戦乱や処刑で斬首された者の怨霊とされ、夜道で自分の頭を探しさまようと語られる。 - 無支祁(むしき)
中国語:无支祁(ウージーチー)
出典:『淮南子』『述異記』
水を司る猿形の妖魔。強大な法力を持ち洪水を引き起こすが、最終的には神々によって封じられた水怪として知られる。 - 木魅(ぼくみ)
中国語:木灵/木魅(ムーリン)
出典:『閲微草堂筆記』ほか
古木や枯れ木に宿った精霊・妖怪。人の姿をとって現れ、森に迷い込んだ者を惑わせるが、森を大切にする者には福をもたらすともいう。 - 朱厭(しゅえん)
中国語:朱厌(チューヤン)
出典:『山海経・西山経』ほか
猿に似た怪獣で、白い首と赤い脚を持つ。姿が現れると大きな戦争が起こるとされ、戦乱の前兆を告げる不吉な獣として恐れられた。 - 夢鬼(むき)
中国語:梦鬼(モングイ)
出典:『周礼・春官』ほか
人の夢の中に入り込み、吉凶の兆しを見せる鬼。悪夢をもたらす存在としても、神託を告げる使者としても解釈される。 - 棋鬼(きき)
中国語:棋鬼(チーグイ)
出典:『聊斎志異』
棋に取り憑いた鬼、あるいは死後も棋を好む者の霊。人間と対局してその腕を試し、一局を通して人生や因果を語る怪談が多い。 - 毛鬼(もうき)
中国語:毛鬼(マオグイ)
出典:『通幽記』『太平広記』
全身が毛で覆われた鬼。山野に現れて人を追い回すが、火や犬を恐れるとされる毛むくじゃらの怪物。 - 毛龍(もうりゅう)
中国語:毛龙(マオロン)
出典:『拾遺記・虞舜』
体中に毛を生やした龍。水陸を自在に行き来し、帝舜の時代に現れた瑞兆とも、異変の徴とも語られる。 - 水虎(すいこ)
中国語:水虎(シュイフー)
出典:『今昔画図続百鬼』『本草綱目』
水辺に棲む人喰いの怪物。虎に似た姿で、川に近づいた人や家畜を水中に引きずり込むとされる。 - 江豚(こうとん)
中国語:江豚(ジャントン)
出典:中国水辺伝承
川に現れる怪異としてのスナメリ・イルカ。溺れた者の魂をさらう存在とも、船乗りを守る瑞獣ともされ、地域によって解釈が異なる。 - 混世魔王(こんせいまおう)
中国語:混世魔王(フンシーマーワン)
出典:『西遊記』
石猿だった孫悟空が初めて仕えた妖怪の王。混沌たる世を乱す魔王として名乗るが、のちに孫悟空に打ち倒される。 - 溺鬼(でき)
中国語:溺鬼(ニーグイ)
出典:『明斎小識』ほか
水死者の霊が鬼となったもの。自分と同じように人を水中に引きずり込み、溺死させようとするとされる水辺の怨霊。 - 火鼠(ひねずみ)
中国語:火鼠(フオシュウ)
出典:『喜雨賦』『竹取物語』『太平御覧』ほか
火中に住み、炎に焼かれないとされる鼠。日本では『竹取物語』に登場する「火鼠の皮衣」の素材として知られる不焼の霊獣。 - 牛魔王(ぎゅうまおう)
中国語:牛魔王(ニウモーワン)
出典:『西遊記』
牛頭人身の大妖怪で、炎の山を支配する魔王。豪放磊落な性格で、孫悟空とも旧知の間柄として描かれる。 - 犼(こう)
中国語:犼(ホウ)
出典:『偃曝余談』ほか
犬や獣に似た姿を持つ想像上の霊獣。寺院の屋根飾りなどにも用いられ、悪霊を威圧し火災を防ぐ魔除けのシンボルとされる。 - 狐鬼(こき)
中国語:狐鬼(フーグイ)
出典:『聊斎志異』『閲微草堂筆記』
狐の妖怪、あるいは狐に憑かれた人の鬼。姿を変えて人を惑わすが、人間との情愛を結ぶ「狐狸精」の物語も多い。

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