七大天使とは?
七大天使(しちだいてんし、ななだいてんし)とは、ユダヤ教やキリスト教の伝統のなかで「特に重要な七人の大天使」を指す呼び名です。
ただし、その顔ぶれは教派や聖典の取り扱いによって異なり、共通して認められているのは次の「四大天使」です。
四大天使
- ミカエル(Michael) ― 神の軍勢の総司令官とされる戦いの天使。悪と戦い、人々を守護する存在として信仰されています。
- ガブリエル(Gabriel) ― 神のメッセージを人間に伝える報せの天使。受胎告知の天使としてよく知られています。
- ラファエル(Raphael) ― 「癒やし」を象徴する天使。巡礼者や病人を守り、旅路を導く存在とされます。
- ウリエル(Uriel) ― 「神の光」や知恵を表す天使。悔い改めや洞察に関わる存在として語られます。
七大天使は、この四大天使に三人を加えた構成が基本ですが、その三人は教派によって違ってきます。
『エノク書』に登場する三天使
- ラグエル(Raguel) ― 正義と調和を表すとされる天使。
- ゼラキエル(Saraqael / Sariel) ― 監督・導きの役割を持つとされる天使。
- レミエル(Remiel) ― 慰めや希望に関わる天使として伝えられます。
偽ディオニシウス文書系の三天使
- カマエル(Camael / Chamuel) ― 神の正義や力を象徴するとされる天使。
- ヨフィエル(Jophiel) ― 美や知恵、直感を司る天使として知られます。
- ザドキエル(Zadkiel) ― 慈悲や赦しに関わる天使とされます。
教皇グレゴリウス1世時代のカトリック教会の三天使
中世の伝承では、次の三天使が七大天使に数えられることもありました。
- サマエル(Samael)
- オリフィエル(Oriphiel)
- ザカリエル(Zachariel / Zachariel)
さらに、地域によってはウリエルがアナエル(Anael)と入れ替わるなど、七大天使の顔ぶれにはゆらぎがあります。
東方正教会で挙げられる三天使
- セラフィエル(Selaphiel / Seraphiel) ― 祈りを象徴する天使。
- イェグディエル(Jegudiel) ― 労働や奉仕の報いに関わる天使。
- バラキエル(Barachiel) ― 祝福を与える天使として尊ばれます。
東方正教会では、これにイェレミエル(Jerahmeel / Jeremiel)を加えて「八大天使」とする数え方もあります。
コプト正教会の三天使
- スリエル(Suriel / Surael)
- サラティエル(Sarathiel / Salathiel)
- ザダキエル(Zadakiel / Zadkiel)
コプト正教会では、ウリエルがアニエル(Aniel / Ananiel)と入れ替わる伝承もあり、こちらも地域や文献によって違いが見られます。
イスラームの四天使
イスラームにも、重要な役割を担う四人の大天使が登場します。名前や物語はキリスト教と異なりますが、「神の使いとして世界を支える存在」という基本的なイメージには共通点があります。
- ジブリール(Jibrīl) ― 啓示の天使。ムハンマドにクルアーンの言葉を伝えたとされます。
- ミーカール(Mīkāʾīl) ― 雨や自然を司り、恵みをもたらす天使。
- アズラーイール(ʿAzrāʾīl) ― 死をつかさどり、人の魂を神のもとへ導く天使。
- イスラーフィール(Isrāfīl) ― 終末の日にラッパを吹き鳴らし、復活を告げるとされる天使。
まとめ ― 羽の数や名前の違いは「世界観の違い」
以上、「天使の階級と七大天使の名前、そして羽の数」について紹介しました。
熾天使のように六枚の翼を持つ天使もいれば、座天使のように車輪として描かれ、羽の枚数がはっきりしない階級もあります。羽の数はあくまで神秘的な世界観を表現するためのシンボルであり、必ずしも強さや能力の優劣と結びついているわけではありません。
また、七大天使の構成も教派や時代によって大きく異なります。
「どれが正解」というよりも、長い歴史の中で多くの信仰・神秘思想・芸術が生み出してきた、多彩な天使像のバリエーションとして楽しむとよいでしょう。

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