不思議な話・体験談 短編5話【4】
脳は主語を認識できないらしい
脳は主語を認識できないらしい
他人を悪く言うと自分が傷つくことがあるのは
脳が自分が言われたものと認識してしまうから
逆に他人をほめたのに自分まで照れくさくなるのは
これも脳が自分のことだと誤認するから
だからスポーツで
相手チームミスれって念じるのも自分に言ってるのと同じことになるから
成功してる選手はそういうことしないんだと
自分も気をつけようっと
爺さんが取り次いでくれた
昔2年ぐらい引きこもりやってたある日の事。
突然、姉ちゃんに「あんたに電話だって」と受話器を渡された。
友人とも疎遠になってたから誰だろうと思いつつ「もしもし」と電話に出た。
無言。
こっちから何を話しかけても全くの無言。
けれど、背後の音は聞こえてくる。
車のクラクション、人の話し声、風に揺れる木の葉の擦れる音。
ずっと外に出てなかったから街の生活音をすごい久しぶりに聞いて、急に外に出たくなった。
そういえば、そろそろ爺さんの命日だったし心配して掛けてくれたのかと思いつつ感謝と共に電話を切ろうとした。
すると、かすかに女性の話し声が聞こえた。
こっちに何事かを伝えようとするか細い声。
受話器に耳を押し付けてその声を聞き取ろうとした。
聞こえてきたその言葉。
女「あの……突然こんなことを言うのはおかしいかもしれませんけど、初めて会ったときからずっと好きでした。付き合ってください○○さん」
俺「は?」 口が開いたままふさがらない。
女「え? あの、××ですけど付き合ってもらえませんか?」
俺が伝えるべきはただ一つの言葉だけだった。
俺「あの、すみません。うち△△ですので電話番号間違えてませんか?」
女「え、あれ? ○○さんじゃないんですか?」
俺「ええ△△です」
女「きゃっ間違えました! すみませんすみません!」 ガチャッ
これが引きこもり脱出の鍵になったものだから、人生わからない。
あの時の女の子は告白に成功したのだろうかと10年経った今でも思い出す。
すぐ後に姉ちゃんに「何で俺宛てなん?」と聞いてみたら、「弟さんお願いします、言われたから」。
俺「いきなり告白されてびびったわw」
姉「何? あんた男に告白されたの?」
俺「は?」
本当に爺さんが取り次いでくれたのかもしれないと思った。
銭湯に通うのが楽しみ
俺が小学生の頃、近所に百年近く続く小さな銭湯があった。
まあ老舗とはいえ時代の流れか、客入りはそれほど良くなかった。
俺の爺さんはたいそうお気に入りで、その銭湯に通うのが楽しみの一つだった。
何の前触れもなくポックリと死んだが、その前日も通っていたくらいだ。
ある週末の夜、親父に銭湯に連れて行ってもらった。
服を脱いで勢いよく浴室の扉を引くと、驚いた。
いつもは閑古鳥が鳴いているこの銭湯が、どういうわけか満員だった。
浴槽は芋洗いだし、洗い場も一つも席が空いていない。
後からきた親父も驚いていた。
「これじゃあ入れないなあ、ちょっと待つか」
といい、親父は自分にはビール、俺にはアイスを買ってくれて、脱衣室で待つことにした。
風呂前にアイスを買ってくれるなんて、いつもとは順番が逆で、俺はなんだかおもしろかった。
しばらく待ったが、出てくる客は誰もいなかった。
親父に様子を見てくるよう言われ、再度扉を開けると、また驚いた。
さっきまであれだけ混雑していた風呂場だったのに、客は2~3人しかいなかった。
さっきは確かにぎゅうぎゅうだった、それに出てきた客はいなかったぞ?
親父も驚いていたが、あまり細かいことを気にしない人で、何事もなかったかのように、ひとしきり風呂を楽しんだ。
銭湯から帰るとき、番台のそばの貼り紙に気がついた。
なんと今月で店を閉めるという内容だった。
しかも今月というとあと1週間しかないではないか。
はたと気がついた。
子供ながらにも、先ほどの不可解な混雑の理由がわかった気がした。
閉店を惜しんだ遠い昔からの「常連」が、大挙して押し寄せてきたのではないか。
親父も同じことを考えていたようで、
「爺さんもきっと来ていたんだろうなあ、○○(俺の名前)も一緒なんだし、挨拶くらいしてくれても良かったよな」
とつぶやき、それ以後は黙ったままで俺と手をつないで帰路へついた。
銭湯には閉店の日も親父と行ったが、その日も相変わらず空いていた。
銭湯が混んでいるのを見たのはあれが最初で最後のことだった。
記憶が途絶えた
2001年の秋
風邪ひいてて寒気がするので、大久保にある病院に行くため西武新宿線のつり革につかまってた。
で、あたまがぐわんぐわんと痛くて、目を閉じて眉間にしわ寄せて耐えてた。
そこで記憶が途絶えて、気がついたら夕方で、あたりは見知らぬ景色。
買ったことない服着てて、髪染めたこともなかったのに茶髪になってた。
パニクって近くのラーメン屋に入って、ここどこと聞いた。
大阪市の福島駅の近くで、時間が一年近く経ってた。
ケータイの種類が変わってた。
アドレス帳には、「ま」とか「ひ」とか、一文字の名前で電話番号が10程度あったけど、知り合いや実家の電話番号がない。
俺はなぜだか知らないがその知らない電話番号が恐ろしくて、川に捨てた。
警察から実家に連絡した。
向こうもパニクってた。俺に捜索願が出てた。
とにかく、帰って、今もまだ月一で精神病院に通ってる。
仕事は元の会社には帰れないみたいだったので、今は派遣やってる。
鬼の形相の武士
オレの友達のKの話。自称見える人。
オレ自身は幽霊の存在は否定も肯定も出来ない立場。
幽霊なんか見た事ないけど、そんな事言ったらオレがまだ実物を見た事ない物なんてこの世にいっぱいあるし。
だから友達の話す霊体験・目撃談についてはウソだともホントだとも思わなかったけど、
妙に初対面の人の過去やら未来の出来事を言い当てたりする奴だった事は確か。
それが霊感なのか別の能力なのか、はたまた偶然なのかオレには分からん。
そんなKが一人暮らしを始めた。
5階建てのワンルームマンションの一室。
武士の霊が出るらしい。
夜中にガシャガシャ鎧の音がして目を覚ますと、鬼の形相の武士が玄関の扉のやや上方(なぜかそこには在るはずのないお札が貼ってある)を弓で射る。
朝になって確かめると、弓矢は勿論 お札もない。
そんな事が毎晩続いて、流石にウザくなってきたらしい。
元来Kは怖がりなので、今までは霊に遭遇しても極力無視の方向で済ませてきたのだが
自分の住む場所に出るという状況になったら話しは違う。
腹を括って武士と対話する決意をした。
ペプシコーラと たけのこの里を二人分用意して、武士が出現するのを待ち構えた。
「普通そういうのって日本酒とかお団子とかの方が良いんじゃないの?」って聞いてみたら
本人曰く、「昔の人が食べた事ない物のほうが物珍しくて喜ぶかもしれないし…」という根拠との事。
まあそれで交渉というかKの希望を伝えたらしい。
怖いから弓を射るのはKが不在の時だけにして欲しい事、やって欲しい事があれば出来る範囲で協力する事等を訴えた。
武士は特に分かったとも嫌だとも言わなかったらしいけど、翌晩からは出てこなくなった。
今まで避けていた霊とコミュニケーションが取れた事に嬉しくなったK。
ちょくちょく 「食べていいよ」の置手紙と共にお供え物(ピザやらポテチ等)をするようになった。
ネットの使い方も教えたらしい。
教えたと言うか中空に向かってやり方を説明しながらエロサイト巡りしたり
Googleで適当に検索してみたり、というだけの事らしいけど。
お供え物とネットに関してはオレも体験した。
お供え物を置いてKと一緒に外出。
何時間か後に帰宅すると、ポテチが減ってる。
外出前に確認したブラウザの履歴(エロ系ではなく何故か動物関連のサイト)が増えてる。
(これに関しては協力者がいれば再現出来る事だけど、真実は不明)
最近はKも図々しくなって、お供え物の置手紙にお願いを書くようになった。
「液晶テレビが欲しい」と書いて懸賞応募。アクオス当てやがった。
「○○ちゃんと仲良くなりたい」と書けば、○○ちゃんは彼氏と別れてKといい感じに。
(テレビも○○ちゃんも偶然かもしれんけど、これでオレもちょっと信じかけてる)
夏になったらサマージャンボお願いする気らしい。
武士からメッセージとかお告げみたいなものはないらしいので、競馬やロトなんかは断念。
もし宝くじ当てやがったらオレも霊の存在を完全に信じてしまうと思う。
けど、いつかKにはバチがあたるような気がする。
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