『山の老猟師から聞いた不思議な出来事』山にまつわる怪異譚

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『山の老猟師から聞いた不思議な出来事』山にまつわる怪異譚 山にまつわる怖い話
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山の老猟師から聞いた不思議な出来事

 

最近まで仕事の関係で、山岳部の支社にいたんだ。
その時、老猟師から山にまつわる不思議な話を聞いた。
民俗学みたいな内容だけど、面白い内容が多かったので、興味があったら聞いて欲しい。

語り手は、80歳過ぎのじ様。
既に猟師は引退している。
20代のころから山で鉄砲撃ちをしていた。
本業は農家。
歳の割には饒舌で、話すことが好きらしい。

そんな人が教えてくれた話です。

 

第一話 山人

 

『やまひと』と読む。
遭難者、自らの意思で山に入る者、様々であるが、山では毎年のように行方不明者が出る。
遭難者、自ら命を絶ちに入山する者、態様は様々であるが、全てがすぐ命を失うわけではない。
彼らの中には、どういう訳か山に順応し、そのまま自然の中に溶け込み暮らしている者もおり、そうした自然へ帰化?した者を山人と称しているとのこと。
こうした山人は、人気を避け暮らすため、中々出会うことはない。
この山人にじ様が遭遇したときの話。

昭和50年代のことというから今から40年近く前の話。
その日、じ様は猟犬一匹を伴い、山へ鳥撃ちに出かけた。
中々獲物にありつけないまま山中で昼を迎えた頃だった。
山道をと歩いていると、連れてきた猟犬が「グルル・・・」と前方の林方向に唸り始めた。
それに合わせ、じ様も立ち止まり、即座に警戒態勢に入った。
犬が野生生物に反応したことで、鳥獣が突然飛び出してくる。
こうした経験はこれまでもあり、冷静に対応しないと相手が猪や熊であった際、思わぬ目に遭うこともある。
また、相手を確認しないまま弾を放ったところ、人間であったというのもよくある話であった。
じ様はいつでも銃を撃てるよう、また誤りがないよう、緊張状態で身構えていた。

 

多分、上がり人とかそんなのに近いかも。
まぁ、じ様のいうことだから話半分に聞いてくれたらいいと思う。
日本昔はなしみたいなもんで。

林の中からガサガサと音がした。
それが林の中を抜けて遠ざかる。
そして、その林から80m先ら辺りの山道にそいつは出てきた。
野犬だった。
熊ではなかったことにホッと気を抜いたじ様。
しかし、その先に更に6、7頭の野犬の群れが目に入った。
(これはいかん、襲われたら敵わんわ)
そう思い、道を引き返そうとした時、気付いた。

 

野犬の群れの中に人間がいた。
といっても、それは二足歩行という以外は、通常の人間でないことは明らかだ。
まずは全裸だ。
肌は黒人のように真っ黒、髪やヒゲと思われるものは伸び放題。
身長はあまり高くなく、かなり痩せていた。
猫背で、何か執拗に首を上下に振りながらこちらに向かって歩いて来る。
そいつが近づいてくるに連れ、異様な臭いが鼻についた。
そして目はギラギラとしており、獣そのもので、真っ直ぐにじ様を捉えている。
明らかに常人の目つきではない。

 

トイレに行けなくなることはないですよwww
オチみたいなのもほとんどないし。

じ様は(ホントにこんな奴がおったんだわ)と思い、正直戸惑ったという。
熊や猪が出てくれた方が、まだ対処の仕様があった。
襲ってくるのか?撃たにゃならんのか?人間か?どうしたらええんじゃ?
そんなことを考えていた。
先人から山人の存在は聞いていた。
が、それらは「何かを食べていた」とか「山の奥にはいって行くのを見た」等の、遠目に見た目撃談ばかり。
近づいてきたとか、襲われたという話は聞いたことがない。
戸惑いから恐怖に変わった。
山人はじ様の目の前、20メートルくらいに迫っていた。
「ふう、はぁ」
そんな息遣いも聞こえてきた。

 

じ様は耐えられず、その指は勝手に引き金を引いていた。
がーーーーーーん!!
山中にこだまする銃声。
その瞬間、山人は明らかに驚いたような感じで立ち止まった。
弾は外れたらしい。
山人は林に飛び込み、そのまま姿を消した。
野犬の群れもそれに続いたのか、付近にその姿はなかった。
じ様は逃げた。

集落にたどり着いた時の安堵感はこれまでになかったという。
じ様は集落の皆に「山人を見た!」と、この経緯を触れ回ったそうだ。
しかし、皆々の反応は存外薄く、何か馬鹿馬鹿しくなったとのこと。
それ以降、この話はしたことがなかったそうな。

 

 

二話 迷い家

 

『まよいが』と読む。
山中を歩いていると、明らかに人が住む場所ではないところに、突然家が現れる。
これを迷い家と言う。
家の中には人はおらず、その家の家具等を持ち出すと裕福になれるとか、逆に不幸に見舞われるとか。
じ様はこの迷い家に二度遭遇したことがあるという。

 

一度目は昭和40年ころというから、今から50年くらい前のこと。
じ様もまだ若く、ベテランの老猟師と一緒に山に入っていた。
深山を歩いていると、突然開けた土地が現れ、そこに家があった。
それは昔の豪農屋敷のような日本家屋だった。
母屋の他に離れもある。
その上、大きな蔵も見え、大きな屋敷であることがわかった。
白壁も汚れておらず、建てたばかりのような綺麗さだ。

 

どう考えても、深山の中腹にこんな立派な屋敷を建てる人間がいるわけがない。
じ様が不思議に思っていると、老猟師はそれを見て、「離れるぞ」一言だった。
老猟師曰く
「あれはなんだかわからん。が、幻に違いないことは確か。」
「幻にしても何にしても人の家から何かを持ち出してはいかん」
「それは泥棒だ。悪事をして幸せになれるわけなかろうが」
とのことだった。

 

二回目は昭和60年ころ、というから今から30年くらい前のこと。
今度はじ様が与一という仇名の若い猟師を連れ立って猟に出たときのことだった。
与一という仇名は那須与一のように一発必中から来ているのかと尋ねれば、じ様曰
く「目上でも誰でも挨拶は「よー」で遠慮がない、で与一になった」らしい。
与一はかなりずうずうしい性格で、誰にでも馴れ馴れしかったので、村の一部からは嫌われていたらしい。
しかし、じ様にとっては、その馴れ馴れしさが「なんとなくかわいい」存在だったらしく、この頃は何かと与一と連れ立って猟をしていたらしい。

 

与一とともに深く山に立ち入ると、ありえない場所に家を見た。
山の頂上付近である。
こんなところに家がある訳が無い。
しかも現代風(といっても、昭和60年代のデザイン)の一般住宅だった。
汚れたような感じがせず、新築のように見える。
じ様は(あ、これは迷い家だな)と思い、立ち去ろうとした。
与一は「じ様、何だ?こんなところに」と、じ様に尋ねてきた。
じ様は「これは迷い家だ」と、先老猟師の言った内容を伝えるも、与一は聞く耳を持たなかった。

 

面白そうだからちょっと家の中に入ってくる。
じ様の静止も聞かず、家の中に入っていった。
程なくして与一は「何もなかったわ、誰もいないしツマンネ」と言って戻ってきた。
その一週間後、与一は亡くなった。
急性心臓死だそうな。
じ様曰く、「与一はひょっとしたら迷い家から何か持ち出したかもしれん」と。

 

【迷い家】

迷い家(まよいが)とは、東北、関東地方に伝わる、訪れた者に富をもたらすとされる山中の幻の家、あるいはその家を訪れた者についての伝承の名である。

『遠野物語』によれば、迷い家とは訪れた者に富貴を授ける不思議な家であり、訪れた者はその家から何か物品を持ち出してよいことになっている。

wiki-迷い家-より引用

 

第三話 猿

 

これは昭和40年だか50年代だかの話。
当時、ピクニックやキャンプブームがあったそうだ。
山里であるじ様の町にもキャンプ場があり、それは賑わったそうな。
ある女子大生のグループがキャンプにやってきた。
その中のひとりの女の子とじ様はいい雰囲気になった。
そして山の中に女の子を誘い出したときのこと。

昼間というのに二人は発情状態。
山の中ということでかなり開放的になっていた。
さらにアルコールも入り、もう夢中であった。
山中に響く吐息と喘ぎ。
相当興奮したらしい。
女の子を木に押し付け、立ちバックの状態で事を進めていた。
その時、じ様の背後で何か見られている様な気配がした。
振り返ると多数の猿。
じっと二人の行為を凝視し、動かない。
気になるものであったが、性欲がそれに勝り、人しきり腰を振り、程なくじ様は果てた。

 

女「ふふ、見られちゃったね」
じ様「そうだな、えてが見ておったわな」
女「猿のこと?ひどいコトいうね、でも興奮しちゃった」
話を進めていくと何か話が合わない。
じ様は猿に行為を見られていたことを言ったつもりが、女の子は7人くらいの人に行為を見られていたという。
どうやら、女の子の直前、50mのあたりで7人くらいの人が行為を見ていたらしい。
それらの人々は動きもせず、じぃっと二人の行為を見ていた。
初めは驚いたが女の子も次第に見られながらの行為に没頭し、果てたころにはそれらもいなくなっていたという。

 

立ちバック状態だから、そんな人がいればじ様にもわかる。
50m先は川向こうだ、わからないハズはない。
女の子が見たのはおそらく『七人同行』というものだろうとじ様は言う。
山を徘徊する妖怪のようなもので、一人、新しく生きた者をその一団に取り込むと、その中の一人が開放される・・つまり成仏する・・そういうものらしい。
目的や理由はわからないが、それを繰り返し、山中を徘徊するもので、とにかくいいものではない。
じ様は気持ち悪さと恐ろしさを感じたものの、その後、三回戦もしたそうな。
女の子とはそれっきりだという。
気のせいかこの話をしている時が、一番じ様が生き生きしていた。

考えてみると、この女すげぇなww

 

【七人同行】

人間と同様の姿の7人組の亡霊で、常に一列に並んで歩いている。非業の死を遂げた者たちの霊ともいい、人間がこの七人同行に行き遭うと死んでしまう、投げつけられるなどといわれる。

通常は姿が見えることがないが、牛の股間から覗くと見えるという。ある人が牛を連れて歩いていたところ、四辻で急に牛が立ち止まったので、股間から覗いたところ七人同行がおり、難を逃れることができたという伝承もある。また、耳を動かすことができる人にも見えるともいう。

同様に四国の7人連れの霊として知られるものに、七人ミサキがある。
wiki-七人同行-より引用

関連:七人ミサキ

 

第四話 木霊

 

これは昭和60年代のこと。
じ様が山に入ると、
「おーい」
と聞こえた。
子供とも大人とも男とも女ともわからない声だ。
しかし誰かが助けを求めているのかもしれない。
じ様が
「おーい」
と返すと、
「おーい」
と聞こえる。

 

声の聞こえる方向に道を進めると更に
「おーい」
と大きく聞こえる。
じ様が
「おーい」
と返す。
それを繰り返し、いよいよ川に出た。
誰もいない。
川のせせらぎが一瞬止まったように感じた。
瞬間
「あははっははっははっはははははははあはは・・・」
と大きな笑い声。
男女の別もつかないが、とにかく山中に響くような大声だったという。
じ様は逃げた。
その声が何であるのか未だにわからない。

 

第五話 山の神

これは平成10年くらいの話というから、14年前の比較的新しい話だ。
猟師は猟の途中で、山菜が茂っているところや、よい釣り場を見つける時がある。
大概、こうした場所については誰にも教えない。
家族にすら。
自分しかしらない穴場とし、墓までもっていく。
じ様もこうした山菜取りの穴場を何箇所か見つけていた。
その一つに山菜取りにいったときのこと。

 

この時も猟犬一頭を伴っていた。
採取場所につき、黙々と山菜を摘んでいた。
程なくして背後に何か気配を感じる。
じ様が振り返るとそこに女が立っていた。

 

細い目の白い服装の女。
おそらく和装だと思うが、はっきり覚えていない。
じ様と目が合うと、にやぁ・・・と白い歯を覗かせ笑った。
目は異様に垂れ、真っ白な歯。
生きてきた中で、これほど不気味で不愉快な笑顔はなかったという。

 

そして同時に恐怖を感じた。
じ様はそのまま気を失った。
女を見た瞬間、犬も飛び上がって驚き、まるで漫画のようだったという。
気が付くと、夕暮れ。
じ様は急いで山を降りた。

 

じ様曰く
「あれが山の神かもしれん」
とのこと。
山の神は女であると言われる。
犬にも気配は感じさせなかったあたり、普通のものではない。
だからそういうものなのだろうと。

 

俺が「美人でしたか?」と尋ねると、
「ドリフの体操やるやつが女の格好した感じだった」
と答えたことから、どうやら割烹着を着た仲本工事みたいな風貌の女だったみたいだ。
とにかく、にやぁ・・っとした時の笑顔、真っ白い歯が未だに不気味で忘れられないとのことだった。

四角いコンクリートの塊にに顔がついている。
そんな印象だったらしい。
長く細い目と赤い唇。

 

□ □ □ □ □ □ □ □ □

 

じ様は言う。
「山は怖い。
しかし、慣れてくるとどうしてもその怖さを忘れるものだ。
山の生活を長年送っていたものでも、その怖さを忘れたがために命を失う者が何人もいる。
俺が山に関わり、今まで生きてこれたのは怖さを忘れなかったためだ。
俺が怖さを無くしてくるころに、こうした怪事が起こり、いろいろ気付かされる。
きっと、運がよかったんだな。」
と。

きれいなこと言うなぁ・・と思いつつ非常に興味深い話だった。
で、ちょっとみんなにも語って見たわけだが。
何か質問あれば出来る限り答えるよ。
自分の体験談じゃないけど。

やまのけに近い話はあったけど、胡散臭いので今回は抜いた。

山の神様は嫉妬深いとは聞くね。

 

第五話 七人同行

 

じ様が山の炭焼小屋にいった時のことだな。
昔は山に炭焼小屋があって、そこに何日も泊まり込んで炭を焼くそうな。
で、じ様の友人もそうした炭焼小屋を持っていた。

 

その炭焼きの友人のもとへ遊びにいったそうな。
まぁ、単に炭焼きで何日も山に籠っていると暇だから遊びに来いという。
一緒に酒でも飲むかという。
そんなあれなんだろう。

そんなこんなで、友人2、3人と連れ立って炭焼小屋を訪ねた。
そして夜も更け、宴会が始まったわけだ。
あっっという間のどんちゃん騒ぎも終わり、起きているのはじ様と炭焼きだけ。
ふと、じ様が窓をみると・・・異型のものが立っていた。

炭焼き友人は、そいつから目を逸らしながらじ様に話している。

 

酔いが回って妙な幻でも見てるんだろうと思ったらしい。
そいつはニヤニヤ笑いながら窓から炭焼小屋の中を覗いている。
無性に腹が立つにやけ顔だが、不気味さもあったらしい。

と、その時、炭焼きの友人がじ様に囁いた。

「あまり、目を合わせんな。つれていかれるぞ」

 

その言葉に、じ様も目を逸らす。

程なくしていなくなったかなぁ・・・と窓を見ると、そいつは消えていた。
どうやらそいつは山の妖怪みたいなもんで、あまり関わると連れて行かれるという。
どこに連れて行かれるのかわからないが。
殊更、山に女の人を入れるのを嫌うのは、こうしたもののけや神様に攫われることを防ぐためという。

まぁ、この話はじ様が七人同行と言ってるだけだからね。
ホントはなんなのかわからないと思う。
山でも海でも同じような伝承はあるんだね。

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