時空にまつわる不思議な体験『異界への扉』など短編全5話

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時空にまつわる不思議な体験『異界への扉』など短編全5話 不思議な話
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危うく正夢

大学卒業を控え、あとは卒業研究の単位のみで卒業ができる。
という状態(の予定だった)なので、研究も最低限のことをやって適当に卒業をしようと思っていた時期だった。
そんなとき、ふとこんな夢を見た…

その日は三月に行う大学の成績発表の日。
俺は卒業がほぼ確定したと思って大学に成績表を受け取りに行ったんだ。
だけどその成績表に書いてある判定には…「卒業」ではなく「留年」と書いてあった

何故!?どうしてなんだ!!?
そのとき俺は泣いていた、ここで卒業が出来なくて留年した場合、の都合上で俺がここでギリギリ卒業しなければやめなくてはいけない。
悔しくて悔しくて涙が出た。

ここで夢は終わる

 

起きたらもちろん一月中旬の当日の日付なわけで。
その日は一日中胸騒ぎがして研究も出来なかった。
あまりにも嫌な予感がしたんで、成績確認をしに行ったんだ。
そうしたら…

ビンゴ、夢の通りだった。

夢だと卒業研究の単位は取得できてるのに、後1単位足りなくて留年するという状態だったんだけど。

その成績表に綴られている卒業必要単位数は卒業研究の単位+後1単位。

つまりこのままテスト勉強もせず、卒業研究のみの活動をしていた場合だと夢と同じ「後1単位足りなくて留年」してしまうことになる。

目の前が真っ暗になったが、今できることを冷静に判断して5日後に行われる講義のテスト勉強をその日からはじめた。
出席もまばらだったので、取得率はほぼ0%に近い。
だけどこの講義以外の他の講義は、出席もしていなかったので取得率は完全0%。
つまりこの講義のテストに全てをかけなければ留年確定。

だがやらなきゃいけないと思って、急いで勉強を始めたおかげでなんとか講義の単位を無事取得して見事卒業。

今思うとあれは夢じゃなくて、あの成績発表の日から時を戻したのかもしれない。
かろうじて未来(留年確定の三月)の記憶の引継ぎに成功して自分を救うことが出来たんだろうか…?

 

 

危うい記憶

 

幼稚園に上がるころだから今から三十七~八年前の話だけど、当時朝起きて幼稚園に行く前に良く見ていた子供向けのテレビ番組があったんだよね。
私は、それを見終わってから隣のMO君と○○寺幼稚園に通ってた。

で、あるとき気付いたんですが、その番組を見終わってMO君の家に迎えに行くとまだその番組がやってることが多いんだね。MO君に行こうって言うと、○○が終わるまでマァッテ!とかいうんで、私は玄関先で待っていたんだけど、でもその番組のラストはもう知っていたの。だって、私は、自分の家で大好きだったその番組を見終わってから、家を出て来ていたから。

当時は全然不思議に思っていなかったし、中学校の頃は多分違うチャンネルで見てたんじゃない?とか思っていたけれど、大人になった今考えてみると民放の番組は普通7時なら7時に終わるわけで、放送時間が何分も次の時間帯にづれるってことはことは、そうそう有り得ないんだよね。
記憶ではかなりそういうことが在ったんだけど・・・

あれ、何だったんでしょうか?

 

 

改変

 

強い思いを抱くことで時が戻る(別の時間軸へ移動する)ということがありえるっていうのは判る気がします。

何か不可逆的な変化が近い過去に起きたとき、強く念じることで、自分と自分を含む環境がその不可逆的な変化が起きなかった時空にジャンプしているんじゃないかなかろうかと思うことがあったりします。

何と説明していいのか判らないけれども、私の場合、強い思いによって近い過去に生じた圧倒的な出来事をあたかもキャンセルするようにして別の出来事に摩り替えることが出来たことが何回かありました。
一度は私の仕事上のトラブルで、一度は私の娘の火傷で。

一見回復不能な圧倒的な出来事が生じた後でも、その出来事が本当はなかったのだという強い思いがあれば、いつの間にか似た様な別の出来事と摩り替わって消滅していくような現象も、実際には起こりえるのではないかと思います。人の強い思いは、将来だけではなく、実は過去も同時に変革しているのかも知れません。

上手く表現できませんが、この感覚を判ってもらえるでしょうか・・

 

傷跡が消滅してしまったわけでありませんし、本人も私達もそのときのことは良く覚えています。火傷を負ったというひとつの出来事から樹形図の様に生じてくる無限の事象のうち、自分の心は最悪のものを選ばずに済んでいるのではないかということです。人は可能性としての未来を選びつつ生きていると思うのですが、私はもしかするとこの時未来と同時に過去をも改変しているのではないかと感じたることがあります。

何を言っているのか判らないと思いますので、以下、そのときのことをちょっと書いてみますね。

下の娘が3歳の時のことです。ある日夕食のとき、家内が熱いお茶の入った耐熱ポットを娘の上に落としてしまったことがあるのです。

中身は電子レンジで暖めたばかりのハーブティで、まだ泡が出ていました。
娘は、そんな熱いお茶を突然被ってしまって大泣きし、家中が大騒ぎになりました。お茶を拭きながら見てみると、娘の額と左頬は既に真っ赤になっており、腕の一分も、服を脱がせると鎖骨から胸に掛けて、左腹、左の太ももも真っ赤になっていました。全身火傷です。 

 

急いで119番に電話して救急車を呼んだのですが、車が家に着くまでの20分くらいの間、私は娘をバスルームに連れて行き、ずっと娘にシャワーで冷たい水を掛けていました。というのは、実は私も中学生のとき右手に大きな火傷をしたことがあり、そのときの経験から、火傷した直後に水ぶくれになったところに冷たい水を掛け流しておくと、皮膚の損傷が進行せず軽く済むことをことを知っていたからです。

そのとき考えていたのは、これだけひどい状態だと跡が残らない訳はない。
でも、すぐに冷水の掛け流しを始めたのできっと軽く済む筈だということでした。既に左腹には大きな水ぶくれが出来て、皮が剥けたりしていましたが、努めて明るく考えつつ、大丈夫だよ、すぐ直るからね、と言いつつ娘に流水を掛けていました。

こうして救急車で病院に連れて行ったのですが、て医師に見てもらうと、左半身の広い範囲に火傷が出来ており、特に左の下腹部と太もものの火傷が酷い(3度)。この部分は恐らく跡が残る。他の部分については未だ何ともいえないとのことでした。

 

そのとき不思議だったのは、医師が額と左頬のことについては何も言わないんですね。でもう一度良く見てみると、もうすでにそこは火傷というよりも寧ろ日焼けみたいな、ちょっと赤みが差している様な状態に戻っていました。最初は一番酷い状態に見えた場所なのに。

その後一月程度の通院で娘の火傷は治りました。左腹にはいまだに5×5Cm位の引きつたような跡が残っていますが、顔とか腕には目立つ跡は残っていません。恐らく大きくなって水着を着ても問題ないと思います。

火傷を負ったという出来事の後には、無限の事象が可能性として連なっていくわけですが、今ここに居る私と娘が選んだ事象は、この結果だったのだと思います。そして、顔に負った火傷は結局傷が残るようなものではなかったという過去に属する様に見えることも、実はそのとき選び取られた事象の一部に含まれていたのではないかと感じるのです。

 

SFにパラレルワールドという概念がありますよね。未来に向けて今を基点に無限に事象が分かれていくというものが。
形は今を基点に樹形図みたいな形に描かれたりします。

私は同じ様に、今を基点に過去にむかって無限に枝分かれしていく樹形図もあるんじゃないかと思っているんです。
そして、可能性として存在している顕在化していない無限の過去と無限の未来が接触して顕在化しているポイントが、今ここ。

で、私達の意識が未来と過去を同時に選択しながら、現在を作り出しているという感じです。
だから、未来も過去も、それはいきなり無茶苦茶はなれた地点にジャンプしていく無理だと思いますが、ある程度は自分の意識の持っている好みや傾向でもって、どのようなものを選んでくるかが決まってるんじゃないかな、と。

 

 

異界への扉

 

建築法だか何だかで5階(6階かも)以上の建物にはエレベーターを設置しないといかんらしい。
だから俺が前住んでいた高速沿いのマンションにも、当然ながらエレベーターが一つあった。
六階に住んでいた俺が階段を使うことは全くといっていいほどなかった。まあ、多分誰もがそうだろう。
来る日も来る日もエレベーターのお世話になった。階段は下りるならともかく昇るのはなかなかにツライ。
だが、ツライのは分かっていても、今の俺は専ら階段しか使わない。

大学の講義がない平日の昼頃、俺はコンビニでメシを買ってこようと部屋を出た。
1階に下りるのには当然エレベーターを使う。エレベーターは最上階の8階に止まっていて、
今まさに誰かが乗るか降りるかしているところのようだった。

俺は階下のボタンを押し、エレベーターが下りてくるのを待った。
開いたエレベーターのドアの向こうには中年のおばさんが一人いた。ちょくちょく見かける人だったから、
多分8階の住人だったんだろう。軽く会釈してエレベーターに乗り込む。1階のボタンは既に押されている。

4階で一度エレベーターが止まり、運送屋の兄ちゃんが乗ってきた。3人とも仲良く目的の階は1階だ。
だが。

 

エレベーターは唐突に3階と2階の間で止まってしまう。一瞬軽いGが体を押さえつけてきた。
俺を含めた室内の3人は3人とも顔を見合わせた。

何だ。故障だろうか。停電、ではないようだ。エレベーター内の明かりには異常がない。

「どう……したんすかね」

俺がぼそりと呟く。おばさんも運送屋も首を傾げる。暫く待っても動く気配がない。
と、運送屋が真っ先に行動した。彼は内線ボタンを押した。応答がない。嘆息する運送屋。

「一体どうなってんでしょう」

運送屋の疑問は俺の疑問でもあった。

多分数字にしてみれば大した時間じゃなかった筈だ。
沈黙は3分にも満たないくらいだったろう。それでも漠然とした不安と焦りを掻き立てるには十分な時間だった。

何となくみんなそわそわし始めた頃、エレベーターが急に稼動を再開した。
おばさんが短くわっと声を上げる。俺も突然なんでちょっと驚いた。

しかし、だ。

押しているのは1階のボタンだけだというのに、どういうわけか下には向かわない。エレベーターは上に進行していた。
すぅっと4階を抜け、5階、6階……

7階で止まり、がらッとドアが開いた。俺は訝しげに開いたドアを見る。全く、何なんだ。一体なんだっていうんだこれは。

 

「なんか不安定みたいだから」

おばさんがエレベーターを降りながら言った。

「なんか不安定みたいだから、階段で降りる方がいいと思いますよ。また何が起こるか分からないし」
「そりゃそうですね」

と、運送屋もエレベーターを降りた。当然だ。全く持っておばさんの言うとおりだ。
今は運良く外へ出られる状態だが、次は缶詰にされるかもしれない。下手をすれば動作不良が原因で怪我をする可能性もある。
そんなのはごめんだ。
俺もこの信用できないエレベーターを使う気などはなく、二人と一緒に降りようと思っていた。

いや、待て。何かがおかしい気がする。

エレベーターの向こうに見える風景は、確かにマンションの七階のそれである。だが……

やけに暗い。電気が一つも点いていない。明かりがないのだ。通路の奥が視認できるかできないかというくらい暗い。
やはり停電か?そう思って振り返ってみると、エレベーターの中だけは場違いなように明かりが灯っている。

そうだ。動作に異常があるとはいえ、エレベーターは一応は稼動している。停電なわけはない。どうも、何か変だ。

違和感を抱きつつ、俺はふと七階から覗ける外の光景に目をやってみた。

なんだこれは。

 

空が赤い。朝焼けか、夕焼けか?だが今はそんな時刻ではない。太陽も雲も何もない空だった。
なんだかぞくりとするくらい鮮烈な赤。

今度は視線を地に下ろしてみる。真っ暗、いや、真っ黒だった。高速やビルの輪郭を示すシルエット。
それだけしか見えない。マンションと同じく一切明かりがない。

しかも。

普段は嫌というほど耳にする高速を通る車の走行音が全くしない。無音だ。何も聞こえない。
それに動くものが見当たらない。上手くいえないが、「生きている」匂いが眼前の風景から全くしなかった。
ただ空だけがやけに赤い。赤と黒の世界。

今一度振り返る。そんな中、やはりエレベーターだけは相変わらず明るく灯っていた。

わずかな時間考え込んでいたら、エレベーターのドアが閉まりそうになった。

待て。どうする。降りるべきか。それとも、留まるべきか。

今度は特に不審な動作もなく、エレベーターは大人しく1階まで直行した。

開いたドアの向こうは、いつもの1階だった。人が歩き、車が走る。生活の音。外は昼間。見慣れた日常。

安堵した。もう大丈夫だ。俺は直感的にそう思ってエレベーターを降りた。

 

気持ちを落ち着けた後、あの二人のことが気になった。俺は階段の前で二人が降りてくるのを待った。
しかし、待てども待てども誰も降りてこない。

15分ほど経っても誰も降りてこなかった。階段を下りる程度でここまで時間が掛かるのはおかしい。

俺はめちゃくちゃに怖くなった。外へ出た。何となくその場にいたくなかった。

その日以来、俺はエレベーターに乗りたくても乗れない体質になった。
今は別のマンションに引越し、昇降には何処に行っても階段を使っている。
階段なら「地続き」だからあっちの世界に行ってしまう心配はない。

だが、エレベーターは違う。あれは異界への扉なんだ。少なくとも俺はそう思っている。

もうエレベーターなんかには絶対に乗りたくない。

 

 

空白の三日間

 

俺の出身は宇都宮で、高校卒業して3年制の専門学校行くために上京した。
夏休みのある日、赤羽駅の近くの居酒屋で深夜まで飲んで、タクシー捕まえて家の近くの大きな公園まで乗せてもらった。
車内で運転手さんと話していたが、いつの間にか寝てしまい。起きて気が付いたらまだ車内。
車が停車してるんで、おかしいなと思ったら運転手も寝てる。慌てて起こして話しを聞いたら、いつの間にか寝ていたらしい。
しかも、現在地がわからないと言い出した。あたりは真っ暗だったので数十分寝ていただけかと思い、俺は時計を見たが止まってる。
料金メーターは表示されていない。無線も使えない。人気のない町の路肩だった。
あわててあちこち走り回って公衆電話を見つけて運転手が会社に電話したら、「何でお前が(タクシーに)乗ってるの?」と言われた。
コンビニを見つけて店員にここはどこかと聞くと栃木県の小山市だと言われた。
しかも日付は3日前。怖くなった俺は公衆電話から家に電話をかけると知らない女性の声がして、すぐに切れた。
運転手はとにかく会社に戻ると言い張り、高速に乗って赤羽まで戻ることになった。
赤羽駅の近くのタクシー会社に到着して、今まであったことを話したが、当然の如く信じてもらえない。
3時間ほど前に運転手が電話を掛けた事を話しても、電話は無かったそうだ。
疲れてるから2人ともソファで休めと言われ、そのまま一睡もしないうちに朝になり、朝のニュースを見ると日付が元通りになっていた。
家に電話を掛けても、普段どおり親が出た。
夢でも見たんだろうと言う事になったが、あれは絶対に夢じゃない。

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