【怖い話】長編 5話『呪殺』『彼女の家系』など|洒落にならない怖い話

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【怖い話】長編 5話『呪殺』『彼女の家系』など|洒落にならない怖い話 オカルト
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洒落怖などインターネット上で書き込みのあった怖い話の中から程よい長さで読みやすい怖い話を集めてまとめました。

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長編 怖い話集 全5話

 

『打ち付けられた人形』

中学二年の秋口、俺は勉強や部活そっちのけでオカルトにはまっていた。そのきっかけになったのが近所に住んでいた従姉妹で、この人と一緒にいたせいで何度かおかしな体験をした。これはその中のひとつ。

夏休みも終わりひと月が経とうとしている頃だった。俺は従姉妹に誘われ、家から一時間ほどの場所にあるケヤキの森に来ていた。
美人だが無口でオカルト好きな従姉妹は取っつきにくく、正直二人でいるのは苦手だったが、従姉妹が買ったバイクに乗せて貰えるので誘いにのった。

ケヤキの森は周辺では有名な心霊スポットで、曰わく今は使われていない製材所で夜毎手首を探す男が出る、曰わく森の中ほどに位置する沼には死体が幾つも沈んでいるといった調子で怪談にはことかかなかった。
そうでなくても木々が鬱蒼と茂り、昼でも薄暗い様子は一人きりで放り出されたような不気味なものがあった。

従姉妹が俺を誘ったのもオカルト要素たっぷりのスポットを探検したいがためだった。
森の内部に踏み入るにつれ道は狭く細くなり、やがて獣道同然の心許ないものになった。俺は既に腰が引けていたのだが、従姉妹が躊躇いなく進んでいくので仕方なく着いていった。

 

やや大きめの木の下にさしかかったとき、従姉妹が嬉しそうに何かを指差した。見上げるとその木に板が打ち付けてあった。いや、ただの板ではない。太い釘が大量に刺さっている。
近づいてよく見ると、板に細い木材を組み合わせたノッポな人形のようなものが付けられており、そこに五寸釘が大量に打ち込まれていた。俺は人形を見上げながらどこかしら奇妙な違和感を覚えていた。
藁人形ではなく木の人形、身を捩るような造形のそれは、全体は稚拙ながら関節まで再現され、それ故に禍禍しさを感じさせた。
俺は従姉妹に引き上げようと告げ、元来た道を戻り始めた。従姉妹は意外にも素直についてきたが、恐ろしいことを口にした。
「夜に来てみない? 丑の刻参りが見られるかも。釘、まだ新品だったし」

俺は強く反対したのだが従姉妹に押し切られ、結局その夜、家人が寝静まった夜半過ぎに家を抜け出した。
従姉妹と待ち合わせケヤキの森につく頃には一時を回っていた。入り口にバイクを隠し、懐中電灯の明かりを頼りに森の中へと足を進めた。
夜の森は静まり返り、昼間とは全く違う顔を見せていた。鈴虫やコオロギの声、俺や従姉妹が下生えを踏みしめる音。有機的な匂い。時おりがさっと何かが立てる音がして俺をびくつかせた。だが従姉妹は意に介する様子無く歩き、俺は呆れると同時に心強く思った。

昼間人形を見つけた木までたどり着き、離れた茂みに身を潜めることにした。従姉妹が時計を確認し、懐中電灯を消す。
「もう少しで二時。楽しみだね」
従姉妹が囁いた。
俺は内心楽しみじゃねえよと毒づきつつも頷いた。確かに高揚するものはあった。
動くものが無くなった森の静寂は耳を刺すようだった。ここに着くまでに多少汗をかいたのだが、それも今は引きやや肌寒いくらいだった。
時間は歩みを止めたかのように速度を落とした。先ほどの高揚はやがて緊張に姿を変えた。俺は暗闇の中に打ち付けられている人形を思い浮かべ、昼間の違和感は何だったのかと考えていた。
木……人形……幹。
あっ、俺は思わず声を上げた。従姉妹が振り返る気配。しっ、と小さな声が聞こえた。俺は違和感の正体に気づいた。

何で思い当たらなかったんだろう。あの人形を俺と従姉妹は見上げていた、勿論従姉妹は女、俺はまだ中学生だ、だがあれは二メートルよりかなり高い場所に打ち付けられていた。
大人でも五寸釘を打ち込むのには適切な高さがあるはずだ。自分の目の高さか、もう少し上くらい。だがあれは二メートル五十はあった。一体どんなやつならあんな場所にある人形に釘を打てるんだ。

 

俺が恐慌をきたし始めたとき、遠くから下生えを踏む音が聞こえてきた。虫の声が止んだ。微かな音を立て、ゆっくりとこちらに近づいてくる。従姉妹が隣で息を飲んだ。俺は自分の手足が冷たくなるような感覚に襲われた。
足音が近づく。引きずるような乾いた擦過音が混じる。もう目前から聞こえてくる。いくら夜の森でも、ぼんやりとくらいは見えるはずだ。しかし目の前には何も見えない。ただ足音だけが通過した。そして、立ち止まった。

木の下に着いたのだろうか。あたりは再び静まった。もう足音は聞こえない。
「あ、ヤバい」従姉妹が小さく呻いた。「逃げるよ」そう言って俺の腕を掴み走り出す。それで一気にパニックが襲った。必死に走った。よく転ばなかったものだと思う。とにかく、何かが、得体の知れない何かが追ってくるのを想像して全力で駆けた。
バイクの隠し場所にたどり着くと、従姉妹を急かしてバイクの後ろに飛び乗った。その間片時も背後の森から目を離さなかった。エンジンがかかり、走り出すと安堵感が全身を包んだ。
最後に振り返ったとき、森の入り口に何か白いものが見えたような気がしたがよく分からなかった。

 

後日、従姉妹にあの夜見たものを聞いてみた。俺はかなり後を引きずっていたのだが、従姉妹は全く堪えていないようだった。
「あれはね、生きてるものではないね。肉体が活動しているかって意味で言えばってことよ」
「何であんな高い場所に打ちつけてあったんだよ」
「ああいうのは感情の強さによって、形を変えるの」
「死んでからもあそこに通ってたってこと?」
「通ってたってより、あの人形そのものになっていたんじゃないかなあ。あの人形、やたらノッポだったでしょ」
そして従姉妹はにやりと笑ってつけたした。
つまり、あの人形をあんたの家に置いておけば、毎晩あれがくるんだよ。

しばらくの間、俺はそれまでとはうって変わって家中を掃除するようになった。

 

『呪殺』

2ヶ月前、勤めていた零細企業が倒産し、おかげで俺は
無職プーの身になっちまった。俺にはロクな学歴がなく、
マジで再就職がヤバい。職安で紹介される会社に応募しても、
ほとんど相手にしてもらえない。おまけに金もないので、
ボロいアパートに独りで引きこもりだ。
家族がないのが、せめてもの救いだ。

 

で、引きこもってみてわかったんだけど、俺の隣室のやつも
引きこもりだったんだ。昼間、ときどき青白い細身の青年と
廊下ですれ違うんだけど、これが隣室のやつだった。
だけど、こっちから挨拶しても、何か口ごもりながら頷く
ぐらいで、どうやら本格的な引きこもりみたいだった。

で、困ったことに、こいつの部屋から、毎日きまって午前10時
と午後3時に、奇声というか呪術の儀式みたいな不気味な声が
聞こえてくるんだ。おまけに、猫かなにか動物の「ギャア」って
悲鳴が聞こえたり、小さな鐘を叩くような金属音が、チーン、
チーン、と聞こえてきたりする。
このあいだ、TVのニュースで、俺のアパートの近所で猫の頭が
大量にU字溝に捨てられていた、と報道されたんだけど、俺は
ぜったい隣のヤツの仕業だと思ってる。

 

俺はというと、外出する金はないし、暇だけはウンザリする
ほどあるので、おきまりの2ちゃんねらー街道一直線だ。
気味悪い隣の「儀式」のことも、ある夜、オカルト板の某スレに
書き込んで聞いてみた。そしたら、それは死霊を呼び出すための
●●●という呪法の準備儀式だと教えてくれるやつがいた。
何でも、それは死霊を呼び出して、呪殺のための使い魔として
使役する呪法だそうだ。
俺は面白半分で、いろいろ細かいことを聞いてみた。

ところが、そんなレスのやり取りの間に、もう一人変なやつが
割り込んできた。
そいつもその呪法にやたら詳しくて、先に俺にいろいろ教えて
くれたやつの説明に、いちいち細かいイチャモンをつけ始めた。

「そこはそんなやり方じゃねえぞ」
「それは最強の方法じゃない。最強の方法は別にある」

挙句の果てに、

「オマエ、実際にこの呪法を使ったことないのバレバレ」
「しょせん本で読んだだけの知識だな(w」

 

俺はそのカンに触る挑発的なレスにちょっと切れて、

「本気で実践してるオマエは基地外」
「オマエは引きこもりで呪術ヲタの変態ニート」

などなど書き込んでやった。
そしたら、そいつも反論してきて

「間違った内容を正す事のどこが悪い」
「その呪法のバリエーションのなかで一番強力なのは、自殺して
自分の霊で直接相手を襲うやり方」

などなどと。俺は更にムカついて

「だったらテメーで芯で俺を呪殺してみろ!不細工キモヲタ野郎」

と罵倒してやった。

 

そんなふうにして応酬はどんどんエスカレートし、ムチャクチャな
バトルになっていった。最後にそいつは、

「最強の呪法でオマエを殺す!俺の死霊で必ずオマエを殺してやる」

などと書き込んできた。で、俺が

「ヨーシ!氏んでくれ、絶対になっ(w」

と返したら、もうそれからレスがなかった。
ザマーみろ、逃亡しやがった。

 

もっともバトルに勝利したとはいえ、俺はおもいきり不愉快だった。
おまけに隣の部屋からは、また不気味な呻き声みたいなのが聞こえ
始めて、もう気分は最悪だった。
壁を蹴とばしてやろうかと思ったが、我慢してその日は寝た。

翌日、下の階の住人が、天上から血がたれてきたって騒いで、
警察は来るわ救急車はくるわの大騒ぎになった。俺の隣室の男が、
手首やら首やらあちこち切り刻み、おまけに自分の舌まで噛み
切って死んでたそうだ。
俺も警官から事情聴取を受けたので、昨日の夜うめき声みたいな
ものが聞こえた事を話した。どうもそのときに手首とか切ってた
らしい。

 

で、その夜は隣の自殺の事を考えちまって、正直、電気消して寝る
のが怖かったんだけど、いつまでも起きてるわけにもいかないので、
むりやり蛍光灯の紐引っ張って寝たよ。
でも、やっぱり怖くて、なかなか寝つけなかったんだ。そうしたら、
どこからかブツブツいう声が聞こえてきて、おまけにチーン、チーン
という、例の奇妙なメロディの鐘の音がかすかに聞こえてきた。
冗談じゃねーよ。飛び起きて蛍光灯をつけようとして、闇の中を
ぶら下がっている紐を手探りしたら、何かを掴んだ。髪の毛みたいだ。
えっ?とおもって両手を伸ばして手探りすると、闇のなかにぶら下がって
いる逆さまの人間の頭みたいなものを両手で掴んじまった。
ええっ?おれが声をあげそうになった瞬間、だれかの手が、俺の喉首を
もの凄い力でガッと絞めてきた。その手はすさまじい力で俺の喉首を
絞め上げてくる。俺は絶叫しながら必死にもがいたが、鼻血がでて
くるのを感じ、意識が遠くなりかけた。

そのとき、部屋のドアをドンドン叩く音が聞こえた。大家がおれの
名前を呼んでいる。それだけ聞いて、おれは失神した。

 

気がついたら、部屋の蛍光灯がついていて、大家が心配そうに俺を
見つめていた。おれは布団の上に、黄色い小便もらしてひっくり
返っていた。自殺騒ぎで住人の様子が気になった大家が、夜中に
アパートを見回ってたところ、俺の部屋から呻き声が聞こえたので、
ドアを叩き、最後はマスター鍵で飛び込んできたとの事だった。

こんな騒ぎが続いたので、住人はみんな引っ越してしまった。
で、呪殺のご指名をくらった一番恐い立場のおれだけが、無人に
なったこのボロアパートに今も独りで住み続けている。
なにしろ無職プーなもんで、引越し資金がないんだよ。
ビンボは嫌だよな。早く俺を就職させてくれ。

『思い出したくないトラウマ』

とても怖いトラウマ体験です。

20代の頃会社勤めの私には
出会いがまったくなく彼女がいませんでした。
そんな私に会社の先輩から女の子を
紹介してもらいました。
まあ紹介というかメアドを教えてもらったんですが
最初はお互い緊張して会話もぜんぜん。
成り立っていなかったんですが
しだいに仲良くなっていき
会おうということになりました。

実際会うとすごくかわいくてやさしそうな子でした。
彼女は調理師の仕事してるらしく
デート時はいつもおいしい弁当と作ってくれました。
このまま結婚して幸せな家庭を作るんだなって思ってました 。

 

しかし、付き合って三ヶ月後のデートの時
公園で会話を楽しんでいたとき
野良犬がこっちに向かってきたので
彼女が「おいでおいで」と
手を出したところその野良犬は彼女の手に噛み付きました。
その後信じられない光景を目にしました。
キレた彼女はものすごい勢いで野良犬を蹴り続けました。
いつもとは想像できないくらい怖い顔で。
犬が弱まってもまだ蹴り続けたので
さすがに彼女を止めました。
止めたあと彼女は私に対して
「こんな馬鹿犬殺しとけばいいのに」
と言いました。さすがに私もその時はひきました。
しかし、今日のことは忘れることにしました。
その事件あとすぐ会社から呼び出しの電話があったので
「ごめん呼び出したあったからちょっと会社に行かなければ
いかないんだけど・・・」というの彼女は笑顔で
「そっか分かった!頑張って行ってきて、わんちゃんは
やりすぎたね。ごめんね変なとこを見せてあとで
動物病院に運んでおくから!^^」
そういってくれたので私は会社に安心して向かいました。

そして次のデートではいつものやさしくてかわいい彼女で
いつもみたいにおいしい弁当を作ってきてくれました。
自分もこの前のことは完全になかったとこにしようと思いました。
それからいつもと同じ楽しい彼女との日々が続き
俺のアパートにも毎日来るようになりました 。

 

ある日のこと
仕事帰りに私のアパート来た彼女
いつもと様子がおかしく怖い顔
「同じ現場で働く糞ババー超むかつくわー」
と職場の愚痴を俺に話し出しました。
同じ職場で働く50代のパートの女の人で
彼女に細かい注意をよくするらしく
それに対して彼女は相当むかついている様子でした 。

「まあ、どこでも同じ気にすることないさ!」
彼女を励まし、彼女も落ち着きを取り戻しましたが
それから毎日そのことを愚痴るようになりました。
それから一ヶ月ぐらい過ぎたとき
毎日来てた彼女が急に来なくなりました。
携帯にTELやメール送ってもまったく返事が来なく
彼女のことを心配してたんですが・・・
4日ぐらい?過ぎてようやく彼女から連絡ありました。
「忙しくて連絡できなくてごめんね」と
言ってくれてお詫びに今日夕食を彼女のアパートで作ってくれるとの事。
仕事終わったあと彼女のアパートに向かいました。
おいしいそうな肉料理が用意されており
今まで食べたことない食感でおいしく全部食べました。

 

次の日に登校するついでに柳を調べると穴から何かが出ていました。
それは白い布でした、だらりと穴から垂れた布はぼろく汚れて風に吹かれてました。
僕はその布を引っ張ろうと奮闘しましたが学校に遅刻する為その場は諦めました。
授業中はその柳も布もすっかりと忘れてしまい遊びに没頭しました。
帰りも暗くなって怖くなり好きなアニメも見たかったので急いで帰りました。
その帰ってるときも誰かに追いかけられているような錯覚に襲われました 。

 

デザート用意するから待っててと言ったので
その間トイレを借りようと思いトイレに向かうと
トイレの近くにある風呂場からすごい悪臭がするのに
気づきました。興味本位で風呂場を覗くと黒いビニール袋が
あり、そこから臭おうことに気づきました。
何かとてつもなく嫌な予感はしたんですが
臭いの原因を知りたく開けてみると
吐き気の出るような悪臭とともに骨とか、どこかの内臓やらが
入ってました。
そしてそれの正体がすぐ人間のものだと気づきました。
人間の手が入ってたんです。
あまりに恐ろしさに腰を下ろしたと同時に失禁して
しまいました。

 

少し放心状態が続いたあとここから逃げないとやばいと
思いました。彼女に見つからないように玄関まで着いたとき
急に背中にすごい痛みが・・・
振り返ると彼女がものすごい怖い顔で包丁を片手に睨んでました。
背中を切られたことにすぐ気づきました。
彼女は基地外みたいな奇声を上げたあと
「あなたには知られたくなかったわ」
と右足を包丁で刺しました。
あまりに激痛で大声を上げました。
私は彼女にあの死体のことを恐る恐る聞くと
「あの糞ババーの死体よ!そしてさっき食べた肉は
あの糞ババーの肉よ!ギャハハハハハ」と
もうそこにいるのは俺の知るやさしい彼女ではなく
鬼のようなモンスターでした。
「知られた以上あなたは私が食べてあげる
そうそう!死ぬ前にいいとこ教えてあげる!
この前私を噛んだ馬鹿犬いたでしょ?
あれは私が料理してあなたの弁当の中にいれてあげたわ
ぎゃはははははははは」

 

結構出血したせいか意識がなくなってきました。
そのとき私は死を覚悟しました。
俺は彼女にこのまま食われると思うと涙も出ました。

次に気づいた時は病院のベットの上でした。
どうやら私は助かったことを実感しました。
あとで警察の人に聞いた話では
私が意識がなくなったあとすぐ警察がかけつけて
彼女は殺人罪で逮捕されました。
隣の人がことの重大に気づき警察に通報してくれたみたいです。

そのときの怪我で右足は完全に動かせなくなりました。
なぜか、ニュースにならなかったみたいです
人肉事件だからか?むしろ私にはいいですけど
思い出したくない話ですから
今でも肉食べるのに抵抗あります。

私が今一番怖いのは彼女が戻ってくるとこです
私は彼女のエサですから・・・・

『ウサギの墓』

小学校の頃の話。
自分は飼育委員をしていた。
学校には鶏とウサギと亀がいて、それらのえさやりや小屋の掃除、
死体の始末をするのが仕事だった。

繁殖期になるとウサギはたくさん子供を生み、九割くらいは死んだ。
それを腐る前に、スコップや割り箸で小屋から出して埋めていた。
えさやりや掃除は先生の見張りがあるからみんなちゃんとやるのだけど、
死体の始末はなぜかほとんど自分がやっていた。
子ウサギの目にたかるアリとかみたら、そりゃ誰も触りたくないだろう、と思う。

 

繁殖期も過ぎたある日、クラスの女の子の様子がおかしくなった。
その子とはそんなに仲良くなくて、人だかりができてから様子がおかしいことに気づいた。
人の肩越しに覗き込んで、驚いた。
人だかりの真ん中にいたのは、でっかいウサギだった。
と思ったら、ウサギはいなくなっていて、ウサギがいた場所に女の子がうずくまっていた。
次の授業は体育の時間で、着替えなくちゃいけなかったんだけど、声をかけても反応しない。
おなか痛いの?とか心配されてたけど、体調不良じゃないんだろうな、と思った。
先生が来て、その子は保健室に連れて行かれた。

 

放課後、ウサギを埋めていた場所を調べてみた。
掘り返されていて、「ウサギのお墓」と書いた板や握りこぶし大の墓石、墓の目印の枝(死体の数が多すぎて板が足りなかった)、
供え物としておいた枯れたクローバーとシロツメクサの花がばらばらに散らばっていた。
たまに野犬が入ってくるので、それの仕業かと思ったが、掘り返された穴の側面は平らだった。
たぶん小型のスコップを使ったりしないと、こういうふうにはならない、と思った。

 

おりしもクラスでは「こっくりさん」がはやっていた。やったことはなかったが。
その頃から自分はオカルト好きで、こっくりさんの正体が狐や狸といった動物霊だといわれていることは知っていた。
なんか関係あんのかな、と墓を直しながら考えていると、女の子が二人歩いてきた。

同じクラスの、体育の時間の前に様子がおかしくなった子と仲のいい子たちだった。
ウサギの墓は人のこないところに作っていたから(踏まれたらかわいそうだと思って)、なんとなく予想はついた。
その二人を仮に永田さんと関原さんとする。
永田「なにしてんのっ?!」
自分「ウサギのお墓なおしてる」
永田「なんでっ?! くぁせふじこ」
自分「お墓、掘り返したん、永田さん?」
永田「関係ないやんそんなん!」
関原「うん、そう」
永田「せっちゃん?!?!」
関原「お墓の前で嘘ついたらあかんと思う」

永田さんはそんなこと言ったって、とかこいつ関係ない、とか言ってたけど、
関原さんがじっと黙っているので静かになった。
永田さんの足元には何匹か子ウサギがいた。
瞬きするたびにあちこち移動しているので、幽霊みたいなものだとわかった。
丸まっててかわいかったけど、何となく戸惑ってるようだった。寝てるところを起されたような。

 

自分「こっくりさんで使ったん?」
永田「うるさいわ! あんたには関係ないっ!」
関原「うん。こっくりさん、紙に鳥居さん描くやろ? あそこに骨置いてやってん」
自分「ふうん。うまくいったん?」
関原「きてくれたけど、帰ってくれへんかった。おかえりくださいって言ったけど、いいえって」
自分「どうやって終ったん?」
関原「そのまま。いいえってなってたけど、みかちゃんピアノがあるって言って、(十円玉から)指はなしちゃった」

みかちゃんとはその日様子がおかしくなった子のことだ。

自分「永田さん、なんでそんなことしたん?」
永田「あたしのせいなん?!」
自分「なにが」
永田「みかちゃんおかしくなったん! せっちゃんはあたしがもってきた骨が悪いって!」
自分「そうなん?」
関原「なんか、みかちゃん、ウサギに見えたから……」
永田「意味わからへんっ!」
自分「ああ……あれ関原さんにも見えてたんや。濃い灰色の」
関原「うん、それ。ほかにも見た人いたで。うち一人やったら、見間違いかなって思うけど……」

永田さん涙目。

 

関原「どうしたらいいんかな」
自分「とりあえず骨返してもらえへん? なんかかわいそうやし」
関原「うん。なっちゃん」

永田さんは半泣きでランドセルからスーパーのビニール袋を出した。
ウサギのものらしき頭蓋骨が入っていた。

自分「たぶん、板の下を掘ったからこんなきれいな骨なんやろうけど(板の下のが一番古かった)、
新しいお墓掘ってたら虫とかいっぱい出てきたと思うで。もうやめときや」
関原「虫出て来ぃひんくても、お墓は掘ったらあかんやろ」
自分「それはそうやけど」

そうでも言わないと永田さん言うこと聞きそうになかったし。
ともかく、骨を受け取り、もどして土をかぶせた。

関原「○○(自分)さん、ごめんな」
永田「ごめんなさい」
自分「うちは別に……。ウサギに謝った方がいいんちゃうかな」

三人で手を合わせた。永田さんは泣いていた。
自分がたちあがると、二人ともそれにならった。関原さんは不安そうな顔をしていた。

関原「みかちゃん、大丈夫かな」
自分「大丈夫やといいなあ」
関原「ウサギ、こんで帰ってくれるかな。お線香とかあげたほうがいい?」
自分「したいならやったほうがいいんちゃう?」
関原「なっちゃん家近いし、家からお線香とってきてくれへん?」
永田「分かった……」
自分「うち、花摘んでくるわ」
関原「じゃあうち、お水汲んでくる」

 

永田さんは校門のほうへ、
関原さんは歯磨き用のコップを給食袋からとりだすと、校舎の方へ走っていった。
永田さんの周りにいた子ウサギは、何匹か彼女についていき、何匹かはいつの間にか消えていた。
自分は体育館裏に行き、ねじれ草や露草を集めた。

墓のところに戻ってくると、関原さんは水を備えていた。
自分「関原さん。あのな、永田さんの足元……」
関原「うん、あれでうち、あの骨がウサギのやったんやってわかってん。
なっちゃんは狐の骨、っていってたけど」

 

永田さんが子ウサギを連れて戻ってきた。本人につれている自覚はないみたいだったが。
関原さんは永田さんからライターと線香を受け取り、火をつけた。
振って火を消すと、煙が上がる。
関原さんは永田さんに淡々と説明した。
墓石がウサギを返す場所につながっている扉であること、
水は、それを霊にわかるように示し入りやすくしている役割であること、
線香の煙は霊を導くための道で、同時に自分たちを霊と分けてくれるものであること、
花は慰めのためのはなむけであること。
もっと簡単な表現だったが。

三人でもう一度手を合わせた。

 

目を開けると、子ウサギはいなくなっていた。そのときは。

翌日、みかちゃんは無事に登校してきた。ウサギも見えなかった。
それから関原さんとはなんとなく仲良くなった。

あのあともたまに永田さんのそばにウサギを見ることがあったのだが、
結局言わずじまいだった。

『彼女の家系』

大学の同級生に、Aさんという女生徒がいる。今年の四月にゼミで知り合った。
自分は化学系の学科で実験とかするんだけど、実験中も絶対に数珠?みたいなブレスレットを外さない。
それも、変な民族系の店とかで売ってる感じじゃなくて、結構良いものっぽい感じ。
一度「それっておまじない?」って聞いたら、至極真面目な顔で「お守り。お母さんに貰った」って言われた。

 

自分はそのゼミの男子で唯一の喫煙者で、Aさんは女子の中でやっぱり唯一の喫煙者。
だから自然に喫煙所で一緒になることが多くて、そのうち色々話したりするようになって親しくなった。
そして自分がオカルト好きなことを話したら、ポツポツと色々な話をしてくれるようになった。
一個一個の話をすると長くなるんだけど、特殊な家系の生まれらしいんだ。シャーマンじゃないけど、呪術系の。
「信じなくても別にいい」って言われたけど、見栄張って霊感少女気取るタイプの人じゃないから信じてた。

 

そして今年の夏に、ゼミの中の何人かで地元の幽霊スポットに行くことにしたんだ。真夜中に肝試し感覚で。
実はその前にあった飲み会の時に、チラッとゼミの中のお調子者なBに、Aさんって霊感あるらしいよって話をしちゃったんだ。
そしたらBがAさんを呼ぼう呼ぼう!ってなって、Aさんを誘ったんだけど当然「嫌だ」って言われた。
でもBは普段物静かで割と皆の輪から外れてるAさんを弄りたかったらしくて、半ば無理矢理同行させたんだ。
自分は知らなかったんだけど、Bは肝試しの日程をずらしてAさんには「ゼミの皆でレイトショー見に行こう」って誘って。
Aさんは映画好きだったのもあって騙されて、そのまま車に乗せて連れて来ちゃったらしい。
車二台に分けて行ったから、目的地で「あれ?何で来てるんだ?」って感じだった。

 

噂の幽霊スポットは、ありきたりなんだけど閉鎖されたトンネル+その傍の藪の中にあるお堂って奴。
で、Aさんは「車から出たくない」って言ってたんだけどBが「まあまあ」みたいな感じで無理矢理引っ張り出して。
流石に「やめようよ」って言ったんだけど、他の皆はAさんの話を自分みたいに聞いてなくて、「空気嫁」って雰囲気になってて。
そしたらAさんが「いいよ、行ってやる」って半ば逆切れみたいになって、結局付いて来てくれた。

 

メインはお堂の探索で、お堂の中にはご神体が収められてるって言われてた(刀だっていう噂だった)
で、それを確かめようってBがお堂を空けようとして、Aさんが「絶対に駄目だ」って言って。
でもその頃は大分Bもムキになってて、「いい加減にしろ、エセ霊能者のくせに!」とか何とか罵って開けちゃった。
中には何か長い棒?見たいなのが入ってた。自分は怖かったからちょっとしか見てない。多分、噂の刀だったんだと思う。
で、それをBが引っ張り出してきて「なんだよ、何にもないじゃん」と。

そうしたら、何か空気が変わった。夏なのに寒くなってきて、耳鳴りみたいなのがしてきた。
やばいから逃げよう、って言ったんだけどBが動かない。何か様子が変だった。
自分が「逃げよう」って近付いたら、いきなり手に持ってたその棒っていうか長いもので殴りかかってきた。
うわ!って思ったらAさんがパッと出てきて、Bの腕を掴んでた。
そして何かブツブツ言ってた。よく聞こえなかったんだけど「ゴンゲンノ」とか「ヤチダノ」とかそんな感じ。
そうこうしてたらBがくにゃってなって、AさんがパシーンとBの頬を引っぱたいた。
他の人にBを担がせて、Aさんはお堂にBが持ち出したものをしまって扉を閉めて、何かブツブツまた言ってた。

 

帰りはAさんがBのいる車に乗りたくないって言って、自分達の車に乗ってきた。
(行きは映画って騙されてたから、Bと一緒に乗ってきた)
「さっきのって、あれ?」って自分が聞いたら、「分かんない。でも当てられたんだと思う」って一言。
凄いねって言ったら、「凄くない、前にも言ったけど私は拝み屋じゃないから、祓いとか出来ない」って言われた。
そこで気付いたんだけど、Aさんがいつも腕にしてた数珠がなくなってた。
それを指摘したら、他人事みたいに「さっきの騒動で切れたんだと思う」って言って笑ってた。
「大丈夫なの?」って聞いたら、「分からない」って。それ以上自分は何も言えなかった。

 

その数珠は前に、Aさんのお母さんがAさんにくれた大切なものだと聞いてた。
何かよく分からないけど、Aさんの家っていうのはある家の云わば「影」なんだそうだ。
で、そこで予知とか呪いとかを本家のために請け負う家系だったらしい。
今は流石にやってないらしいけど、Aさんにもその家の代々の人達にもそういう力があるんだそうで。
現に自分も一回、Aさんに占ってもらったことがあったけど、何にも言ってないのに色々なこと言い当てられてビビッた。

 

そして夏休み明けから、実は彼女が大学に来ない。噂では、体を壊して実家で療養してるって話。
教授は「病気」だって言ってるけど、自分は彼女の極親しい人から「自殺未遂して、少しおかしくなった」って聞いた。
その友人は実家まで会いに行ったらしいんだけど、両親に「母方の家に預けてる」と言われて追い返されたらしい。
自分が聞いてた彼女の家系の話ってのが、母方の家にまつわる話だったから、夏の事件が関係してるんじゃないかと思ってる。

信じなくてもいいけど(彼女の口癖だった)、実話。

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