ユダヤの悪魔
ユダヤ伝承の悪魔は、人間の堕落・病・誘惑を象徴する存在が多く、堕天使グリゴリやリリスなど、人間との関わりが深い存在が目立つのが特徴です。
アザゼル(アザエル)
ユダヤ神話に登場する堕天使。人間に武器や化粧などさまざまな禁じられた技を教え、堕落させたとされる。
グリゴリ(エグリゴリ)
旧約聖書偽典『エノク書』に登場する堕天使たちの一団。天から地上に降り、人間の娘たちと交わったことで、神の怒りを買ったとされる。
アスベエル(Asb’el)
グリゴリの一員とされる堕天使。その名は「神を放棄した者」を意味し、神から離反した存在として描かれる。
アルマロス
グリゴリの一人で、人間に魔法や妖術を打ち消す知識を教えたとされる堕天使。
イェクン(Yeqon)
グリゴリの長のひとり。天使たちに悪知恵を授け、人間の娘への欲望によって身を滅ぼすように誘惑したとされる。
カスピエル(カフシエル)
「南方を支配する偉大な皇帝」とされ、200人の大公爵と400人の小公爵を従える強大な存在。
バラキエル(バラクエル)
人間に占星術を教えたとされる堕天使。堕天使たちの列の中で、9番目に挙げられている。
サマエル
サタン(ルシファー)に匹敵するほどの力を持つ魔王。十二の翼を持っていたといわれ、ルシファーと同一視されることもある。
シェディム(Shedim)
ユダヤの伝承に現れる霊的存在。必ずしも悪意を持つわけではなく、人間にとって役に立つこともあると考えられている。
ジズ
巨大な鳥の姿をした存在。大地に立つと頭は天に届き、翼を広げると太陽が隠れてしまうほどの大きさを持つという。
タンニーン
旧約聖書に登場する竜または大蛇。混沌や脅威の象徴として描かれることが多い。
マスティマ(マステマ、マンセマット)
神に仕えつつ、人間を害し、誘惑する役目を持つ存在。神への忠誠心を試すために、人に試練を与える悪魔とされる。
リリン(リリム)
悪魔リリスがサタンとの間にもうけた子どもたちの総称。新生児を襲ったり、眠っている男性を誘惑し、精気を奪うといわれる。
リリス
男児を害すると信じられてきた女性の悪魔。アダムの最初の妻であったという説もあり、独立心と反抗心の象徴としても語られる。
レヴィアタン(レビヤタン、リバイアサン)
大嘘つきとして知られ、人に取りついて操る悪魔的存在。特に女性にとりつくとされ、その支配から逃れるのは非常に難しいといわれる。
イスラムの悪魔
イスラムにおける悪魔は、堕天した精霊や神への不服従によって堕とされた存在が中心。強大な力を持つ一方で、神の意志によって役割が与えられている側面もあります。
イブリース
イスラム教で語られる悪魔の王。アダムにひざまずくことを拒んだために天から追放された存在で、堕天使的な立場にある。
イフリート
イスラム教における強力な炎の精霊・堕天使。獰猛で短気な性格を持ち、魔術や変身能力など人間にはない多くの力を操るとされる。
エジプト神話の悪魔
エジプトの悪魔的存在は、冥界の審判や混沌の象徴として描かれることが多く、魂の行方や宇宙の秩序に深く関わっています。
アメミット(アメミト、アミマッド、アムムト、アンムト、アーマーン)
古代エジプトに伝わる幻獣で、その名は「貪り食う者」を意味する。冥界の審判でマアトの羽より重い心臓を持つ者の魂を食らい、二度と転生できないようにするとされる。 頭はワニ、たてがみと上半身はライオン、下半身はカバという、三つの猛獣を合わせた姿をしている。
アペプ(アーペプ、アアペプ、アペピ、アピペ、アポペ、アポピス)
闇と混沌を象徴する大蛇の怪物。太陽神ラーの最大の敵とされ、太陽の船を襲って世界に闇をもたらそうとする存在として恐れられた。
ブードゥーの悪魔
ブードゥー教の悪魔は、生と死の境界を司る霊的存在で、人間に近い姿や個性的なキャラクター性を持つのが特徴です。
ゲーデ
ハイチのヴードゥー教における死神的存在。破れた黒いシルクハットと燕尾服を着た男の姿で、死者が神々の住むギネーへ向かう途中にある「永遠の交差点」に立っているとされる。 十字架男爵(Baron La Croix)、墓地男爵(Baron Cimetiere)など、複数の別名を持つ。
北欧神話の悪魔
北欧の怪物たちは、自然現象や死の世界と結びつくことが多く、巨人族や獣の姿をした存在が多いのが大きな特徴です。
オーガ(オーグル、オグル、オグ)
トロールと関係づけられる人食いの巨人。凶暴で残忍な性格を持ち、人の生肉を食べるとされる一方、臆病で引っ込み思案な側面もある。
フレースヴェルグ
名は「死体を飲み込む者」を意味し、巨大な鷲の姿をした巨人。彼の翼が風を起こし、世界に吹く風の源であると語られる。
ギリシア神話の悪魔
ギリシアの怪物は、神々の物語に深く関わる「試練の象徴」として描かれることが多く、人間や英雄の前に立ちはだかる強大な存在として知られています。
エウリュアレー
ゴルゴーン三姉妹の一人。不死身の怪物で、蛇の髪と黄金の翼を持つ。強烈な絶叫で敵を打ち倒す力がある。
エキドナ
上半身は美女、下半身は大蛇で、背中には翼を持つ怪物。多くの怪物たちの母ともされ、恐怖と妖艶さを併せ持つ存在として描かれる。
エムプーサ
片足は青銅、もう片方はロバの足という女の怪物。男を誘惑して交わった後に食い殺したり、眠っている男に悪夢を見せながら血を啜るといわれる。
ケルベロス
冥界の入り口を守る三つ首の番犬。死人の魂が冥界から逃げ出さないよう見張る役割を持つ。
ゴルゴーン(ゴーゴン)
髪の毛の代わりに生きた蛇が生えており、黄金の翼と青銅の手、イノシシのような牙を持つ怪物。顔を見た者を石に変える力を持つ。
ステンノー
ゴルゴーン三姉妹の長女で最強の存在。不死身で凶暴。蛇の髪と鋭い牙を持ち、数多くの犠牲を出したとされる。
テュポン(テュポーエウス、テュフォン、テュポエウス、ティフォン)
神々の王ゼウスに比肩する力を持つ、ギリシア神話最大級の怪物。唯一ゼウスを打ち破ったことがある存在として語られる。
ミーノータウロス(ミノタウルス)
牛の頭と人間の体を持つ怪物。迷宮に閉じ込められ、生贄として捧げられた人間を食らう存在とされた。
メドゥーサ(メデューサ)
宝石のように輝く目を持ち、その視線を受けた者を石に変える能力を持つ。頭髪は無数の毒蛇で、イノシシの歯・青銅の手・黄金の翼を備えた恐ろしい姿をしている。
アッカド神話の悪魔
アッカド神話の悪魔は、病気・災害・恐怖など、人間の生活を脅かす自然の脅威を象徴しており、その姿も異形で恐ろしいものが多いです。
アルー(Allu)
人々に病気をもたらす悪魔。夜に人の寝床をさまよい、悪夢や体調不良を引き起こす存在とされた。
ウトゥック(ウドゥグ、エディンム、エキンム)
古代バビロニアに伝わる悪魔や精霊の総称。基本的には人の姿をしているが、半身半獣のような姿で描かれることもある。
フンババ(フワワ)
「恐怖」や「あらゆる悪」を体現する森の守護者。巨人・怪物・自然神など、さまざまな側面を持つ存在とされる。
ラマシュトゥ
獅子の頭とロバの長い牙、毛むくじゃらなロバの体、猛禽の爪を持つ女の魔神。出産や授乳中の母を脅かし、子どもを誘拐すると恐れられた。
シュメール神話の悪魔
シュメールの悪魔は死・風・疫病などの力を具現化し、超自然的な世界を支配する存在として描かれます。姿や能力が独特で、のちの神話にも影響を与えました。
アサグ
名前は「病気をもたらす悪魔」を意味する。巨大で丸い体に三本の足と三本の腕、首のない異形の怪物で、全身に複数の目を持つ。岩のように硬い皮膚を持ち、傷つけることができないとされる。
エレシュキガル
名はアッカド語で「冥界の女王」を意味し、「日没する場所の女王」とも称される。地下世界を支配する女神的存在で、死者の国を統べる。
パズズ(パズス)
風と熱風の悪霊にして魔神。ライオンの頭と腕、ワシの脚、背中に4枚の翼、サソリの尾、ヘビの男根など、恐ろしい姿で描かれる。疫病を運ぶ一方、他の悪霊から人を守る護符としても用いられた。
エトルリアの悪魔
エトルリアの悪魔は冥界に関わる存在が中心で、死者を導く案内人や冥界の番人として、人間の死後の運命を象徴する役割を担っています。
ウァント(Vanth、ヴァンス)
エトルリアの地下世界に住む女性の悪魔。死の案内人、あるいは運命を司る女神として、死者を冥界へ導く存在とされる。
カルン(Charun)
とがった耳と大きな翼を持ち、腕には蛇をまとったような姿で冥界の入口を守る番人。迷える魂をあの世へ運ぶ役目を担う。
クルス(Culsu)
トゥクルカ(Tuchulcha)
女性の姿をした恐ろしい悪魔。くちばしや尖った耳など異形の特徴を持ち、冥界の危険な存在として描かれる。
ヨーロッパの悪魔
ヨーロッパに伝わる悪魔は、民間伝承・寓話・魔女信仰など多様な文化が混ざり合い、悪戯好きな小悪魔から恐ろしい怪物まで幅広く登場します。
アンフィスバエナ
両端が蛇の頭になっている二頭の蛇の怪物。どちら側からも噛みつくことができるため、逃げ場のない恐怖の象徴とされた。
インプ
全身が黒く、充血した目と尖った耳、突き出たお腹、鉤のある長い尻尾を持つ小さな悪魔。悪戯好きで、人間にちょっかいを出す存在として描かれる。
グザファン(ゼポン、ゼフォン)
堕天使の一人。ルシファーが神に反逆した際、その側についたとされる。
グレムリン
機械に悪戯をする妖精・悪魔。飛行機や機械の故障を引き起こすと信じられ、どの家庭にも一匹は潜んでいると語られた。
ゴブリン(ガブリン)
醜く邪悪な小人として描かれることが多い精霊。人に悪さをし、家や森で騒ぎを起こす存在とされる。
コカトリス(コカドリーユ)
雄鶏と蛇を合わせたような姿の怪物。雄鶏の産んだ卵から生まれ、飼い主の家の者の血を少しずつ吸い、やがて死に至らしめると恐れられた。
ネビロス
アスタロト配下の悪魔たちの長で、アスタロトやサルガタナスとともにアメリカ大陸に住むとされる。望む相手に苦痛を与え、金属・鉱物・動植物の効能に通じる。特に降霊術に優れ、未来を見通す能力を持つ。
バジリスク(バシリスク)
全ての蛇の王とされる毒蛇の怪物。その視線や息に触れた者は命を落とすといわれる。
ラミアー
女性の上半身と蛇の下半身を持ち、獣のような手を備えた怪物。子どもをさらって食べる存在として伝えられる。
ヒンドゥー教の悪魔
ヒンドゥー教の悪魔は、神々と戦うライバル的存在として描かれ、暴力・欲望・混沌を象徴する強力な魔族アスラが中心となっています。
アガースラ
巨大な蛇の姿をした悪魔で、悪王カンサ王に仕える将軍。神の敵としてクリシュナ神に討たれたとされる。
アスラ
インド神話・バラモン教・ヒンドゥー教における神族または魔族の総称。神々(デーヴァ)と争う存在で、強大な力を持つ。
阿修羅
アスラが仏教に取り入れられた姿。戦いを好み、怒りと執着の象徴として描かれることが多い。
ヴリトラ
巨大な蛇の怪物。その名は「障害」や「遮るもの」を意味し、「天地を覆い隠すもの」とも呼ばれる。雨や水を閉じ込め、世界を干ばつに陥れる存在とされる。
餓鬼
常に飢えと渇きに苦しむ亡者の姿。食物や飲み物を手にしても火に変わってしまうため、決して満たされることがないとされる。
ナーガ
蛇の精霊・蛇神。地下世界や水辺に住み、宝物や秘められた知恵を守る存在として、崇拝の対象にも恐れの対象にもなっている。
ヒラニヤークシャ
ヴィシュヌ神に敵対する悪魔王。名前は「金の目を持つ者」を意味し、海を沈めて世界を混沌に陥れたとされる。
ヒラニヤカシプ(Hiranyakashipu)
名は「金の衣を着た者」を意味し、ヒラニヤークシャの兄とされる。ほとんど死なない加護を得て、神々や人々を圧政で苦しめた。
マダ
大きな歯と四本の牙を持つ怪物。口を開けば上顎が天に届いたというほど巨大で、暴飲暴食と酩酊の象徴とされる。
マヒシャ
神々を苦しめたアスラ(阿修羅)の首領。神々の地位を奪い、人々に自分を崇拝するよう強制した。水牛の姿や半獣の姿で描かれる。
夜叉(ヤシャ、ヤカー、ヤック)
インド神話における鬼神の総称。男はヤクシャ、女はヤクシー/ヤクシニーと呼ばれ、富と自然を守る守護神としての側面と、人を襲う鬼としての側面を併せ持つ。
ラーヴァナ
叙事詩『ラーマーヤナ』に登場する、ラークシャサ(羅刹)の王。十の頭と二十の腕を持ち、神々を苦しめ、自らを崇拝させようとした。
ラークシャサ
ヒンドゥー教における鬼神。人肉を好む恐ろしい存在として語られる一方、戦士や守護者として描かれることもある。
ゾロアスター教の悪魔
ゾロアスター教の悪魔は、善神アフラ・マズダーに対抗する「絶対悪」を具現化した存在で、闇・虚偽・病・破壊を司る強大かつ象徴的な存在が多いです。
アンラ・マンユ(アーリマン、アフリマン)
最高善の神アフラ・マズダーに対抗する絶対悪の神。世界に闇・病・争いをもたらす根源的な悪として描かれる。
アエーシュマ
暴力を司る悪神のひとり。毛むくじゃらの体に血塗られた武器を持つ姿で表され、怒りや残虐さを煽る存在とされる。
アジ・ダハーカ
三つの頭と三つの口、六つの目を持つ怪物。頭はそれぞれ苦痛・苦悩・死を象徴し、翼を広げると天を覆い隠すほどの巨大さを持つとされる。
アストー・ウィーザートゥ
死をもたらす悪魔。人が事故死するのは、この悪魔の仕業だとされる。 生まれる前から全ての人の首に縄をかけており、善人が死ぬと縄は外れるが、悪人が死ぬとその縄で地獄へ引きずり込むといわれる。
アカ・マナフ
善なる思考を司る神ウォフ・マナフに対抗する悪魔的存在。悪意や邪な思考を人の心に吹き込む役割を持つ。
アパオシャ
干ばつ(かんばつ)をもたらす悪神。毛のない黒い馬の姿で、空を駆け巡り、地上から恵みの雨を奪うとされる。
ジャヒー(ジェー)
ゾロアスター教に伝わる女悪魔。人々を欲望へと誘い、堕落させる存在として描かれる。
ダエーワ
アンラ・マンユに仕える悪魔たちの総称。地獄で亡者を苦しめる役目を持ち、多種多様な姿をしている。
ドゥルジ
名はアヴェスター語で「虚偽」を意味し、正義と真実の神アシャ・ワヒシュタに対抗する存在。不義や偽りそのものを神格化した悪魔。
パリカー
ゾロアスター教に伝わる魔女の総称。流星に乗って空から地上へ降りてくるとされ、人々を惑わせる。
ブーシュヤンスター
両手両足が非常に長い姿をした女悪魔。眠っている人間にさらなる眠気を吹き込み、怠惰と無気力にしてしまうといわれる。
悪魔とは何を象徴する存在なのか
悪魔という存在は、単なる恐ろしい怪物ではありません。
それぞれの文化が抱えた
恐れ・不安・死生観・道徳観・自然への畏怖
といった、人間の心そのものを形にしたものとも言えます。
キリスト教の堕天使、ユダヤの魔王、イスラムの精霊、
ギリシアや北欧の怪物、エジプトやシュメールの冥界の存在……
世界には数えきれないほどの“闇の象徴”が伝えられ、
それぞれが独自の物語と役割を持っています。
悪魔を知ることは、単に恐怖の歴史をたどるだけではなく、
人類が何を恐れ、どう乗り越えようとしてきたのか
という文化理解にもつながります。
興味深い悪魔が見つかったら、ぜひさらに詳しく調べてみてください。
その背景には、必ず豊かな神話と歴史が隠れています。
FAQ よくある質問
悪魔とは何を指す存在ですか?
悪魔とは、神に反逆した存在や、人間に災い・誘惑をもたらす超自然的な存在の総称です。宗教によって意味は異なり、キリスト教では堕天使、イスラムではジン、神話では怪物として描かれることもあります。
世界の神話にはどんな悪魔がいますか?
世界には、サタンやルシファーのような堕天使、リリスのような誘惑の象徴、ケルベロスやミノタウロスのような怪物、アペプやアサグなど自然の脅威を象徴する悪霊など、地域ごとに異なる悪魔が数多く存在します。
ソロモンの悪魔にはどんな特徴がありますか?
ソロモンの悪魔は『ゴエティア』に登場する72柱の悪魔で、軍団数・称号・外見・能力が細かく記録されています。未来予知、治癒、変身、財宝の発見など、多様な能力を持つのが大きな特徴です。

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