天使の姿・翼と暗黒天使

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天使の姿と翼 天使と悪魔
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天使の姿 Figures of angels

 

翼 Wing

古くから熾天使の六枚の翼や智天使の四枚の翼に天使の翼についての言及はあったが、翼が芸術作品の中に定着し始めたのは四世紀に入ってからのことだった。翼が示すものは、現実にそれを使って天使が宙を飛ぶというより、現世(地上)と彼岸(天界)を行き来する彼らの能力、超越性、空間を越える彼らの動きの自由さを示す象徴的なものであった。霊的な存在が翼を持つという概念は、ギリシア、エジプト、アッシリアなど、天使に限らず古くからある。
(→詳細は天使の翼を参照)

光輪 Halo

光輪は四世紀までには宗教画では標準的に用いられるようになっている。聖人や宗教上の人物、天使の頭の上から環状のうすい光を描くことで、その人物の神聖さや美徳、神に近い存在であることを示した。形而上学的に見れば、光輪は霊的存在、精神の高貴な人物の頭部より発せられるオーラを表したもの、スピリチュアルなエネルギーを表したものと考えられる。光輪は天使に限らず、聖母マリア、キリスト、聖人たちにもつけられている。

性別 Sexuality

天使は両性具有的な存在であり、人間のような性別という概念は超越した存在であるというのが神学的見解での一般である。多くの画家は天使を男性とも女性ともとれる姿で性別をあいまいにして描いている。
ただ、初期の頃には天使は男性であるという考えが強く、天使がはっきり女性の姿で描かれるようになったのはルネサンス期に入ってからのことだった。

楽器 Musical instrument

絵画において、天使は時としてリュートやハープ、バイオリンなどの楽器をともなった姿で描かれることがある。古代から音響や歌には感覚をスピリチュアルな領域に近づけ、神や天界へと近づく手段としての要素があり、ルドルフ・シュタイナーの意見では、「どのような音も(視覚的な天使出現もそうだが)、知覚する人間が霊的な世界に入り込んでゆく感覚世界の窓に相応する。」とある。

衣装 Cloth, dress, uniform

多くはガウンなどのゆったりとした衣装、またはその時代の服装で現れる。天使の霊的な衣装に関しては、「光の輝き」と「白い」という言葉で表される。
また、絵画では天使の階級を規格化された姿で表す手法もあり、大天使は甲冑にサンダルをつけた姿、守護天使はローブをまとい裸足の姿で描かれた。

芸術 Art

ユダヤ、イスラム教とも宗教的人物を絵に描くことをタブーとしていたため、天使芸術は長い間キリスト教のもとで発展してきた。キリスト教では、325年のニカイア公会議ではじめて天使が教義の一部と正式に確認され、そして787年の二回目のニカイア公会議で、天使を絵画や彫刻で表してもよいという布告が出されたが、天使芸術はすでに一回目のニカイア公会議のあった四世紀の頃から始まっていたとされる。

 

天使の翼 Wings of angels

サモトラケのニーケー像 旧約聖書の初期の書では天使に翼があるという記述は何もされていない。『イザヤ書』と『エゼキエル書』に熾天使と智天使についての翼の記述があるのみで、新約聖書においては天使に翼があるとはいっさい書かれていない。ごく初期のキリスト教芸術家たちは天使を翼のない若者の姿で描いている。四世紀までキリスト教芸術家たちは天使を描くのに、他宗教にそのインスピレーションを求め、特にギリシア、ローマ神話のイメージが天使に最大の影響を与えた。ギリシア神話の翼を持った勝利の女神ニーケー(Nike)はローマ神話のヴィクトリアに取り入れられたが、ヴィクトリアのイメージが翼を持った天使像のもとになった。しかし、ルネサンスに入るまで、キリスト教画家たちが天使を女性に描くことはなかったため、両者が混同されることはなかった。
天使への神学的な興味は十四世紀を最盛期に、あとは衰退して天使は神学の中心からは離れていったが、そのことが逆に画家たちに天使を描くことに自由を与えた。画家個々人のインスピレーションから天使像が生み出され、ルネサンス以降の芸術家は子供や女性の天使像も描くようになり、翼も鷲や白鳥のような鳥の翼にモデルを求めたり、美しい色彩を与えたりした。現代にいたる天使像のもとをつくったのもルネサンス期の天使像であった。

思考と同じ速さで飛び回る天使に実質、翼は必要ないが、天の領域を飛び回る天使の能力を示すため、天使の霊力が具現化されたものとして天使は翼を身につける。ユッタ・シュトレーター=ベンダーは、翼は天使の動きの自由さを表すシンボルであるばかりでなく、彼らのアウラ(あらゆる存在と被造物の生命の放射、人間には感情の中で無意識に知覚されるものだが、天使のアウラはその密度と色力においてはるかに上回るため神々しい光の線の放射となって現れる)の具現化されたものだと言っている。

天使の翼は時としてその役職を示すモティーフであったり、絵画においての図像の象徴化を担うものであったりする。
ローズマリ・エレン・グィリーは翼のある天使の存在理由と役割を次のようにあげている。

・神のみの言葉を伝え、神の意志を遂行するための使者
・キリストの守護者かつ付添者
・魂をとこしえの世、あるいは天国へ導く者
・儀式の重要な参加者
・最後の審判の使者

(ローズマリ・エレン・グィリー『図説天使と精霊の事典』)

マルコム・ゴドウィンは、天使が人間と同様、重力を受け体重を持っていた場合、実際に空に飛び立つためにはどれほどの大きさの翼が必要かを計算している。

長身の天使の体重を二〇〇ポンド(約九〇キログラム)とすると、
三六フィート(一二メーター)ないし、一二〇フィート(四〇メー
ター)の翼幅が必要となる。これはハングライダーの大きさに相当
するが、この種の翼は滑空と上昇気流を受けての滑翔にしか用いる
ことができない。

(マルコム・ゴドウィン『天使の世界』)

 

 

天使の起源と寿命 Birth and Lifesapn

多くの思想家は天使の創造が天地創造の一日目になされたとしている。二日目、五日目だという主張もあるが、天使が天地の創造時に生まれたという意見は統一されている。
他に、天使は神が新たに望みを抱くたびに、それをかなえるために天使が生まれてくるという説もある。ユダヤの教典『ミドラシュ・ハニーラム』には、天使は「全ての創造物の始源であり、神の光輝より流出した」とある。
天使は神のような永遠の存在ではないが、人間の魂のように不死の存在であるとされる。天使も人間の魂も不滅の物質から構成されている。天使の姿が若者の姿で描かれるのは天使の不死の性質を示すためでもある。
しかし、不死の生命を持つ天使と、特定の任務を帯びてその期間にだけ存在する寿命を持つ天使の二種類がいると言う学者もいる。

聖書が世界の創造を語る箇所では天使が果たして創造されたのか、
いつ創造されたのか、明言されていない。
ただし、もしも言及されたのであれば、
それは「初めに神は天地を創造された」と述べられる時の
「天」の名のもとに必然的に含まれるのである。
(聖アウグスティヌス)

 

暗黒天使 Dark Angel

旧約聖書の『創世記』には、ヘブライ人の太祖ヤコブが、ヤボク川の河畔で神秘的な存在と格闘したことが書かれている。その格闘は夜明け前まで続き、苦戦を強いられヤコブに勝てないと見た相手は、ヤコブの股を打って関節を外した。夜が明けそうになると、その相手は「夜が明けるからわたしを去らせてください」と言ったが、ヤコブは祝福してくれるまでは離さないと言った。するとその相手はヤコブに、「あなたはもはや名をヤコブと言わず、イスラエルと言いなさい。あなたが神と人とに、力を争って勝ったからです」と言った(イスラエルという言葉はヘブライ語で「神と格闘するもの」を意味する)。そして相手の名前を聞こうとするヤコブに、「どうしてわたしの名を聞くのですか」と言い、それからヤコブを祝福した。ヤコブはこの格闘した地に、「わたしは顔と顔を合わせて神を見たが、なお生きている」という意味のペヌエルという名をつけた。

このヤコブと格闘した者が何者なのか、ヤルクトの『創世記』によれば、それはミカエルであるとされている。『ヨセフの祈り』ではこの暗黒の天使はウリエルであるとしている。他にガブリエルやメタトロンなどもその候補に入る。

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