世界には、姿も役割もまったく異なる「竜(ドラゴン)」が存在します。
アジアでは雨や豊穣をもたらす神として敬われ、ヨーロッパでは英雄が立ち向かうべき恐ろしい存在として描かれ、南アメリカでは世界の始まりを語る象徴として受け継がれてきました。
文化が変われば、竜が担う意味や物語もまったく変わります。
だからこそ、同じ“ドラゴン”という名前でも、その背景には多彩で奥深い世界が広がっているのです。
本記事では、世界の竜を地域別に整理した一覧として、神話や伝承に登場するドラゴンたちを紹介します。
きっとあなたの知らなかった竜と出会えるはずです。
世界の竜・龍一覧|神話・伝説に登場する龍【地域別】
世界各地の神話・伝承に登場する龍(ドラゴン)を、地域別・文化別にまとめました。
アジアの神聖な龍から、ヨーロッパの巨竜、アメリカ大陸の怪物、南洋の精霊的な龍まで、国ごとの特徴・姿・役割をわかりやすく整理しています。
出典:Wikipedia – List of dragons in mythology and folklore
🐉 アフリカの龍
黒き大地に息づく龍たちは、星と大河の記憶を背に持ち、祖霊の声と雷のうねりとともに姿を現す。アフリカの龍はただの怪物にあらず――それは創造と破壊、祝福と呪いの狭間に生きる精霊なり。
🔹 西アフリカ
- アイーダ=ウェド(Ayida-Weddo)
虹の女神。蛇の姿で現れ、宇宙を支える精霊。ハイチのヴードゥーにも伝わる。 - ダンバラ(Damballa)
宇宙創造に関わる天の蛇神。アイーダ=ウェドの夫であり、崇拝対象となる守護霊。 - ビダ(Bida)
ソニンケ神話に登場する龍蛇。民を守るが犠牲を強い、人々の怒りを買って滅ぼされる。 - ニンキ・ナンカ(Ninki Nanka)
マリ・ギニア沿岸部に伝わる伝説の水棲龍。姿は不明瞭ながら、爬虫類にして龍に似るとされる。
🔹 エジプト神話
- アペプ/アポピス(Apep / Apophis)
混沌を象徴する巨蛇。ラー神の太陽の船を夜に襲う闇の存在。 - ウロボロス(Ouroboros)
己の尾を喰らう蛇。永遠・循環の象徴。古代エジプトやヘレニズム哲学に登場。 - ヤクルス(Jaculus)
翼を持つ小型の飛翔蛇。木々の間から飛び出し、獲物を襲うと言われる。
🔹 ニャンガ族(コンゴ民主共和国)
- キリム(Kirimu)
七つの角の頭を持つ巨大な龍。黒い皮膚と犬の牙、鷲の尾を持ち、雷神と血の契約を交わす。
🔹 南アフリカ・ソト族
- グロートスラング(Grootslang)
南アフリカ・リフターズフェルトの洞窟に住む巨大な蛇。アフリカーンス語で「大蛇」を意味する。 - モニョヘ(Monyohe)
ソト族に伝わる龍のような蛇。多くの物語で婚姻や贖いの象徴として登場する。
🔹 ツォンガ族(モザンビーク~南アフリカ)
- マシンギ(Masingi)
清浄な住まいに棲む癒しの精霊龍。病を癒す力を持ち、人々の助けとなる。
🐉 ヨーロッパの龍
古の森より嵐の空へ、ヨーロッパの龍は国と物語の中に棲みて、民の恐れと英雄の剣に形を変える。翼を広げる者も、尾を巻く者も、いずれも神話の脈動を今に伝える影なり。
🇦🇱 アルバニア
- ボッラ(Bolla):年に一度、聖ゲオルギウスの日に目覚め、人を見れば食らい、再び眠る蛇龍。
- クルシェドラ(Kulshedra):ボッラが進化した姿。火を吹き、旱魃を引き起こし、人身供犠を求める。
- ドレク(Dreq):キリスト教伝来後に悪魔と化した「本来の」ドラゴン。
🏔️ アルプス地域
- タッツェルブルム(Tatzelwurm):猫の顔を持つトカゲ型の龍。アルプス一帯に伝承多数。
🏰 カタルーニャ(スペイン)
- ドラッカ(Drac):毒のある息と燃える吐息を持つ、二足歩行の龍。
– ヴィブリア(Víbria):女性の姿をしたドラゴン。
🇷🇺 チュヴァシ(ヴォルガ地方)
- ヴェリ・シェレン(Věri Şělen):翼を持つ炎の龍で、変身能力あり。
🐍 ケルト(スコットランド・ウェールズ)
- ベイヒル(Beithir):稲妻と関連する蛇のような龍。翼なし。
- Y・ドラグ・ゴッホ(Y Ddraig Goch):ウェールズの赤い龍。白い龍(サクソン)との戦いで勝利し、ウェールズの象徴となる。
🇫🇷 フランス
- ドラゴン(Dragon):キリスト教が異教を打ち倒す象徴として描かれることが多い。
– グィーヴル(Guivre):毒のある牙を持つワイバーン型。
– グラウリー(Graoully):メスのドラゴン、メスで制圧。
– タラスク(Tarasque):伝説の怪物、聖マルタにより従順にされた。
– ペルーダ(Peluda):背中から棘を飛ばす「毛むくじゃらの獣」。
🇩🇪 ドイツ系・ゲルマン文化圏
- ワイバーン(Wyvern):二足・二翼の竜。紋章に多く用いられる。
– バイグナーの龍、ビスターンの龍、ブルー・ベン など各地の伝承多数。 - リンドヴルム(Lindworm):二足または無足の蛇竜。
– ファフニール(Fafnir):ニーベルンゲン伝説に登場。
– ニーズヘッグ(Níðhöggr):世界樹の根を喰う死の龍。
– ヨルムンガンド(Jörmungandr):海を取り巻く蛇龍。
– ラガルフリョーツ・オルムリン(Lagarfljótsormurinn):アイスランドの湖の怪物。
– ラプトン・ワーム、ライドリー・ワーム:イングランド各地の伝承。
🇪🇪🇱🇹 バルト系・スカンジナビア
- フログドレイク(Flogdrake):翼と脚のない光のように飛ぶスウェーデンの夜空の龍。
- プーク(Puk):東欧に広く伝わる四足の多頭龍。
– 地域ごとに呼称が異なる(プーク、プキス、カウカスなど)。
🇬🇷 ギリシャ神話
- ドラコーン(Drákōn):重要な宝や場所を守る蛇龍。
– ヒュドラ(Hydra):複数の首を持ち、斬ると増える。
– ラドン(Ladon):黄金の羊毛を守る。
– パイソン(Python):アポロンに殺される。
– テュポーン(Typhon):神々に挑んだ巨大な災厄の龍。
– アガトダイモン(Agathodaemon):守護霊的な蛇。
– アンフィスバエナ(Amphisbaena):両端に頭を持つ蛇。
🇭🇺 ハンガリー
- フェルニイゲシュ(Fernyiges):黒き龍で、龍の王。
- シャールカーニー(Sárkány):人の姿をとる龍。複数の頭を持ち、頭を失うと弱体化。
- ゾモク(Zomok):翼ある巨大蛇。魔術師の乗騎とも。
🇮🇹 イタリア
- タラントザイオ(Tarantasio):ジェルンド湖に棲んだという龍。
🇪🇸 スペイン・ヒスパニック系
- クエレブレ(Cuélebre):アストゥリアス神話の翼ある大蛇。宝物や妖精を守る。
- コカ(Coca):幽霊のような怪物、または女性の龍。聖ゲオルギウスと戦う。
🇱🇹 リトアニア
- スリビナス(Slibinas):多頭竜(ハイドラに類似)。
- アイトヴァラス(Aitvaras):鳥か龍の姿。富をもたらすが災いも呼ぶ。
- ジャルティス(Žaltys):家庭の精霊としての蛇。
🇵🇱 ポーランド
- ワヴェル竜(Smok Wawelski):クラクフの洞窟に住んだ龍。靴屋の弟子により知恵で討たれる。
- クレペル(Krepel):ビトム近郊の森に棲む。若者が宝を求めて友情を結ぶ。
🇷🇴 ルーマニア
- バラウル(Balaur):多頭の水竜。
- ズブラトル(Zburator):夢に現れるドラゴンの精霊。

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