世界中の神話には、英雄や神々が手にした“特別な武器”が数えきれないほど存在します。
悪を滅ぼす聖剣、雷を放つ槍、天を射抜く弓矢、運命を変える魔法の杖──
それらはただの武器ではなく、文化・信仰・畏怖・祈りを象徴する存在として語り継がれてきました。
ここでは、エジプト・ギリシア・北欧・ケルト・インド・日本・中国など、
世界の神話に登場する武器を一覧でわかりやすく紹介します。
あなたが探していた“伝説の武器”が、きっとこの中で見つかるはずです。
出典・参考:Wikipedia – 架空の武器
剣・刀
ケルト神話の剣
- カラドボルグ(Caladbolg) — 神話物語群およびアルスター物語群に登場する名剣で、元はヌアザ神の所有物とされる。後に英雄たちに受け継がれ、その破壊力から「稲妻のごとき剣」と称されることも。アーサー王のエクスカリバーの原型とみなされることがある。
- フラガラッハ(Fragarach) — ルグ神が持つとされる「答えを強いる剣」。その刃を喉元に当てられた者は、真実しか語れないとされる。風を切るように全ての防御を貫くとも伝わる、ケルト神話屈指の魔剣。
- クラウ・ソラス(Claíomh Solais) — 「光の剣」「輝ける刃」と呼ばれる神剣。持ち主に不敗の力を授けるとされ、しばしばアイルランドの王権や英雄譚と結びつく象徴的武器として扱われる。
- オルナ(Orna) — フォモール族の王テトラが所持していた剣。後にオグマ神によって手に入れられる。刃が戦場の戦士たちの功績を語り出すという特異な性質を持つ「語る剣」として知られる。
- クルージーン・カサド・ヒャン(Cruaidín Catuth Cing) — アルスター物語群に登場するクー・フーリンが扱う「光の剣」。名は「鋭き切断の刃」を意味し、その威力は戦場を一瞬で切り裂くとされる。
- モラルタ(Moralltach) — フィン物語群に登場。名前は「大いなる怒り」を意味し、ディルムッド・オディナが所有する剣。海の神マナナン・マクリルから授けられたとされ、一撃必殺の力を持つ。
- ベガルタ(Beagalltach) — 同じくディルムッド・オディナの所有する剣で、モラルタの対となる武器。名前は「小さな怒り」を意味し、軽快で鋭い斬撃を象徴する。双剣の片方として登場する設定が多い。
- マック・ア・ルイン(Mac an Luin) — フィン・マックールが用いた剣。炎のように燃え上がると描写されることがあり、フィンの戦士団フィアナの物語で象徴的な武器として登場する。
- ゲル・ナ・グコラン(Gáe(l) na Gclóchan / Gáe na nGoghlann) — フィン物語群に登場する英雄オスカーの剣で、元々はカラドボルグと同名で呼ばれていたと伝わる。英雄的血統を示す象徴的武器として位置づけられている。
北欧神話の剣
- グラム(Gram / Gramr) — 『ヴォルスンガ・サガ』に登場。オーディンが大殿の木に深く突き立て、選ばれし者のみが抜ける「選定の剣」。シグムンド、のちにその息子シグルドが所有し、竜ファーヴニルを討つ際にも使用された。
- ティルフィング(Tyrfing) — 『ヘルヴォルとヘイズレクのサガ』に登場する呪われた魔剣。闇のドヴェルグの手によって鍛えられ、抜けば必ず命を奪い、三つの災いをもたらすとされる。ヘルヴォル、アンガンチウール、ヘイズレクらが継承した。
- ダインスレイフ(Dainsleif) — デンマークの英雄ホグニが用いたとされる「血を求める剣」。一度抜けば敵を必ず殺さずには鞘に収まらないと伝えられ、終わりなき戦いをも象徴する不吉な武器。
- 勝利の剣(Frey’s Sword) — フレイ神が所有した、持ち主の意思がなくとも自ら戦う剣。英雄スヴィプダグが探索の末に封印の地から持ち帰ったとされ、北欧神話の「自律型神剣」の代表格。
- レーヴァテイン(Lævateinn) — 『古エッダ』の詩篇に登場する“ルーンの力で鍛えられた剣”。ロキが作り上げたともされ、巨大鳥ヴィゾーヴニルを唯一屠ることができる武器として解釈される。神秘的かつ象徴性の高い魔剣。
- ミスティルテイン(Mistilteinn) — デンマークの英雄フロームンドが亡霊の王から墓所で奪い取った剣。彼はこの神剣を使って死者の英雄ヘルギ(ハッディンギャルの勇士)との戦いに勝利した。死と再生の物語に関わる印象的な武器。
- ミミング(Mimming / Mimmingr) — 森に住む神あるいは精霊サチュルン(古典伝承では農耕神サトゥルヌスと混同される場合がある)が持つ剣。その後、英雄ホテルス(Hjálmter)が所有することになり、多くの冒険譚に登場する。
- スケヴニング(Skæfnung / Skofnung) — デンマーク王フロールヴ・クラキの名剣。女性に見られてはならず、太陽光が柄に当たると本来の力が覚醒するという禁忌を持つ。癒し得ない傷を与えることで知られる恐るべき剣。
- フロッティ(Hrotti / Hrotti’s Sword) — 『ヴォルスンガ・サガ』で、竜ファーヴニルの財宝のひとつとして登場する剣。シグルドが竜退治ののち宝物とともに手に入れた武器として語られる。
- リジル(Ridill / Riðill) — 同じくファーヴニルの物語で登場する剣。シグルドが竜の心臓を切り取る際に用いたとされる。血と知識(竜の心臓を食べる儀礼)を象徴する重要な武器。
- ホヴズ(Hǫfuð / Hofud) — 名は「頭」を意味し、ヘイムダル神が所有する剣。『スノッリのエッダ』ではラグナロクにおいてロキと対峙する際に使用されるとされる、終末神話に繋がる神剣。
アーサー王物語の剣
- エクスカリバー(Excalibur) — 最も有名なアーサー王の剣。湖の乙女(The Lady of the Lake)から授けられたとされ、アーサーの王権と神聖性を象徴する。鞘には「傷を負わない」魔法が宿るとされ、武器そのもの以上に鞘の力が重要視される。
- クラレント(Clarent) — 「平和の儀式に用いる剣」とされるアーサーの剣。戦闘ではなく儀礼用であったが、『頭韻詩アーサー王の死』ではモルドレッドに盗まれ、アーサー王殺害に使用されたことで “平和を破る剣” として悲劇性を帯びる。
- カルンウェナン(Carnwennan / Carnwenhau) — アーサー王の短剣で、影に潜む力や不可視能力を持つとされる。ウェールズ伝承「カンティレフの三つの至宝」のひとつに数えられる重要な武器で、剣エクスカリバー・槍ロンゴミニアドとともに三神器を構成する。
- ガラチン(Galatine) — ガウェインが所持したとされる剣。ガウェインが昼に力を増すという特性と結びつけられることもあり、「太陽の剣」と解釈されることがある。エクスカリバーの対になる武器として創作的に扱われる例も多い。
- シューレ(Seure) — 流布本サイクル(Vulgate Cycle)に登場。アーサー王が所有していた剣で、後にランスロットが特定の戦いで使用する場面が描かれる。正典的なエクスカリバー以外にアーサーが複数の剣を所有していたことを示す事例のひとつ。
- アロンダイト(Arondight / Alondite) — 「ランスロットの剣」として現代に広く知られるが、実は中世の主要文献にはほとんど登場せず、原典のランスロット物語において剣名としての証拠は希薄である。近代〜現代の再解釈や百科辞典的設定で広まった名と考えられる。
- マルミアドワーズ(Marmyadose / Marmiadoise) — 火の神ヴァルカン(ローマ神話の鍛冶神、北欧神話の影響下ではしばしば鍛冶神と習合)によって鍛えられたとされる剣。かつてはヘラクレスが帯びていたと伝わり、一部作品では「エクスカリバーより優れた剣」と描かれる特異な役割を持つ。
インド神話の剣
- ナンダカ(Nandaka) — ヴィシュヌ神が携える神剣で、しばしば「智慧の刃」と称される。無明を断ち、世界の秩序(ダルマ)を守る象徴とされる。ヴィシュヌの化身が現れる際にも、しばしば聖剣として描かれる重要な武器。
- アパラージタ(Aparājita) — 名は「無敵」「不敗」を意味し、シヴァ神がトリヴィクラマセーナ王へ授けた神剣。王が正義を守り、悪を討つための象徴として与えられた武器で、シヴァの加護を宿すとされる。
- チャンドラハース(Chandrahasa) — 羅刹王ラーヴァナが所有した名剣で、名は「月の笑み」を意味する。美しい光を放つ霊力ある武器で、ラーヴァナがシヴァ神への献身を示した際に授かったとされる。『ラーマーヤナ』における重要な象徴のひとつ。
- アシ(Asi) — 一説には「最初に生まれた武器」「神々の剣」と称される伝説の刃。創造の一部として生まれたと伝わり、世界の「戦いの原型」を象徴する。ドローナ(Drona)が所有したとされ、武道と戦法の象徴として扱われる。
『ローランの歌』・カロリング叙事詩の剣
- デュランダル(Durendal / Durandal) — 主人公ローランの愛剣。刃には聖遺物(聖ペテロの歯・聖バジリウスの血・聖デニスの髪・聖母マリアの衣の一片)が納められているとされ、絶対に折れない魔剣として描かれる。ローランはロンスヴォーの戦いで敵に奪われぬよう、岩に打ち付けて破壊しようとしたという象徴的場面が有名。
- ジョワユーズ(Joyeuse) — シャルルマーニュ(カール大帝)が用いる剣。その名は「喜び」を意味し、日没のたびに刃の色が30回変わるとされる神秘性を持つ。歴史的にはフランス王家の戴冠剣として扱われ、「カール大帝の象徴」として国家的意味も帯びる武器。
- オートクレール(Hauteclere / Hauteclère) — ローランの親友にして理性の象徴とされる騎士オリヴィエ(オリヴェ)が所持する剣。名は「高く澄んだ音」「高貴な輝き」を意味し、デュランダルと並ぶ名剣として称えられる。
- アルマス(Almace) — 大司教チュルパン(Turpin)が用いる剣。聖職者でありながら戦場に立つチュルパンの象徴であり、神の加護を宿す武器として描かれる。しばしば「聖戦士」としての大司教の姿を象徴する重要な武器。
- ミュルグレス(Murgles / Murgleis) — ローランの裏切りを引き起こす元凶となった伯父ガヌロンが帯びる剣。名は「暗い輝き」「曇った刃」を意味するとされ、ガヌロンの裏切りと対比的に暗い象徴性を持つ。
- プレシューズ(Preciuse / Précieuse) — バビロニア王バリガン(Baligant)が所有する剣。名は「貴い剣」を意味し、イスラム側の最高権力者の象徴として対峙する。ローラン側の名剣と対になる構図で描かれ、戦場の二大勢力を象徴する武器として扱われる。
- ベリサルダ(Balisarda / Belisarda) — イタリア叙事詩に登場するルッジェーロ(Ruggiero / Ruggero)の剣。魔女メリッサや魔術師アトラッスの物語と結びつき、魔法をも断ち切る剣として描かれる。『オルランド・イナーアモラート』、『狂えるオルランド』などオルランド円環作品で重要な位置を占める。
ディートリッヒ伝説(シズレク伝説)の剣
- ミームング(Mimming / Mimung) — 名鍛冶ウィーランド(ヴェルンド)が鍛えた最高傑作とされる剣。息子ヴィテゲに与えられ、その切れ味は神々の武器と比較されるほど。後にディートリッヒ(シズレク)がシグルドとの試合で使用し、英雄同士の戦いを象徴する神剣として伝わる。
- エッケザックス(Eckesachs) — 巨人エッケとの戦いでディートリッヒが勝利し、奪い取った剣。巨人の強大な力に耐える武器として描かれ、以降ディートリッヒの象徴的な武器のひとつとなる。
- ナーゲルリング(Nagelring) — 巨人グリムより得た剣。名は「釘の輪」あるいは「鋲のついた柄」を意味するとされる。のちにハイメへと受け継がれ、騎士の名誉を象徴する重要な武器となる。
- ブルドガング(Blutgang / Blodgang) — ディートリッヒの重臣であり戦士であるハイメ(Heime / Háma)が所持する名剣。強力な一撃を象徴し、「血の進行」「血の攻撃」を意味する名が付けられている。武勇と忠誠を示す剣として語られる。
- ラーグルフ(Lâgerolf / Lagrulf) — 老練の戦士ヒルディブランド(Hildebrand / Hildebrant)が帯びる剣。師であり父のような存在としてディートリッヒを支えた彼の象徴的武器で、武術と知恵を体現する刃として描かれる。
『ベーオウルフ』の剣
- ヨートゥンの剣(Giant’s Sword) — グレンデルの母との戦いの場で、ベーオウルフが戦闘中に洞窟内で見つけた巨大な古代の剣。ヨートゥン(北欧神話の巨人族)によって作られたとされ、通常の武器では傷つけられない怪物を唯一打ち倒した。神々しい輝きを放つ「奇跡の剣」として語られる。
- フルンティング(Hrunting) — ウンフェルスがベーオウルフに貸し与えた剣。多くの戦場で勝利をもたらした名剣であり、魔法による加護があるともされる。しかしグレンデルの母には傷を与えることができず、武器の限界が描かれる象徴的な場面がある。
- ネァイリング(Nægling) — ベーオウルフがドラゴンとの最終決戦で使用した剣。英雄自身の力が強大すぎたため、打ちつけた際に剣が折れてしまい、傷を与えることができなかった。この場面は「英雄の力が武器を超えてしまう」という叙事詩的象徴として語られる。

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