縁起物は、特別な日だけのものではありません。
玄関に掛けるしめ飾り、厄除けの破魔矢やお守り、招き猫や熊手のような商売繁盛の象徴。結びの形に願いを託す水引や、鶴亀・松竹梅といった意匠も、暮らしの中で長く受け継がれてきました。
意味に目を向けると、置き物や模様、食べ物や所作は「ただの飾り」ではなく、気持ちを整えるための小さな拠り所として見えてきます。
ここでは、厄除け・金運・健康・良縁といった願いに沿って、縁起のよいものを紹介します。節目の贈り物や、日々のしつらえを考える際の手がかりとしても使える内容です。
正月飾り・迎春のしつらえ
年神様を迎える目印や、家の内外を清めて新年を迎えるための飾りです。飾りの意味は地域差もありますが、基本の考え方は共通しています。
- 門松 — かどまつ
年神様を迎える目印とされ、家の門口に立てる正月飾りです。 - しめ飾り（注連飾り）— しめかざり
玄関などに掛け、迎春の場を整える飾りです。「ここから内は清浄」というしるしとして扱われ、災いを遠ざける願いも重ねられます。 - 鏡餅 — かがみもち
年神様の依り代（よりしろ）とされ、家の良い場所に供える飾り餅です。 - 輪飾り — わかざり
玄関などに掛ける簡素なしめ飾り。迎春のしつらえとして親しまれています。 - 玉飾り — たまかざり
丸い形の飾りをあしらった正月飾り。まとまりの良さや円満のイメージが重ねられることがあります。 - 干支飾り — えと飾り
その年の干支を飾りに取り入れ、一年の守りや節目の象徴として楽しむ習慣です。 - 鏡開き（鏡餅の開き）— かがみびらき
鏡餅を「切る」を避けて「開く」と言い、いただいて新年の福を分かち合う行事です。 - 神宮大麻 — じんぐうたいま
伊勢の神宮のお神札。正月を迎える前に新しい神宮大麻を受け、神棚にお祀りして一年の平安を願う習慣があります。 - 繭玉（餅花）— まゆだま（もちばな）
枝に小さくちぎった餅や団子を付けた正月飾りの一種。豊作や繁栄、家の安寧を願う意味が語られます。
正月食・祝い肴・食材の縁起
おせちの定番や正月に口にする料理には、健康・繁栄・長寿などの願いが重ねられてきました。
- 黒豆 — くろまめ
「まめ＝丈夫・健康」「まめに働く」に通じ、元気に過ごす願いを込めます。 - 数の子 — かずのこ
卵の多さに子孫繁栄の願いを重ね、祝いの肴として用いられてきました。 - 海老 — えび
腰が曲がるまで長生きする姿にたとえ、長寿の願いを込めます。 - 栗きんとん — くりきんとん
黄金色を財宝に見立て、豊かさを願う料理として親しまれます。 - 田作り — たづくり
小魚を田の肥料にした話にちなみ、五穀豊穣を願う祝い肴です。 - 紅白なます — こうはくなます
紅白の色合わせに祝意を重ね、口をさっぱり整える酢の物としても定番です。 - 伊達巻 — だてまき
巻物を連想させる形から、学びや知恵に恵まれる願いが語られます。 - 昆布巻き — こんぶまき
「喜ぶ」に掛け、祝いの席に用いられてきた食材です。 - 蓮根 — れんこん
穴が空いて先が見えることから、見通しの良い一年を願う縁起に結びつきます。 - かまぼこ — かまぼこ
紅白の色合いが祝いを表し、正月の膳を華やかに整える定番です。 - 結び昆布 — むすびこんぶ
結び目に「良い縁が結ばれる」願いを重ね、煮しめなどに使われます。 - 錦卵 — にしきたまご
黄身と白身の二色を金銀に見立て、めでたさや豊かさの象徴として扱われます。 - 鯛（焼き鯛）— たい
「めでたい」に通じ、祝い魚として正月の膳にもよく用いられます。 - ぶり — ぶり
出世魚として知られ、立身出世の願いを込めて焼き物に入れる地域があります。 - お屠蘇 — おとそ
生薬を用いた祝い酒で、邪気を払い長寿を願って正月にいただく習わしです。 - 雑煮 — ぞうに
「惣煮」とも言われ、餅と具材をいただいて新年の力を取り込む考えが語られます。 - 菊花かぶ（菊花蕪）— きくかかぶ
菊をかたどった酢の物。晴れの席を彩り、健やかさの願いが重ねられることがあります。 - たたきごぼう — たたきごぼう
ごぼうをたたいて身を開くことから「開運」の意味が語られ、祝い肴として用いられる地域もあります。 - ちょろぎ — ちょろぎ
おせちに添えられる食材のひとつ。「長老喜」「千代呂木」などの字を当て、長寿やめでたさに結びつけて語られます。 - あわび — あわび
焼き物などで正月の膳に入ることがある食材。晴れの席を豪華に整える一品として扱われます。
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